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〔焦点〕中国、一人っ子政策に変更の兆し

 [酒泉(中国甘粛省) 22日 ロイター] 中国は、ゴビ砂漠近くの村に住むHu Yanqinさん(32)のような女性がいるために「一人っ子政策」の緩和を検討しているかもしれない。

 甘粛省酒泉のような農村地域では1985年から2人の子どもを持つことができるようになったものの、Huさんは7年前に建設作業員の男性と結婚した際、1人しか子どもを持つことができないことが分かっていた。お金がかかりすぎるからだ。

 幼稚園に通う6歳の息子を持つHuさんは「2人の子どもを持つことができるのは暮らし向きが良い人だけ。この村では多くの人は1人しか子どもがいない」と話す。

 一人っ子政策の変更を支持する人たちは、Huさんや彼女のような数百万人の人たちを例に挙げ、法律を緩和しても出生数の急増にはつながらないと主張している。

 酒泉の出生率は1000人当たり8─9で、中国全体の平均である約12を下回っている。

 1980年に始まった一人っ子政策は、経済成長の妨げになっているとの見方が強まっており、社会問題化している。

 複数の予測によると、中国の労働力人口は約9億3000万人だが、2025年から年間当たり約1000万人のペースで減少する見込みだ。一方で、高齢者人口は2030年までに3億6000万人となり、2013年の約2億人から増加する見通し。

 中国人民大学の顧宝昌教授(人口統計学)は「このペースが続けば、納税者や労働者、高齢者を介護する人がいなくなる」と語る。

 中国国家統計局の馬建堂局長は18日、中国の労働力人口(15─59歳)が2012年に初めて減少したことを受け、中国は「適切かつ科学的な人口政策」を検討するべきと述べた。

 経済学者らは、中国の高い貯蓄率にも目を配るべきだと指摘する。一人っ子ではリタイアした両親、結婚している場合は4人の親の面倒をみなければならず、現役世代は定年後に備え、消費よりも貯蓄に励む傾向が強くなっている。

 こうした傾向は、中国政府が個人消費を拡大し、経済構造の均衡を目指す「リバランス」の障害となっている。

 胡錦濤国家主席が昨年11月の共産党大会で行った政治報告の中で、「低い出生率を維持する」との表現を削ったため、段階的に2人の子どもを持つことが認められるのではないかとの憶測が強まっている。指導者の主要演説からこうした表現が削られたのは10年ぶりだった。

 一人っ子政策の変更を支持している全国人民代表大会(全人代、国会に相当)代表の紀宝成氏は「個人的な解釈だが、政治報告は一人っ子政策が調整されることを示していると思う」と述べた。

 <残酷な政策>

 一人っ子政策は中国の人口の63%をカバーしており、中国政府によると、1980年以来、出生数を4億減らしたとしている。

 政策の進め方は残酷なところもある。人口政策を軽視した夫婦は最低でも罰金を科され、仕事を失う人もいるほか、中には堕胎を強制させられたり、不妊にさせられたりするケースもある。

 昨年夏には、妊娠7カ月の妊婦が堕胎を強制され、国内のインターネット空間で怒りが渦巻き、国際的な非難が寄せられたこともある。

 2008年には、中国人民大学の顧教授らが4地域(人口約800万人)における人口政策プログラムに関する研究を発表。子どもを育てるための高いコストが出生率を抑える一方、2人目の子どもを持つ自由があることで、出生時の男女比の不均衡が抑えられると結論付けた。

 翌年には、中国当局が人口政策を緩和する試行プログラムの対象地域を拡大することを決めたと複数の消息筋がロイターに明らかにしたものの、この提案は指導部のコンセンサスが得られずに断念されたという。

 一人っ子政策の見直しを支持する人々は、新たな中国指導部が政策の変更に乗り出すと期待している。

 人口政策に関わっていたある元当局者は「政策の調整は間違いない。あとは時間の問題だ」と述べた。

 <男女比の不均衡>

 一人っ子政策でやり玉に挙げられるもう一つの問題は出生時の男女比不均衡だ。

 多くのアジア諸国に共通するように、中国では伝統的に男の子をほしがる傾向が強く、女の子だと遺棄したりする夫婦も多い。このため、出生時の男女比は中国で118対100となっており、世界的な平均値である103対107に比べ、いびつな構造となっている。

 酒泉では2人の子どもを持つ自由があるため、この男女比は110対100となっている。

 一人っ子政策の策定に携わった田雪原氏はロイターに対し、男女比の不均衡問題について、10年前に中国指導部に警告していたことを明らかにした。

 同氏は当時の指導部に対し、「中国人男性の多くが配偶者を見つけることができず、社会の安定を損なう大きな要因になる」と話したという。同氏は「一人っ子政策は1世代の出生数をコントロールするための時限的な特別措置だ」と述べた。

 とはいえ、抵抗勢力の反対も根強い。

 中国の人口政策当局である国家人口・計画生育委員会の王侠主任は先週、中国は人口政策を「確固として着実に実行する」と述べた。

 アナリストらは、王主任の発言が必ずしも、3月に体制が刷新される中国政府の考えを反映したものではないと指摘する。

 国家人口・計画生育委員会はコメントを拒否した。

 酒泉では一人っ子政策が緩和されているものの、女性は依然として厳しい人口政策に縛り付けられている。

 女性は1人目の子どもを出産した後に子宮内に機器を取り付けられ、2人目を出産した後は不妊にさせられる。子ども2人の制限に違反すれば3万元の罰金を科される。

 違反する者はほとんどいない。酒泉の女性らは教育費など子どもを育てるための費用の高さへの不満を口にする。

 1人息子を持つXing Juanさん(26)は「子どもを育てるのは難しい。負担が重い」と話した。

 ( 記者 Sui-Lee Wee and Hui Li;翻訳 川上健一;編集 宮崎亜巳)

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