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〔焦点〕今月末に米国で特許切れ迎えるリピトール、超える新薬は現れるか

 ◎リピトール並みの売上高達成、今後5年もしくはそれ以上見込み薄

 ◎「ヒュミラ」が現在の販売ペース保てばリピトールの記録塗り替える可能性

 ◎アルツハイマー・糖尿病治療薬、HDLコレステロール増加薬が将来の売り上げ首位か

 [ニューヨーク 6日 ロイター] 製薬業界の歴史に新しい1章を付け加えた米ファイザーPFE.Nの高脂血症治療薬「リピトール」がこれまでに売り上げた1300億ドルを稼ぎ出すためには、アルツハイマー病に対する画期的な治療薬の登場が必要かもしれない。

 リピトールの米国での特許は11月30日に失効、安価なジェネリック医薬品(後発医薬品)が一斉に販売解禁となり、1997年に始まった同薬の伝説的な独占販売が終わりを迎える。処方箋薬の売り上げを調査しているIMSインスティテュートのリサーチディレクター、マイケル・クラインロック氏は「リピトールがあり、それ以外があるという位置付けだった。われわれの業界の歴史で真の巨人であり、しばらくは同種の薬は現れないだろう」と予測した。

 現在、上市されている薬では、米アボット・ラボラトリーズABT.Nの関節リウマチ治療薬「ヒュミラ」の年商が約80億ドルと、頑張りを見せており、アボットは近い将来に年10億ドルずつ売り上げが増加すると見込んでいる。しかし複数の競合相手が存在する処方箋薬領域でリピトールのピーク時の年商130億ドルを実現することは過大な期待だ。

 トムソン・ロイター・フォーキャストによると、2016年までに全世界の医薬品売上高上位3位は関節リウマチ治療薬が占め、ファイザーの「エンブレル」と米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)JNJ.Nの「レミケード」がヒュミラを追う展開となる見通しだ。

 米ブリストル・マイヤーズ・スクイブBMY.Nと仏サノフィ・アベンティスSASY.PAの抗血小板薬「プラビックス」の売上高も90億ドルを超え、リピトールの対抗馬となったが、リピトールと同様、プラビックスの全盛期ももうすぐ終了する。

 近年、創薬研究の多くはループスやメラノーマといった、貧弱あるいは効果の薄い治療方の選択肢しかない、比較的患者数の少ない疾患に対象が絞られてきた。新薬の多くは、ほとんどあるいはまったく競争にさらされず、従来の創薬過程よりもコストのかかるバイオロジカルな開発過程を利用するため、価格も高くなる。そのため、リピトールのような大量市場薬から焦点が移行しつつある。

 業界専門家は、先進国、発展途上国を問わずにまん延している糖尿病の治療で大きな進展があれば、リピトール級の販売をたたき出す新薬が登場する可能性があると指摘する。また、これまで失敗が続いていた肥満に対する治療法で脂肪を溶かす安全な薬が出てくれば、同じことが当てはまるという。

 そして、有効な治療薬が見当たらず、ベビーブーマーの老齢化に伴い、社会的に大きな問題となると予想されるアルツハイマー病が存在する。ウォルターズ・クルワー・インソウトのリサーチディレクター、ベン・ワイントラウブ氏は「アルツハイマー病の予防維持薬(DMD)が出てくれば、誰もが必要とする巨大な大量市場薬が誕生するだろう。満たされていないニーズは巨大だ」と指摘した。

 <リ・ピ・トー・ル>

 ファイザーは2000年に1140億ドルでのワーナー・ランバート買収を通じてリピトールの完全所有権を取得した。ファイザーはリピトールをワーナーと共同開発していた。ファイザーのウィリアム・スティア元最高経営責任者(CEO)は当時の記者会見でワーナーに敵対的買収を仕掛けた理由について質問された際、満面の笑みを浮かべて「リ・ピ・トー・ル」と答えた。

 リピトールは「悪玉」LDLコレステロールの数値を引き下げ、何回にもわたる試験で心臓発作と脳卒中のリスクが軽減されることが証明されている。アメリカン・センチュリー・バリュー・ファンドの上級ポートフォリオマネジャー、マイケル・リス氏は「リピトールは他の選択肢との比較で、非常に良い薬だった。一次医療の医師が実際に出会う症状にぴったりの薬だった」と述べた。

