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〔焦点〕有能な元銀行トレーダー、自身のファンドの業績振るわず厳しい現実に直面

 [ロンドン 28日 ロイター] 極めて有能な銀行トレーダーの一部が銀行を退職し、自身のヘッジファンドを立ち上げているが、独立後の現実は厳しい。設立後のリターンはライバルに見劣りし、投資家を失望させている。

 米金融規制改革で、銀行の自己勘定取引を制限する動きが出ていることから、ここ数年の間に十数人の優秀なトレーダーが銀行を辞め、自身のファンドを設立している。

 この中には、元ゴールドマン・サックスGS.Nのスタートレーダー、モルガン・ツェ氏やピエールアンリ・フラマン氏、クレディ・スイスCSGN.VX、モルガン・スタンレーMS.N、ドイツ銀行DBKGn.DEなどのトレーダーが含まれている。

 投資家は、彼らの投資手法に乗じようとファンドに飛びついたが、その多くはファンドのパフォーマンスに失望感を募らせている。

 ファンド・オブ・ファンズのカイロス・パートナーズのパートナー、ミケーレ・ジェスアルディ氏は「彼らが銀行の中で、資金の流れやスマートマネーの動向について多くの見識を積んで生み出していた利益を(独立後も)再現できるということを、実際どれだけ信用できるのかが問題だ」と指摘。

 「これまで見てきたところ、私はやや懐疑的になっている」と語った。

 ロイターが入手した投資家レターによると、フラマン氏のエドマ・パートナーズは2010年11月の設立以降のリターンが3月末時点でマイナス3.1%だった。

 また2人の業界関係者によると、ツェ氏の香港を拠点とするアゼンタスも、2月末までの11カ月間のリターンがマイナス4.8%。

 他のゴールドマン出身トレーダーが立ち上げたベンロス・キャピタル・パートナーズも、投資家レターによると、2011年6月の立ち上げ以降のリターンが、3月末時点でマイナス2.84%となっている。

 スタートレーダーが立ち上げたファンドは、ライバルファンドのパフォーマンスを下回っている。ヘッジファンド・リサーチによると、フラマン氏のファンド立ち上げ以降のイベントドリブン型ファンドの平均的な運用成績はプラス0.8%。

 ツェ氏のファンド設立以降、イベントドリブン型ファンドの平均的なリターンはマイナス2%超だが、同氏のアゼンタスと比べると半分以下の落ち込みだ。

 その他のファンドはもっと悪い状況で、関係筋によると、元モルガン・スタンレーの共同社長だったゾーイ・クルス氏は、ボラス・キャピタルを立ち上げからわずか2年で閉鎖しようとしている。同ファンドは資金調達が困難になっており、昨年の運用成績はマイナス8%と、平均的なヘッジファンドのマイナス5%を下回った。

 エドマとベンロスはコメントを拒否。アゼンタスとボラス・キャピタルからのコメントは今のところ、得られていない。

 <事業の経営>

 ヘッジファンド・マネジャーに転身する元社内トレーダーの現実は厳しいことが多い。マネジャーはまず、投資に費やすのと同じぐらい多くの時間を小規模事業の経営における実務に費やすことになる。

 元UBSグローバル・アセット・マネジメントの米国担当最高投資責任者(CIO)で、2009年にマクロヘッジファンドのシンガー・パートナーズを立ち上げたブライアン・シンガー氏は「残念ながら、自分の会社を持つと、実際には思っているほど投資に集中できない。事務処理や法務、コンプライアンス(法令順守)、マーケティング関連など、われわれが得意でないことをしていた」と語った。

 おそらく、それよりも重要なことは、銀行の自己勘定取引トレーダーが、あらゆる市場で利益を出すことを求められる一方、市場が不透明でリスクが高いと判断した場合、キャッシュに投資して状況改善を待つ機会が得られるのに対し、ファンドマネジャーは顧客への手数料を正当化するために、あらゆる市場サイクルにおいて投資しなければならないということだ。

 野村8604.Tを退職し、昨年アビタ・キャピタルを設立したデーブ・マシューズ氏は「実績を築こうとし、リターンを生むことにプレッシャーを感じている起業1年目のマネジャーに同情する」と語った。

 <銀行トレーダーのファンドマネジャーへの転身続く>

 経理や人事などの事務サービスをヘッジファンドに提供しているスログモートンのディレクター、ロジャー・ガンパットシン氏によると、元銀行トレーダーのファンド立ち上げへの関心は依然として強い。

 ファンド設立を遅らせた場合でも、通常は資金調達が困難なことが理由で、リターンを生み出す自身の能力を懸念してではないという。

 ただ、ヘッジファンドの平均運用成績は過去4年のうち2年でマイナスとなっており、投資家はリターンに関する寛容度が後退している。元銀行トレーダーには、自身のスタートレーダーとしての地位に恥じないよう実力を証明する時間がほとんど残されていない。

 カイロスのジェスアルディ氏は「今年はヘッジファンドにとって正念場となる」と指摘した。

 (Tommy Wilkes記者;翻訳 佐藤久仁子;編集 山川薫)

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