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再送:〔特集:一体改革〕党・政府内に消費増税慎重論、野田首相「火だるま」の気配

*以下の記事は19日午後6時47分に配信しました。

 [東京 19日 ロイター] 消費増税に向け、社会保障と税の一体改革で年内の素案とりまとめを目指す野田佳彦首相の足元が揺らいでいる。民主党内だけでなく政府内にも消費増税慎重論者を抱え、今週から始まる本格議論は立ち往生する気配さえ感じられる。素案とりまとめに残された時間は約2週間。退路を断って消費税増税の実現を訴える首相の危機感を民主党議員が共有できるか。年内のとりまとめは、ずれ込むという声も出始めている。

   <20日から税調で本格議論、強まる抵抗>

 民主党税制調査会は20日から消費税増税について議員による自由討議を始め、社会保障・税一体改革素案とりまとめに向けた議論を本格化させる。早ければ20日に検討項目を示した論点整理メモを執行部が提示し、議論の集約を図る。消費税引き上げ時期と幅、低所得者対策、増税を実施する際の経済状況をどう定義づけるかが焦点となっている。

 しかし、党内の増税反対論は根強く、とりまとめ作業は入口で立ち往生しかねない状況だ。筆頭副幹事長の鈴木克昌氏が増税反対の署名活動を働きかけるなど、首相を支える役回りの民主党執行部さえも一枚岩とは言えないのが現状だ。鈴木氏は署名活動の文書で「今すべきことは政権交代の原点に立ち戻って、行財政改革を徹底して実行することだ。衆議院の今任期中に(消費税)引き上げを決めるべきではない」と訴えている。

 このため税調執行部から「初日の出は議員会館で」との声が出るなど、年内とりまとめがズレ込む可能性を示唆する声も出始めた。

  <政府内に増税慎重論、景気条項で対立>

 一方、政府税調内でも、温度差は歴然としている。6月の社会保障・税一体改革成案とりまとめの時に党内で反対論を展開した議員が複数名、今度は副大臣として税調の議論に釘をさしている。これら副大臣の起用は、反対論者を政府に取り込むことで、反対を封じ込めるとの政権側の思惑もあった人事だったが、期待外れとなったかたちだ。

 7日のキックオフの議論でも、松原仁国土交通副大臣は、6月の成案決定の際に、増税を実施する場合には経済状況の好転を「条件」とすることをめぐって2日間大議論したことを再確認したうえで、「条件は極めて重い表現だ」と指摘。「経済状況の好転の条件」をどう定義づけるかでは、「数値でデフレ脱却がはっきりと明示的に確認できる。そして、経済のパイの拡大がはっきりと明示的に確認できるということになろうかと思っている」と述べ、あらためて経済指標の数値目標化を主張した。

 これに対して、政府・民主党税調執行部は、経済状況次第では増税実施を停止する「景気の弾力条項」に具体的な経済指標の数値を明記することには否定的で、さまざまな経済指標を総合判断するとの立場だ。数値目標化が事実上の「凍結」につながることを警戒するためだ。藤井裕久民主党税調会長も15日のロイターのインタビューで「制度を硬直化させ、実効性を損なう」と懸念を示している。

  <消費増税議論に「アメ」、党内融和で理念後退>

 政府は来年度税制改正では車体課税の軽減で民主党税調に譲歩し、第4次補正予算案編成を第3次補正予算の執行が始まらない前から決めた。全ては、年末に控える「消費増税の議論」のための「アメ」であることを認める。

 社会保障改革の議論でも、70─74歳の高齢者の医療費の窓口負担を2割に戻すなどの負担増は軒並み見送り、痛みを伴う議論は後回しにする党側の主張への譲歩が続いている。しかし、この結果、一体改革で目指すはずの全世代で負担を分かち合うという本来の理念から後退し、消費税上げの第一歩でつまずきかねない事態に陥りつつある。

 年内メドの素案とりまとめ時期が元旦以降にずれ込む可能性についても、ある野党筋は「党内分裂・新党結成の動きを年内見極めたいとの慎重論が支配的なため」と説明する。政党助成金が1月1日現在の議員数で決まるため、新党を結成するのであれば年内に動きがでるとみられるためだ。

 執行部の増税反対署名活動も放任されている。輿石東民主党幹事長は13日の記者会見で、鈴木克昌氏の署名活動について「けしからんという行動でも話でもない」との考えを示しているが、これも党内融和が尊重されるためだという。

 同野党筋は、行政改革推進のために民主党内に設置された行政改革調査会も「泥縄だ」と批判的で、年内に具体的な素案がまとまる保証はないと冷ややかだ。

 (ロイターニュース 吉川 裕子;編集 石田仁志)

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