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〔アングル〕対中輸出で自動車の苦戦続く、食品・サービスなど「安心安全ブランド」に成長余地

 [東京 21日 ロイター] 10月貿易統計は輸出が全般にさえない内容となり、特に日中関係の悪化が自動車関連輸出に集中的に影響している姿が浮き彫りとなった。新政権移行後も中国の対日強硬姿勢はさらに厳しくなる可能性があり、日本ブランドの代表である自動車の不買運動は続く可能性がある。こうした中で、高い伸びを続けるのが「安心安全」を売る日本ブランドだ。食料品や医薬品、化粧品にとどまらず、幼児玩具や日本式教育、幼稚園といったソフト・サービスは他の追随を許さない。専門家は今後の対中成長戦略はこうした分野にも力を入れるべきと指摘している。

     <不買運動の対象は自動車に集中>

 輸出は夏場以降、けん引役の製品も好調な地域も失い、低調に推移してきた。内閣府の試算では10月は米・EU・アジア向けともに輸出数量が減少した。 

 日中関係の悪化が懸念された対中輸出は、前年比マイナス11.6%と9月よりややマイナス幅が縮小、7、8月と比べても前年比自体はさほど変わらず、「全体への影響は限定的だった」(ニッセイ基礎研)が、内訳を見ると、日中関係悪化以降、自動車の減少幅が大きく拡大しており、10月は8割減まで落ち込んだ。

 中国市場で不買運動の影響が最も大きく出るのが最終消費財であり、選択肢のある自動車は日本ブランドから他国車への代替が起こりやすい。日本車の落ち込みはドイツ、韓国車などの販売が2ケタ増となったことと対照的だ。中国の新政権は、引き続き日本への強硬姿勢を取り続けないと国内体制の維持が難しいとの見方もあり、不買運動は長期化する可能性もある。

 他方で日本製品とわかりにくい資本財や部品などへの日中関係悪化の影響はさほど大きく出ていない。一般機械は前年比2割程度減少しているものの、減少幅は以前とさほど変わらず、中国景気の悪化が影響したものだ。また電機でも輸出は8月を底に前年比で徐々に回復傾向にある。

 実際、ロイター企業調査(400社対象)では、日中関係悪化の影響で対応を考えるとした企業の割合は10月の46%から11月は39%にやや低下し、落ち着きを見せている。

 エコノミストの間では、中国の景気指標は10月発表分からある程度持ち直しの兆しを見せており、過剰在庫問題が解消するにつれ、反日運動の影響の小さい業種の輸出も回復傾向となるとの見方が多い。「中国では、在庫調整の進ちょくや財政・金融両面の政策効果を背景に、生産活動に持ち直しの兆しが出始めている。こうした中で、日中対立の悪影響が徐々に弱まっていけば、対中輸出は今年10─12月期がボトムとなる可能性が高い」(シティグループ証券)との観測も浮上している。

      <安心安全商品は打撃受けず>

 日本車の打撃をよそに、中国で引き続き人気を保っている日本ブランドもある。他国の代替品へのシフトが難しい「安心安全ブランド」として強みがある分野だ。医薬品の輸出は9、10月合計で前年比3割増を達成、化粧品も9月に2割増となっている。食料品も10月は5割増となった。

 こうした品目のウエートは小さいが、潜在需要は大きく、伸びる余地がある製品と言われている。

 尖閣問題浮上後に開催された成都での食品博覧会での日本の食品への評価は高く、完売するなど大成功を収めた事例もある。現地視察に行った中国専門家によると、中国人の生活の一部に組み込まれている紙おむつ、粉ミルク、食品スーパーといった日用品関連業種は反日デモの最中でも影響は軽微だという。ベネッセコーポレーションでは中国の教育事業が今年4─9月期で2ケタの増収をみせた。

  キヤノングローバル戦略研究所の瀬口清之・研究主幹は「日本の得意分野は中国がこれから発展させたいと考えている重点産業分野(環境・省エネ、先端医療・介護、先進的な小売・物流、高品質の住宅など)と重なるケースが多く、日本企業に対する誘致熱は高まっている」と語る。また反日デモで大きな被害を受けたスーパーや飲食店でも、世界屈指の質を誇る日本のサービスは高い評価を受けており、事業の成功確率が高いという。

 日本企業の間では、今回の日中関係悪化を受けて、中国消費市場の開拓意欲が低下しており、ロイター11月企業調査では今後の新たな販売拠点として中国を挙げる企業はインドネシアやインドの半分程度にとどまった。しかし、日本人の所得層とも重なる年収200万円クラスの所得層がすでに2億人程度存在する市場には未開拓の地域や潜在的中間層が億人単位で存在している。瀬口氏は、非製造業のサービスのノウハウを生かした中国進出の余地は大きいと指摘する。

 日本企業にとって中国事業は試練の時を迎え、対中輸出も落ち込みが続くが、得意分野を見極め、潜在需要を発掘することで、成長戦略として中国を取り込む余地はまだ大きいともいえそうだ。

 (ロイターニュース 中川泉;編集 石田仁志)

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