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〔アングル〕IFRS視野に決算期変更が相次ぐ、強制適用時期不透明でもグローバル化に対応

 [東京 1日 ロイター] 強制適用時期が延期されたままの国際会計基準(IFRS)だが、海外展開を進める上では避けて通れない道として、将来の適用を視野に、まずは決算期の変更から取り組み始めた企業が出始めた。海外M&A(買収・合併)を積極推進している企業は、海外子会社との決算期を合わせる必要があるためだ。中にはIFRSに距離を置く企業もあるが、製造業のみならず、非製造業もアジアの成長を取り込むべくグローバル化を進める中で、外堀は徐々に埋まりつつある。

 <JT、のれん償却停止で営業利益は830億円増加要因>

 日本たばこ産業(JT)2914.Tが4月26日発表した2012年3月期決算は、日本企業としては5社目の国際会計基準(IFRS)の適用となった。合わせて、14年度を4―12月期の9カ月変則決算とし、15年度から12月決算に移行する方針も表明した。

 会見で木村宏社長は「資本市場における財務情報の国際的な比較可能性を向上させるとともに、国際的な市場における資金調達手段の多様化等を目指してIFRS適用を決めた」と説明した。

 競合する企業が外国企業である同社にとっては、他社と会計基準を同一にするメリットは大きい。1999年にRJRナビスコから米国外のたばこ事業を取得。2007年には英国ギャラハー社を買収し、海外事業展開は一気に加速した。12年3月期営業利益は、海外たばこ事業が半分以上を占めており、比較対象は常に、フィリップ・モリス・インターナショナルやブリティッシュ・アメリカン・タバコなどの海外たばこ会社だ。

 12年3月期決算で比較した場合、IFRS適用によって、日本基準に比べて売上高(IFRSでは売上収益)は5133億円減、営業利益は845億円増、当期利益(IFRSでは親会社所有者帰属当期利益)は935億円増となっている。

 売上高減に影響した最も大きな要因は、物流事業売上高が代理店取引扱いとなるため、それを差し引くこと。一方、利益増加要因となったのは、のれん償却の停止だ。JTの場合、12年3月期ののれん残高が1兆1100億円もあり、IFRS適用によるのれん償却停止が大きく効いてくる。

 東京証券取引所によると、すでにIFRSを適用しているのは日本電波工業6779.T、HOYA7741.T、住友商事8053.T、日本板硝子5202.Tの4社。これにJTが加わった。

 このほか、12年4―6月期からディー・エヌ・エー2432.Tが適用を開始すると表明しているほか、26日にはSBIホールディングス8473.T、アンリツ6754.Tも13年3月期からの任意適用を発表した。SBIはリリースの中で「香港証券取引所メインボード市場にHDR(香港預託証券)を上場するなど、グローバル企業への転換を着実に進めている。また、12年3月期末で外国人投資家の保有比率が約45%と高い水準にあるだけでなく、香港証券取引所におけるHDR上場に際しても早期のIFRS適用が求められていた」などと説明している。アンリツも海外売上高比率が約60%に達しており、こうした企業は、IFRS適用に動いている。

 <IFRS適用の前哨戦、決算期変更企業が増加>

 日本では、2015年3月期にも強制適用される可能性があったが、これが延期されており、現時点も時期は不透明なままだ。ただ、日本企業が成長の源泉としているアジアの多くの国はすでにIFRSを適用しており、日本の強制適用の時期が定まらなくても、外堀が埋まっていく可能性を指摘する声がある。 

 実際、海外子会社が増加する中では、決算期のずれによるデメリットも増加している。ある企業の財務担当者は「ホールディング化や子会社の増加で、決算作業は煩雑化している。海外子会社との決算期のずれも負担だ」と話す。IFRSの適用には踏み切らないまでも、その前段としての決算期変更を行う企業は増加している。

 花王4452.Tは、13年度から決算期を3月期から12月期へと変更した。尾崎元規社長は「政府の動きをにらみながら、IFRSに移行することがグローバル企業として相応しいというタイミングを見て導入を図りたい」とし、適用時期については、未定というスタンスだが、先行して、決算期の変更を実施する。

 決算期変更については、グローバルな市場や競合他社との比較上の必要性に加え「今後、海外売り上げのウエートが増えてくると、国内と海外の決算期がずれていることで、数字と戦略の説明が難しくなる」と説明。同社は、現在23%の海外売上高比率を50%まで高めることを目指している。

 このほかにも、東洋ゴム工業5105.TやJUKI6440.T、サイボウズ4776.T、ダイナック2675.Tなども、12月期へ決算期を変更した。ダイナックでは「親会社のサントリーホールディングス[SUNTH.UL]の決算期が12月期であること、グループとして効率的な業務執行を行う必要性が高まっていること、親会社がIFRSへの対応を検討していること」(広報)を決算期変更の理由に挙げている。

 中国では法令で12月決算が定められるなど、日本を除く海外企業の多くは12月決算だ。こうした国内外の決算期のずれを一致させるために、子会社よりもあえて日本の本社の決算期の変更に踏み切る企業が出ているわけだ。現在は、4月下旬から5月上旬にかけてが、3月期決算企業の本決算発表ラッシュの時期だ。国際化の進展とともに、数年すれば、1月下旬から2月上旬が本決算発表のハイシーズンになるかもしれない。

  (ロイターニュース 清水律子;編集 布施太郎)

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