 業界最大級かつ最も積極的な販売部隊の創設も、リピトールの成功を後押しする要因だった。クリーブランド・クリニックの心臓病科責任者、スティーブン・ニッセン博士は「他の薬も頂点を極める可能性はあるが、状況は様変わりしている。以前に比べ、ジェネリック医薬品を使う頻度が増している。(リピトール級の)売り上げ水準に達するためには、かなり大きな患者人口の恩恵となる独自の効能が必要だ」と話した。

 <医薬品の景気の波>

 他のベストセラー薬ももちろん、市場への参入、退出を繰り返し、あっという間に新たに上市された薬の陰に隠れるようになる。そうした薬の1つに、1976年に英スミス・クライン(当時、現グラクソ・スミスクラインGSK.L)とフランスの製薬会社が発売した潰瘍薬「タガメット」がある。1980年代半ばまでに同薬は年商が10億ドルに育って世界初の「ブロックバスター」薬となった。同薬は現在、安価な製品として店頭販売されている。

 リピトールはその15年後に別の潰瘍薬である英アストラゼネカAZN.Lの「プリロセック」を追い抜いて売り上げ世界1位の座に就いた。IMSによると、プリロセックの販売のピークは2000年で年商は62億ドルだった。

 クリーブランド・クリニックのニッセン博士は、CETP阻害薬と呼ばれる新しいクラスの心臓病薬について、慎重ながらも楽観的な見方をしている。同薬の臨床試験では「善玉」HDLコレストロールの水準が劇的に上がっている。ファイザーは2006年に、臨床試験での死亡率が高かったことを理由に「torcetrapib」の開発を断念した。同社はtorcetrapibで100億ドルを超える年商を期待していた。

 米メルクMRK.NはCETP阻害薬「anacetrapib」の後期臨床試験を実施しており、スイスのロシュ・ホールディングROG.VXと日本たばこ産業2914.Tは「dalcetrapib」の開発の後期段階にある。米イーライ・リリーLLY.Nは独自のHDL増加薬について、初期段階の開発を行っている。

 ニッセン博士は「それらの薬に成果があれば、大ヒット製品になり得る」と述べ、リピトールのような成功を実現するには、スタチン療法に加え、心臓発作の発生率や死亡率の引き下げが伴う必要があるとの見方を示した。

 オークブルック・インベストメンツの共同最高投資責任者(CIO)、ピーター・ジャンコフスキーズ氏は、製薬会社にとって糖尿病とがんの2つの病気が引き続き「達成が容易な目標」であり、極めて有効な治療法が欠如していることから、ブロックバスター薬が誕生する可能性があるとし、「開発されるのであれば、糖尿病かがんの分野になるのでないかと思う」と話した。同氏は、糖尿病の進行を妨げ、患者が透析治療を受けなくとも済むような画期的な治療薬が誕生すれば、リピトールをもしのぐ年商を稼ぎ出す薬になるのではないかとみている。

 ウォルターズ・クルワーのワイントラウブ氏は次のブロックバスター薬について、リピトールほどの評価を得ることはできないものの、患者層がより小さく、専門医による処方が必要で価格の高い、バイオテクノロジー薬になる可能性が高いとみている。同氏は「大規模市場向けのスタチンや糖尿病薬のような、重要だが優位性が徐々に高まっていく薬ではなく、標準治療を変えるような高価な薬となるだろう」と語った。

 例外はアルツハイマー型認知症治療薬だが、ゴールは視野にさえ入ってきていない。現在の治療薬は症状をほんの少し緩和するにとどまり、症状の進行を遅くすることはできない。イーライ・リリーは昨年、開発中の薬を断念した後、注目の治療薬「solanezumab」を開発中だ。ファイザーとJ&Jは同「bapineuzumab」の臨床試験の最終段階にあるが、試験で一部患者に脳腫脹が確認されている。

 ロシュの神経科学部門責任者、ルカ・サンタレッリ氏を含む一部の研究者はアルツハイマー病について、初期治療が必要不可欠とみており、そうした手法を追求している。

 ワイントラウブ氏は「最終的には(年商)130億ドル規模のアルツハイマー薬が出てくるだろう」と予想した上で、「われわれが記憶を失う前の登場を期待したい」と述べた。

 *ベストセラー薬の販売予想に関するグラフは下記をクリックしてご覧下さい。

  link.reuters.com/jeg84s

 *全世界の累計売上高上位5位の医薬品に関するグラフは下記をクリックしてご覧下さい。

  link.reuters.com/meg84s

 (Ransdell Pierson、Bill Berkrot記者;翻訳 関佐喜子 ;編集 宮崎亜巳)

※(sakiko.seki@thomsonreuters.com; 03-6441-1863;sakiko.seki.reuters.com@thomsonreuters.net)

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