[東京 25日 ロイター] - 政府税制調査会が月内にまとめる法人税改革案の全容が明らかになった。法人実効税率の引き下げの財源として、租税特別措置をゼロベースで見直すことに加え、赤字企業にも課税する外形標準課税では対象を1億円以下の中小企業にも拡充することに踏み込んだ。
改革案では、「法人税の枠内でのみ税収中立を図るのではなく、他の税目についても見直しを行う必要がある」とし、資本所得課税の強化や住民税・固定資産税の充実を検討すべきと提言している。欧州諸国で銀行税が導入された事例をひき、「新税導入の可能性も検討すべき」と提言した。
政府税調では先に総論として「課税ベース拡大による税率引き下げ」の方向性を打ち出していたが、利害対立があって先送りされてきた各論の改革の方向性を明確にした。改革案では最後に「いかなる制度であれ、その廃止や見直しには反対が強いが、今回の法人税改革においては、大胆に税率を下げるという目標を共有し、可能な限り課税ベースを拡大していく努力が必要」としている。
25日の法人課税ディスカッショングループ(座長・大田弘子政策研究大学院大教授)で詰めの議論を行い、27日の総会で改革案のとりまとめを行う段取り。
各論の改革の方向性は以下の通り。
●租税特別措置の見直し
・真に必要なものに限定する必要がある。特に特定の産業が集中的に支援を受ける優遇措置は、可能な限り廃止・縮減し、既存産業への政策支援の偏りを是正することで、新産業が興りやすい環境を整備していく必要がある。
・基準1:期限の定めのある政策税制は、原則、期限到来時に廃止する。
・基準2:期限の定めのない政策税制は、期限を設定するとともに、対象の重点化などの見直しを行う。
・基準3:利用実態が特定の企業に集中している政策税制や、適用者数が極端に少ない政策税制は廃止を含めた抜本的な見直しを行う。
・研究開発税制については、総額型は、税率引き下げに対応して大胆に縮減し、研究開発投資の増加インセンティブとなるような仕組みに転換していくべき。
・2013年度・14年度の税制改正では、企業の研究開発投資、設備投資・賃上げを促すために、税制上の措置を行った。これらの政策税制は「集中投資促進期間」との整合性を踏まえて考える必要がある。
●欠損金の繰越控除制度の見直し
・長期間での税負担の平準化を図ることが望ましく、繰越控除期間を延長し、あわせて控除上限額を引き下げる見直しを行う。見直しにあたっては、中小企業への配慮が必要。
●受け取り配当などの益金不算入制度の見直し
・企業の株式保有が支配関係を目的とする場合は、配当収益を課税対象から外すべき。他方、資産運用の場合は、現金、債券などによる他の資産運用手段との間で選択が歪められないよう、適切な課税が必要。
・支配関係を目的とした株式保有と、資産運用を目的とした株式保有の取り扱いを明確に分け、益金不算入制度の対象とすべき配当などの範囲や、益金不算入の割合などについて、見直すこととする。
●減価償却制度の見直し
・定率法を廃止し、定額法に一本化すべき。
●地方税の損金算入の見直し(略)
●中小法人課税の見直し
・中小法人の範囲について:企業規模をみるうえでの資本金の意義は低下しており、資本金基準が妥当か見直すべき。
・軽減税率について:19%への軽減税率は厳しく見直す必要がある。リーマンショック後の対応として設けられた時限的な軽減税率(15%)は役割を終えている。
●公益法人課税などの見直し(略)
●地方法人課税の見直し(法人事業税中心に)
・外形標準課税について、現在の付加価値割の比重を高め、法人所得に対する税負担を軽減していくことが望ましい。資本金1億円以下の法人についても付加価値割を導入することが望ましい。このため、法人事業税における付加価値割の拡大、対象法人の拡大を行うべきである。その際、創業会社や中小法人への配慮を検討すべき。
●法人税の改革とあわせて検討すべき項目
・法人所得課税の減税を行う場合には、個人所得課税における資本所得課税の強化を検討すべきである。その際、金融所得課税の一体化の流れなどに留意する必要。
・住民税や固定資産税などについて充実を検討すべき。
●新税
・欧州諸国では銀行税が導入され、法人課税の一翼を担っている。法人税率下げの財源確保の一環として、新税導入の可能性も検討すべき。
吉川裕子 編集:石田仁志
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