for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up

COLUMN-米経済の減速継続なら、日銀物価シナリオ実現に壁

田巻 一彦

[東京 8日 ロイター] - 米経済の勢いがパッとしない。米連邦準備理事会(FRB)メンバーの一部からは、利上げを2016年後半まで先送りするべきだとの声も出始めた。大雪や港湾ストなどの一時的な要因なのか、それとも構造変化が始まったのか。もし、米経済の力強さが幻に終わるなら、日銀が描く2015年後半からの景気回復と物価上昇の加速も、実現が難しくなる。日銀にとって米経済の動向は、かなりの比重を占めることになると予測する。

  <黒田総裁、所期の効果を強調>

ワシントンで7日午後(日本時間8日未明)、大規模な停電が発生し、ホワイトハウスや国務省など米政権の中枢部も一時、真っ暗な闇に覆われた。米当局は、テロとの関連性は否定しつつ、原因を調査中という。

まだ、仮説の1つに過ぎないが、太陽の活動が活発になり、太陽フレアの大規模な発生が確認され、それが地球のどこかでの停電などにつながる可能性は、かねてから指摘されていた。

かなり以前から、経済のたとえ話として、米経済を太陽にたとえれば、日本経済は惑星に過ぎないという構図が、提示されてきた。日本経済の相対的な地位が低下し、世界経済に占める比重が一段と下がってきていることを踏まえれば、日米経済の関係は、まさしく太陽と地球にたとえられる。

日本経済の様子は、2013年4月4日の日銀による量的、質的金融緩和(QQE)の実施によって、劇的に変わった。

ただ、最近までの原油価格の下落などを主因に、黒田東彦総裁が先頭になって打ち出した「2年間で2%」の物価目標達成は、実現できなかった。

しかし、黒田総裁は8日の会見で、QQEは所期の効果を発揮していると強調。「企業収益は過去最高に近い水準、設備投資も増加基調。輸出もようやく持ち直している。失業率は構造失業率近傍で推移し、賃金も緩やかに増加している」と、政策効果が幅広く出ていると指摘。

さらに物価についても「昨夏以降、原油が大幅下落したのは想定外だが、緩和拡大の効果もあり、実際の物価上昇率の低下が予想物価上昇率の低下を通じて賃金や価格決定に影響を与えることは避けられている」とし、「2年程度を念頭にできるだけ早期に物価安定目標を実現する方針に変化はない」と述べた。

民間のエコノミストの多くも、今年の春闘での賃上げ実績が昨年を上回ることが確実で、さらに原油安のメリットが秋から本格化するため、2%の物価目標達成はともかく、物価は年後半に上がり始めると見ている。

  <揺れるFRB幹部の発言>

ただ、これらの議論は、世界経済の動向への配慮が、やや薄いという印象を持つ。特に太陽にたとえられる米経済の動向が、一部の市場参加者が期待するほど輝きを強めずにいるのが気がかりだ。

3月米雇用統計における非農業部門の雇用者増が、12万6000人と市場予想の半分程度に下がっただけでなく、3月米ISM製造業景気指数が2013年5月以来の低す準に落ち込み、2月の米耐久財受注で航空機除く非国防資本財は、前月比マイナス1.4%と予想の同プラス0.3%を下回った。

イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長は3月27日の講演で、ドル高が米輸出を阻害する可能性があると指摘した。

また、NY連銀のダドリー総裁は6日、利上げに踏み切る時期は不確かで、最近の米系の弱含みが、より顕著な減速の兆しではないか、見極める必要があるとの認識を示した。さらに原油安や米国内の産業活動の低下が、米経済の「著しい足かせ」になると指摘した。

ハト派のコチャラコタ・ミネアポリス地区連銀総裁は7日の講演で、2016年後半まで利上げを遅らせるべきだとの見解を示した。

足元における米経済の減速傾向は、一時的な要因かそれとも構造的な変化の結果か──。その点の原因解明は、まだ途上にあるが、「大雪などの一時的要因」と決め打ちする見方が、米国内で少数派に転落したのは確かなようだ。

イエレン議長は3月27日の講演で、米経済には長期停滞リスクがあるとの見方を初めて公に示した。もし、議長の指摘が正しければ、米経済は3%台の成長に向けて力強い足取りを見せることは難しくなり、世界経済には強力なエンジンが不在になるリスクが高まる。

「太陽の活動」の変調は、周辺の惑星に強く影響するはずだ。米経済の減速は、米国向け輸出や米国内にある日系企業の稼働率低下につながりやすくなる。

日本企業にとっては、トップラインの伸び悩み要因として働き、いずれかの段階で市場の注目を浴びる展開になる可能性がある。

  <日銀判断を左右する米経済の見通し>

一方、8日の会見で黒田総裁は、米経済の状況について、ドル高が米輸出に影響し、製造業の先行指標が弱いと言われているが「まだ、はっきりしているわけではない」とし、「米経済は民需中心にしっかりと回復している」と強気の見方を示した。

少し、うがった見方をすれば、今の「強気」の米経済の見通しを修正する時は、日本経済の体温が低下し、具体的には需要サイドが弱くなって需給ギャップがマイナス方向に開き出し、物価上昇の基調に変化が起きる兆しが見えることになるだろう。

ということは、日銀が米経済の見通しを厳しめに見る時は、物価の先行きの見方を修正し、追加緩和に動く可能性が高まるのではないか。

その意味で、FRBの主要メンバーの発言から、米金融政策の動向を探る作業をするということは、同時に日銀の金融政策の先行きを予測することにもつながると言える。

イエレン議長はじめFOMCの主要メンバーが、そろって米経済の弱さを一過性ではなく、何かの要因で下押しの圧力が高まっていると言い出した時は、日銀の追加緩和の決断時期も迫っている可能性がかなりあると予想する。

●背景となるニュース ・米利上げ、16年後半まで待つべき=ミネアポリス連銀総裁 ・米利上げ時期は不確か、弱含む経済情勢見極め必要 ・米FRB議長、年内の利上げ開始示唆 金利正常化は段階的と強調

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up