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再送:〔焦点〕ルネサス<6723.T>再建案、実現に高いハードル 主要株主の足並み揃わず

*この記事は27日午後4時49分に配信しました。

 [東京 27日 ロイター] 赤字体質からの脱却を目指す半導体大手ルネサスエレクトロニクス6723.Tが全従業員の約3割に相当する1万2000人以上を削減する方針を固めた。不採算の工場売却や拠点の統廃合も検討し、リストラ費用を捻出するため1000億円超の資本増強を計画する。だが、主要取引銀行に提示したこの再建案が計画通りに実現するかは不透明だ。

 まず増資引き受けを要請する日立製作所6501.T、三菱電機6503.T、NEC6701.Tの主要株主3社の足並みが揃っていない。不採算事業の切り離しもうまく進むのか懸念する声が出ている。人員削減や増資で本当に息を吹き返せるのか。株主や金融機関が納得できるようなリストラの先にある成長戦略を描けているか。ルネサスは7月中に再建策を公表する予定だが、多くの課題が待ち構えている。

<安易に増資に応じられない事情>

 「あれが最後だったはず。金融支援はさすがに今回は厳しい」――。NEC幹部は追加出資をきっぱり否定した。「あれ」とはルネサスが発足した当時の増資のことだ。

 ルネサスは、2003年4月に日立と三菱電がシステムLSI(大規模集積回路)事業を統合させて誕生したルネサステクノロジと、02年11月にNECが分社化したNECエレクトロニクスが10年4月に経営統合して設立。日立、NEC、三菱電の3社は設立前後で総額2000億円に上る増資支援に応じた。だが、「あれが“手切れ金”だった」(同NEC幹部)なら、追加出資に否定的なのも当然と言える。

 そもそもNEC自身に余裕がない。携帯電話端末事業の不振などで12年3月期は1102億円の最終赤字に陥り、1万人削減など構造改革の真っ只中。主取引銀行の三井住友銀行からは「人を助ける前に自分の出血をどうにかしろと言われそうだ」(同NEC幹部)。

 日立も追加出資には慎重だ。米ゼネラル・エレクトリックGE.Nや独シーメンスSIEGn.DEと世界で互角に戦えるよう収益改善に取り組み中。これまで事業の集中と選択を図り、半導体など市況変動の激しい事業から撤退し、社会インフラ事業への強化を進めている。今さらルネサスに追加出資したら、株主に説明がつかない。ルネサス業績悪化の主因の1つで、売却が検討されている鶴岡工場(山形県鶴岡市)が旧NECの拠点だけに「NECが出資するなら考えてもいい」(日立幹部)と受け流す。

 JPモルガン証券の和泉美治アナリストは「主要株主も“つぶさないため”というだけの理由で安易に増資に応じた場合はネガティブな評価を受ける可能性が高い」と語る。三菱電の山西健一郎社長は21日の経営戦略説明会で、「(ルネサスから)何らかの要請が来た場合は親会社3社で検討したい」と語ったが、まずは3社が一枚岩になれるのか、支援にどう応じるのかが焦点となる。

 12年3月末時点での3社の出資比率は、日立が30.6%、三菱電機が25%、NECが退職給付信託名義分の32.4%を含めて35%となっている。

<鶴岡工場、ルネサスモバイルの行方>

 鶴岡工場の売却交渉の行方も安心できない。売却先候補として半導体受託生産(ファウンドリー)世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)2330.TWの名前が浮上しているが、TSMC関係者は26日、ロイターの取材に対して「購入する計画はない」と答えた。半導体業界に詳しいアナリストも「常識で考えたら、コスト競争力、技術、どれをとっても鶴岡にあってTSMCに足りないものが見つからない。買う理由があるなら逆に教えてほしい」と冷ややかだ。

 鶴岡工場は薄型テレビやデジタルカメラ、ゲーム機向けのシステムLSIを手がけている。製品や顧客ごとに仕様が異なり、各社の要望に応えて作るカスタム製品が主流で、多品種少量のため生産効率が悪い。ルネサスの顧客の中心は国内電機メーカー。韓国サムスン電子005930.KSなどとの競争に敗れた国内メーカーの最終品の販売低迷で、少しでもコスト削減につながる数量効果すら見込めなくなった。

