◎スペインの国債入札、利回りは1997年以来の高水準に
◎フランスの国債入札でも利回りが上昇
◎メルケル独首相、ECBによる介入強化に反対の姿勢崩さず
◎モンティ伊首相、財政改革進める方針を表明
[マドリード/パリ 17日 ロイター] ユーロ圏の債務危機に歯止めがかからない中、政権が倒れたギリシャやイタリアでは新政権が財政改革を断行する姿勢を示しているが、緊縮策に対する国民の抗議行動も広がりを見せている。
ギリシャの首都アテネでは17日、3万人以上のデモ隊が街頭を埋めつくした。赤い旗を振りかざしながら「欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)は出ていけ」と叫ぶ多くの若者に対し、警察は催涙ガスを発射。
国家を破綻から救うため財政再建を託されたパパデモス政権が誕生して以来、初めての本格的なデモとなった。
イタリアでは、モンティ新首相が信任投票を前にした議会演説で、「イタリアは緊急事態に直面している」として、抜本的な改革を遂行する方針を表明。年金や労働市場の改革、脱税防止策の構築、税制改革などを訴えた。
上院での信任投票は圧倒的多数で可決された。
世論調査では、イタリア国民の75%がモンティ首相への支持を表明しているが、ミラノやトリノではデモ隊による衝突が起きた。
一方、この日行われたスペイン国債の入札では、10年債の平均利回りが6.975%と、1997年以来の高水準に達した。これは前回実施された入札に比べても1.5ポイント高い水準で、スペイン政府にとって資金調達コストが危機的水準に上昇した。
フランスが実施した約70億ユーロに上る国債入札はスペインほど悪くなかったが、やはり利回りが前回に比べ大幅に上昇した。
ドイツに次ぐユーロ圏の主要国であるフランスが危機に巻き込まれるとの懸念が広がっていることは、危機が新たな段階に入ったことを意味する。
すでに救済を受けて財政再建を進めているアイルランドも、さらなる対応を迫られている。ロイターが入手した文書によると、売上税の上限税率を2%引き上げる方針であることが明らかになった。
<ECBの関与めぐる対立>
だが、市場の攻撃にさらされている各国がどれだけ努力しても、「劇的な」措置が講じられない限り、危機は収束しないとの見方が広がっている。その措置には、おそらく欧州中央銀行(ECB)が関与せざるを得なくなりそうだ。
多くのアナリストは、危機を食い止める方法は、ECBによる大規模な国債買い入れ以外にないとみている。それは実質的に、米連邦準備理事会(FRB)や英イングランド銀行が実施している一種の「量的緩和」と同じになる。
しかし、ECBによる債券買い入れ拡大をめぐっては、ドイツとフランスが激しいつばぜり合いを演じている。
フランスは「AAA」の格付けを失うことを恐れ、ECBに対してさらなる行動を求めているのに対し、ドイツはそのような行動は禁じられているとして、強く反対する姿勢を崩していない。
メルケル独首相は「ECBが危機を解決できると政治家が考えているとすれば、それは大きな誤りだ。たとえECBが『最後の貸し手』としての役割を引き受けたとしても、危機解決にはつながらない」と述べた。
投資家や一部のユーロ圏当局者は、ドイツも混乱に巻き込まれ始めているとメルケル首相が感じれば、「考えられなかったこと」が急速に現実味を帯びてくるとみている。
ユーロ圏のある中央銀行当局者は、ロイターに対し「ドイツは過去2―3カ月で立場を著しく変化させた。それは評価する必要があり、時間がかかっただけだ。彼らは砂の上に明確な線を引いているわけではない」と述べ、ドイツが姿勢を和らげる可能性があるとの考えを示した。