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再送:〔アングル〕鉄スクラップ急落で懸念される欧州危機の波紋、景気楽観シナリオに黄信号

*以下の記事は10日午後6時50分に配信しました。

 [東京 10日 ロイター] 国内の鉄スクラップ価格が急落している。国際商品である鉄スクラップは欧州や韓国、中国といった主要製鉄国の需給を反映し世界の景気動向に敏感で、ギリシャ問題に端を発した欧州経済危機が中国の実体経済に影響を及ぼし始めた予兆との見方も出ている。中国など新興国の経済成長に支えられて国内景気が回復を続けるとの日銀のシナリオにも影響を与える可能性がありそうだ。

 <5月初めから3割下落、中国向け輸出減にユーロ・ウォン安拍車>

 国内の鉄スクラップ価格の指標とされる関東鉄源協同組合(東京都品川区)の輸出入札価格は、9日に実施された6月契約の平均落札価格が1トン当たり2万8070円と前月比で8113円下落した。2カ月連続で下げ、国内市況は5月初めの水準から約3割下落している。昨年12月は1トン当たり2万5000円前後だった国内スクラップ市況は、国内の建材向け鉄鋼原料としての需要が低迷する中、好調な輸出需要に支えられ、4月末には3万9000円程度まで上昇していた。だが、5月の連休明けから下げ始め、6月に入りわずか10日間でトン4000─5000円程度値下がりしており、下落ピッチは加速している。

 関東鉄源協同組合の渡辺淳理事長は「春先から中国が買わなくなった。(日本の主要な輸出先である)韓国向け輸出は続いているが、哨戒艦沈没以降の通貨ウォン安もあり量は減少している。そして欧州や中東向け鉄鋼輸出拠点であるトルコでスクラップ価格が下落したことも響いている」と指摘した。

 中国向け鉄スクラップ輸出がなぜ減少しているのか──。内外の市場関係者が注目し始めたこの点について、渡辺理事長は「春ごろは金融引き締めの影響と言われたが、市況が高過ぎるため買い控えているのか、鉄鋼需要が本当に減退しているのか分からない。相場の先行きが見えず、田んぼの泥の中のように、いつ・どこが底だかわからない状態」と述べている。

 鉄スクラップ商社大手の三井物産メタルズ(東京都中央区)によると、ギリシャ問題に端を発したユーロ安で、欧州向け製鉄拠点のトルコでスクラップ市況が下落。世界最大のスクラップ輸出国である米国が、トルコ向け輸出を韓国向けに振り替えたため、結果として欧州発の市況下落が、韓国に波及したのが直接的な相場下落要因と市場ではみられている。ただ、三井物産メタルズ幹部は「韓国も鉄鋼製品の主要輸出先は中国。中国の輸出先は米ドル圏よりもユーロ圏が多く、欧州問題が中国の輸出産業の波及しつつある可能性がある」と、ソブリン問題で揺れている欧州の経済動向が影響した可能性に言及した。

 <鉄鉱石や石炭価格も10月以降下落か>

 新日本製鉄など鉄鋼大手が製鉄の主原料とする鉄鉱石は、2010年7─9月の価格が4─6月よりも大幅に値上げされる見通し。この現象を見て、中国など新興国の需要増が鉄鋼原料など資源価格を押し上げていると解説されることが多い。しかし、四半期ベースの鉄鉱石価格は、鉄鉱石のスポット(当用買い)価格や、スクラップ価格を反映して、実際の鉄鋼需給に遅行するかたちで決まる公算が大きい。このため「10月以降は鉄鋼石価格が大幅に下落する」(三井物産メタルズ幹部)との見方も出てきた。

 鉄スクラップは、2008年の北京オリンピックの開催直前から中国の一部鉄鋼メーカーの減産が契機となり急落。7月に1トン当たり7万円程度だった価格が11月には1万円と7分の1まで下落した経緯がある。リーマンショックの1カ月半前に下落を始めたこともあり、景気の先行指標として注目されている。

 日銀が今月14─15日に開く金融政策決定会合では、景気の先行きについて、新興国や資源国がけん引役になり国内景気が持ち直しを続ける、との従来の見方を大きく変える可能性は少ないとみられる。しかし、一部の日銀幹部からは「欧州問題が日本の実体経済にも影響を与えるというリスクシナリオの方が、メーンシナリオではないか、との議論が出る可能性はある」と慎重な声が浮上する可能性に触れている。

 4月30日に公表した展望レポートでは、実質GDPが2010年度はプラス1.8%、11年度はプラス2.0%と、景気の回復ペースが今後、徐々に高まるとの見通しを示している。だが、エコノミストの間では「アジアなど新興国の経済ペースがスローになりつつあり、大型の景気対策や為替の固定化で支えられてきた中国の先行きなどについても、懸念が高まる可能性がある」(クレディ・アグリコル証券の加藤進チーフエコノミスト)と、より慎重な予想も広がりだしている。

 (ロイターニュース 竹本能文記者;編集 田巻 一彦)

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