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〔焦点〕欧州包括戦略合意は時間稼ぎ、根本的解決には至らず

 [ロンドン 27日 ロイター] ユーロ圏首脳は債務問題解決に向けた包括戦略で合意にこぎつけたものの、最終的な解決にはほど遠いと言わざるを得ない。

 今回の合意は、ユーロ圏が何とか苦境を乗り越えたとされる一方、楽観主義者の期待を満たすほどの規模ではなかった。

 UBSのチーフ欧州エコノミスト、ステファン・デオ氏は「正しい方向への一歩だが、問題の解決には不十分。時間稼ぎにはなるが、ソブリン債務問題の根本的解決とはならない」と指摘した。

 合意を受け、欧州株式市場とユーロは上昇。銀行はギリシャ国債の50%の減免に原則合意し、欧州金融安定ファシリティー(EFSF)の実質規模は1兆ユーロ(1.4兆ドル)に拡大された。

 ただギリシャ国債の35%近くは欧州中央銀行(ECB)など公的機関が保有しており、減免の対象とはならない。この結果、ギリシャ債務の国内総生産(GDP)比は、2020年時点でも120%と2009年後半と同レベルとなる。

 しかもこれは、経済成長と大規模な国家資産民営化など大胆な構造改革を前提にしている。

 デオ氏は「マクロ経済的には、もしこれが償還延長やクーポン引き下げなどのない純粋な額面の50%減免なら、ギリシャ債務の持続性を疑問視せざるを得ない」と述べた。

 <懐疑的見方の背景>

 ただギリシャはすでに余興の様な存在となっており、投資家は流動性がないだけでなく破産状態にあるとみなしている。より深刻なのは、イタリアのようにより規模が大きくシステム上重要ながら景気が低迷している国への波及阻止に対し、ユーロ圏に何ができるかという問題だ。

 EFSFの拡充は、中国などの関与はあるのか、今後発行される参加国の国債の信用をいかに高めるのか、詳細の決定にはまだ時間がかかる。

 一部のアナリストは懐疑的だ。ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)では、ギリシャ債務減免に関連して、市場はユーロ参加国の国債の再評価に乗り出すとみている。

 「純正味価値」からすると、銀行側が負担する損失は、自発的に申し出ていた40%をはるかに上回る70%近くに達する可能性があるという。

 またEFSFは、将来的に支援を必要とする国を支えるには規模が小さ過ぎる。政府が銀行の資金調達で長期債市場へのアクセスを支援すると約束していることも、不測の負担増の可能性を示唆している。

 <ECBの役割>

 さらに疑問となるのがECBの関与だ。エコノミストの間では、11月に総裁に就任するドラギ・イタリア中銀総裁の26日の発言を受け、ECBは今後も必要があれば流通市場でスペインとイタリアの国債を購入するとの見方が広がっている。

 ただ、より確かな証拠を求める投資家の声はかつてなく強い。

 HSBCのカレン・ワード氏は、ECBが国債買い入れの役割をEFSFに移行させる場合、規模が不十分なことが懸念要因になると指摘。

 顧客向けリサーチノートで「最終的には、防火壁を設けるには2つの選択肢しかない。ECBのバランスシートかドイツのバランスシートのどちらかだ。ECBが対象外となった場合、防火壁の規模が十分だとは考えにくい」との見方を示した。

 <関心はイタリアに>

 危機波及のリスクが最も高い国はイタリアだ。景気は低迷しベルルスコーニ首相の信頼は後退、公的債務のGDP比は120%近くに達している。

 高まる他国からの圧力を受け、首相はユーロ圏首脳会議で年金支給年齢の65歳から67歳への引き上げを含む追加の財政再建策を提出した。

 RBSは、この種の政策シフトが経済的効果をもたらすには数年かかることに加え、内容が政治的に論争を呼びそうなものであることを指摘。年金支給年齢の引き上げは連立与党の北部同盟が強く反対しているため、連立崩壊の危機があるとしている。

 また、ギリシャと同様に、ユーロ圏はイタリアの改革実施を監視する欧州委員会の役割強化を提案している。

 これらの動きは、ドイツを中心とするユーロ圏北部の債権国が、支援と引き換えに理不尽ともみえる条件を突きつけ、南部諸国の主権を脅かしているとみられるリスクをはらんでいる。

 予算削減が経済成長を脅かし、さらなる緊縮策が余儀なくされるという悪循環を断ち切る戦略がなければ、すでに顕在化している政治的緊張は悪化するばかりだ。

 香港の調査会社ゲイブカルは、今回の欧州の合意を退屈であいまいと表現。ユーロ圏は少なくともあと1年は明確な財政的・政治的解決策を打ち出すことはできないとの見方を示した。

 同社のリサーチノートは「将来ある時点では、経済統合と改革による繁栄か、民主主義の否定による政治的混乱のいずれかが現実となるだろう」と指摘している。

 (Alan Wheatley記者;翻訳 中田千代子 ;編集 田中志保)

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