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〔アングル〕第2次シニアブームが到来、完全引退する団塊の世代が静かに景気を下支え

 [東京 11日 ロイター] 団塊の世代が今年から二度目の退職を迎え、完全引退後に彼らが手にするお金と時間に注目が集まっている。5年前の第1次シニアブームが空振りに終わった企業側の対応はまだ目立たないが、年金が満額支給される今回こそは日本経済を下支えする切り札になるかもしれない。

   <不発の07年、今回は本格化期待>

 「これから3年間は高齢者消費による景気下支えが期待できそうだ」──政府内では団塊世代が完全退職を迎えて期待感を示す声が上がっている。1947年から49年に生まれた団塊の世代は664万人以上、千葉県の人口を超える規模だ。彼らは今年から65歳を迎え、毎年200万人以上の「第2の退職者」が生まれる。

 団塊の世代が60歳を迎えた2007年にも同様の期待が広がったが、蓋を開けてみるとシニア消費は思ったほど盛り上がらなかった。その理由を日本リサーチ研究所の藤原裕之・主任研究員は、8割程度が再雇用または定年延長の形で仕事を続けたためと分析する。年金が満額支給されず、時間的な余裕も増えなかったという。しかし今回は、65歳を迎えて多くの人が完全に退職するとみられる。年金が満額支給される上に時間的なゆとりが生まれ、「消費に回せる金額が増加することは間違いない」と、藤原氏は話す。

 完全退職に伴う団塊世代の消費押し上げ効果について、電通総研はおおむね7兆円と試算する。数年にわたり年間135兆円規模の小売販売額を2─3%ずつ押し上げることになりそうだ。

   <くくられたくない世代>

 ただ、企業側に特別な対応はみられない。従来のシニア層と異なり、団塊の世代は年齢でくくられることに抵抗感が強く、マーケティングが難しいのが要因だ。

 三越伊勢丹ホールディングス3099.Tは「市場の拡大には期待している」(広報部)としながらも、「特別にシニア層に向けた商品の企画ははまだない」という。「アクティブで年齢にこだわらないこの世代の需要はいわゆる高齢者需要では対応できない。多様化している需要をどう取り込むか指示は出ているものの、難しい課題」(同)と頭を悩ませる。JTB(東京都品川区)も「シニア向けというある年齢層をターゲットにした特別な旅行商品は特に企画していない。年齢よりも誰とどのような旅行をするかで個々に需要は異なる」(広報部)と話す。

   <非日常的なものは苦手>

 試行錯誤する各社がとりあえず出した答えは、従来の商品を大幅に変えずに価値を上げること。JTBは企画・説明会から旅行日程の最終日まで担当者を同じにして、安心感を売りにするツアーを企画したところ、シニア層を中心に好評だという。三越は20万円前後の箱根1泊ツアーに、著名人の講演などを盛り込みさらに付加価値をつけた。大手レンタルビデオチェーンは、名画やシニア世代の趣向に合わせた品ぞろえを強化した店舗を出店しはじめた。

 ニッセイ基礎研究所のアンケート調査によると、シニア層は健康維持や食生活といった日常生活に関する意識は高いが、海外旅行など非日常的な行動への関心はそれほど高くないという。これまでの人生経験で自分なりに慣れ親しんできた行動や価値観にこだわりがある世代とも言われている。同研究所の久我尚子研究員は「シニア向けと銘打って特別な新しい商品やサービスを提供するマーケットを創り出すのではなく、既存の市場をいかにシニア向けに対応させるかを考えるべき」と指摘する。

 総務省の家計調査によると、65歳以上の今年1─3月の支出は前年比2.2%増と、30代の1.6%増を上回った。昨年前半は東日本大震災後の自粛の影響があったが、後半になると他の世代の消費を上回る伸びを示した。「確実に使えるお金を持っている世代であることは間違いない」(朝日カルチャーセンター)との声があるように、退職金や年金はデフレや景気悪化の影響を受けにくい。派手なヒット商品で爆発的に市場が拡大することはないかもしれないが、静かに景気を下支えすることが期待される。 

 (ロイターニュース 中川泉;編集 久保信博)

※(izumi.nakagawa@thomsonreuters.com; 03‐6441‐1834; ロイターメッセージング:izumi.nakagawa.thomsonreuters.com@reuters.net)

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