外為市場でドル/円が一時81円を割り込むなど、史上最安値79.75円に接近するなかで日本株が下げ渋っており、これまでみられた円高/株安の流れがいったん小休止している。日本の金融当局による為替介入への期待感に加え、ドルも最安値(円の最高値)に接近していることで、底入れが近いとの見方も出ている。11月の米公開市場委員会(FOMC)が焦点となるなか、米追加緩和を織り込んで期待インフレ率が高まっていることから、長期的に流動性相場が終えんに向かうとの見方も一部に出てきた。
前日の海外市場では、住宅の差し押さえをめぐる問題をきっかけに5週間にわたる米株の上昇相場に打ち止め懸念が台頭したほか、ドルが80.88円に下落、史上最安値まで1円弱に迫ったが、いずれもきょうの日本株への影響は限定的だった。14日も円高局面が続いていたにもかかわらず、日経平均は一時200円程度上昇した。大手証券のストラテジストは「世界的にリスクマネーが動きやすい状況のなか、出遅れ感の強い日本株が意識された」とみている。
大手証券の株式トレーダーは15日の日本株について「当局による介入期待から下げ渋った」との見方を示す。邦銀系の株式トレーダーによると、ドル/円が下げる局面では米系年金が日本株を買い、81.20円を割り込むと国内勢の株売りが加速するといった動きがみられるという。ドル最安値更新の局面では9000円付近に下げるとの可能性をはらみながらも、市場では、FOMCまで日経平均はおおむね9250―9750円のレンジとみられている。
11月2―3日に開かれるFOMCでの追加緩和の方向はすでに市場に織り込まれており、実際に長期国債の追加買い入れが焦点となっている。12日に発表されたFOMC議事録(9月21日開催分)によると、議論の中心は長期国債の追加買い入れのほか、インフレ期待を押し上げる措置だった。この議事録の発表はドル売りを後押ししたが、米国債利回りは下げ渋った。
これに関連し、大和総研チーフ為替ストラテジストの亀岡裕次氏は「米金融緩和のなかで下げてきた期待インフレ率は8月末にボトムアウトし、前週末には1.47%付近(足元では1.48%付近)まで上昇してきた。金融緩和の規模が拡大するとともに、将来のインフレ期待が醸成されたためだ」と局面転換の可能性を指摘する。
また「期待インフレ率の上昇が、債券相場の上昇(債券利回りの低下)にブレーキをかけつつある。米国の金融緩和の結果、米国金利は下がりにくくなりそうだ」と亀岡氏は予想する。最低水準で推移する米長期金利に関してはまだ低下余地も見込まれているが、「足元の金利上昇などから、一方向にドル売りが進むことは考えにくい」(別の株式トレーダー)との声も一部で出始めている。
(東京 15日 ロイター)
(ロイター日本語ニュース 吉池 威記者:編集 石田仁志)