[ロンドン 21日 ロイター] 国際通貨基金(IMF)は、今後の救済コストを負担し、金融システムの一段の安定化を図るため、2つの新たな銀行税を提案する。
20カ国・地域(G20)は、「大きすぎてつぶせない」銀行の問題に対応し、今後起こり得る金融危機の際に再び納税者の資金を頼る必要がないよう、IMFに提案を求めた。
IMFは、23日にワシントンで開かれるG20財務相・中央銀行総裁会議で暫定提案を示す。
以下は、G20が6月にカナダで開催される首脳会議と11月に韓国で開催される首脳会議で世界的な銀行課税制度に関して合意成立を目指す前に整理されるべき疑問点。
<救済基金に対し誰が何を負担するのか>
IMFの提案には、2つの新たな銀行税が盛り込まれている。
ひとつは、今後の政府による金融セクター救済コストを負担するために利用される「金融安定負担金(FSC)」。
FSCには、すべての金融機関が当初一定額を支払うが、負担金は時間とともに個別の機関のリスクに応じて調整される。
IMFは、一段の負担金が求められる場合、金融機関の利益と報酬に課される「金融活動税(FAT)」により徴収すべきだと提案。
関係筋によると、FATの調達額はその国の国内総生産(GDP)比0.2―0.4%、FSCの調達額はGDP比2―4%に相当する規模になる可能性がある。IMFによると、今回の金融危機でG20各国・地域が負担した金額はGDP比約2.7%に達したという。
<IMFの提案は採用されるのか>
IMFの提案は、世界的な銀行課税制度をめぐる最終合意というより、議論の出発点となる可能性が高い。
オバマ米大統領は、金融機関の救済に充てられた公的資金の回収に向け、大手金融機関から10年間で900億ドルを特別徴収する「金融危機責任料」を提案。ドイツは独自の提案を策定中で、スウェーデンは将来の危機に対応するための基金設立に向け課税制度を導入した。英仏も課税制度を支持している。
先週マドリードで開かれた欧州連合(EU)財務相会合では、英仏が課税で得た収入を国の予算に組み込むことを望んだのに対し、ドイツはスウェーデンと同様に救済基金の設立を望んだため、銀行課税について合意に至らなかった。
IMFはこうした各国の温度差を埋めようと、FSCに集められた収入は救済基金に充当する、または国の予算に組み込む可能性があるとしている。
IMFはまた、特別基金を設立すれば、自分達を救済する資金があると確信した銀行によるリスクテークを助長するとのモラルハザード懸念について、課税は有効な解決メカニズムに関連しており、破たんした銀行を処理する選択肢は実効的なものだとしている。
<世界的な銀行課税構想は固まっているか>
まだだ。カナダは銀行課税制度について世界的な合意がまとまっても採用しない方針を繰り返し表明している。
IMFの暫定提案が明らかになった20日、カナダ当局者は、G20会合での銀行課税制度に対する機運の高まりには限界がある、との見方を示した。
オバマ米大統領の金融危機責任料に関する提案はまだ議会の承認を得ていない。英国も銀行課税制度の導入には国際的な協調が欠かせないとしている。
IMFは、銀行課税制度を導入するのであれば、その基盤と最低課税率についてG20会合での合意が必要になる、と指摘している。
<他に障害はあるか>
G20会合で、世界的協調に基づいた銀行課税制度に関する議論がどの程度まで行われるかによる。
欧州の中央銀行や金融安定化理事会(FSB)、カナダなど一部の国は、国際決済銀行(BIS)の新たな銀行自己資本規制「バーゼルIII」の導入を優先させるべきだとしている。
一部の中央銀行は、銀行課税をめぐる議論が長期化することで、2012年までの適用を目指すバーゼルIIIへの政治的な勢いが失われることを懸念している。
銀行の間ではバーゼルIIIの適用は過大な負担を伴うとの声が高まっており、これに新たな課税制度の導入が加わればこれらの見方を後押しし、G20会合での課税に関する合意成立を妨げることになる。
<トービン税の可能性は>
金融取引に課税するトービン税については、米国が昨年反対を表明しており、導入される可能性は事実上なくなったとの見方がある。
一部の非政府組織(NGO)から金融取引税の導入を求める声があるものの、IMFの暫定提案はこの形式による課税について言及していない。
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