 たとえ赤字でも受注を積み上げなければ工場の稼働率を維持できず、固定費負担がかさむ。だが、ルネサス社員は「不採算の契約はとってくるなと上から営業活動を止められている。顧客に逃げられる一方だ」と肩を落としている。システムLSIの一角で、SoC(システム・オン・チップ)と呼ばれる事業の売り上げが12年3月期の第2・四半期をピークに四半期ベースで低下しており、「毎月、数十億円ずつ赤字が膨らんでいる状態だ」(先の半導体業界アナリスト)。

 リストラ対象となっている携帯電話用半導体子会社ルネサスモバイルも前途多難が予想される。産業革新機構が仕掛け役となって交渉を進めている富士通6702.T、パナソニック6752.TとのシステムLSI事業の統合でつくる新会社にルネサスモバイルの社員を一部移管する案も検討されているが、富士通、パナソニック、ルネサス3社連合の話が思うように進んでおらず、新会社が生まれるのかどうか不透明だ。

 10年にフィンランドの携帯電話機大手ノキアNOK1V.HEから約180億円で無線通信技術(ワイヤレスモデム)事業を買収して誕生したルネサスモバイル。急速なスマートフォン(高機能携帯電話)普及の波に乗り、LTE(次世代高速通信規格)対応の半導体で勝負をかけたいところだが、10数社がひしめき合う携帯電話向け分野の競争は厳しさを増す一方。同業シェア首位の米クアルコムQCOM.Oの背中もほど遠い。

<強みのマイコンに陰り、シェア低下懸念も>

 大規模なリストラを断行し、自動車などを制御する世界首位の半導体マイコンに経営資源を集中することで再建を図りたいルネサス。マイコンは全売上高の約4割を占め、営業利益率でも10%以上を維持。特に自動車向けは約4割のシェアを握る。だが、そのマイコンでも陰りが出始めており、シェアを少しずつ失っていく可能性がある。

 昨年は東日本大震災で被災した主力の那珂工場(茨城県ひたちなか市)が生産停止に追い込まれ、自動車産業のサプライチェーン(部品供給網)寸断を招き、ルネサスが自動車産業の要であることを浮き彫りにした。だが皮肉にも、自動車メーカー各社は震災の教訓からルネサス以外からの部品調達拡大に動き始めている。自動車メーカーからの出資を期待する声もあったが、トヨタ自動車幹部は「深入りしたくないので、出資は避けたい」と漏らす。

 これまでも設立母体の日立、三菱電、NEC3社の開発手法や生産技術が異なることなどを理由に、工場の統廃合や人員削減を積極的に進められず、合理化は遅れていた。ルネサスは今回、システムLSI以外のマイコンやアナログ・パワー半導体でも複数ある生産拠点の統廃合を進める方針だが、国内に19ある工場に、ルネサスが本気で大ナタを振るえるかどうかだ。

 もっとも今回浮上した人員削減などは統合時のリストラを先送りしてきた結果に過ぎない。先の半導体業界アナリストは「これまで1+1+1=3にも2にもなれなかった。(人員削減や工場統廃合という)引き算の再建策だけでは明るい未来は描けない」と切り捨て、「新たな筋肉になる足し算的な再建策も必要だ」と強調する。

 ルネサスの12年3月期の最終損益は626億円の赤字(前の期は1150億円の赤字)。発足以前から各社の赤字体質事業の寄り合いだったため、発足直前の10年3月期も1378億円の赤字だった。ルネサス幹部も「結果的に何人削減しても、本業で収益を上げて成長しないと意味がない」と話す。発足3年目のルネサスの覚悟が試されている。

(ロイターニュース 白木真紀;編集 橋本 浩)

※(maki.shiraki@thomsonreuters.com; 03-6441-1695; ロイターメッセージング:maki.shiraki.reuters.com@reuters.net)

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