[シンガポール 4日 ロイター] アジア通貨市場では、タイバーツが1%以上上昇した。3日の総選挙の結果を受け、政治的不透明感をめぐる懸念が後退した。韓国ウォンも株式市場への資金流入が続き、2年10カ月ぶり高値を更新した。
マレーシアリンギとフィリピンペソも投機筋の買いがみられたほか、他のアジア新興国通貨も軒並み上昇した。ただ、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が、ギリシャ債務のロールオーバー案について選択的デフォルトとみなす可能性を示唆したことで、午後に入り伸び悩んだ。
アナリストやディーラーは、ユーロ圏債務問題に関する悪材料で不安定になる可能性があるものの、アジア新興国通貨への資金流入は今後も続くとみている。
アジア通貨は大半が堅調な第3・四半期のスタートを切った。第2・四半期も上昇したが、ユーロ圏債務問題や世界経済の成長鈍化への懸念で上昇率は第1・四半期を下回った。
シンガポールのメイバンクの通貨リサーチ部門の責任者、Saktiandi Supaat氏は、今後のアジア通貨動向について、格付け会社がユーロ圏債務問題でデフォルトを想定するなら、今後数週間は圧迫されるとの見方を支援した。
タイバーツTHB=THB=THは、総選挙結果を受けて海外勢が国内市場に戻ってくるとの期待感から、インターバンクの投機筋の間で新たにロングポジションを建てる動きが強まった。5月に選挙戦が本格化して以来、タイからは14億ドルの資金が流出していた。
タイでは4日、タクシン元首相の妹インラック氏が率いる野党・タイ貢献党の圧勝に終わった選挙結果を軍部が受け入れたことを受け、同元首相の国外追放以来、不安定になっていた政情が落ち着きを取り戻すとの期待感が高まった。
クレディ・アグリコル・コーポレート・アンド・インベストメント・バンク(シンガポール)の新興国市場為替取引責任者、ケネス・カン氏は「リスク環境の好転を背景にドル/バーツが一段と下落すると予想する。(タイ貢献党は)過半数を獲得した。政治リスクの点から言うと最善の結果だった」と指摘した。
バーツは上昇し、一時フィボナッチ・リトレースメントで4月下旬から6月の下落局面の50%戻しの水準である30.36バーツを突破した。
バーツは30.10─30.30バーツのレンジに向かうとみられている。
韓国ウォンKRW=KRW=KFTCは、対ドルで一時2年10カ月ぶりの高値水準にまで上昇。その後外為当局のドル買い介入を警戒した輸入業者がドル買いを行い、上昇幅をやや縮小した。
結局取引時間中に当局の介入は確認されなかったが、利益確定売りに動いた投資家もいた。
ソウルのある外銀ディーラーは「新たにドル/ウォンのショートポジションを建てる理由はほとんどないため、介入がなかったとしても利益確定の潮時だった」と述べた。
ディーラーらによると、1日には当局がドル買い介入を実施したもよう。
介入がないとすれば、ドル/ウォンは1ドル=1057ウォンへ向け、もう一段の下落余地がある。同水準には強固な支持線があるとみられる。
ソウル株式市場では、4営業日連続で海外勢が買い越した。
マレーシアリンギMYR=MYR=MYは、インターバンクの投機筋がドルのロングポジション解消に動き、対ドルで一時先月6日以来の高値となる1ドル=2.9940リンギまで上昇した。
ドル/リンギは今月1日、55日移動平均の3.0152リンギを下回る水準で引けた。
クアラルンプールのあるディーラーは、米格付け会社のスタンダード&プアーズ(S&P)が4日、フランスが発表したギリシャ債務のロールオーバー(借り換え)に関する提案が選択的デフォルト(債務不履行)に相当するとの見解を示したことに触れ、「市場を混乱させたが、われわれはすべて解決するとの見方に基づいて取引を行った」と述べた。また、ドル/アジア通貨が反騰したタイミングで戻り売りする機会をうかがっていると加えた。
*0715GMT(日本時間午後4時15分)現在のアジア各国通貨の対米ドル相場は以下の通り。
シンガポールドル 1.2247
台湾ドル 28.671
韓国ウォン 1063.30
タイバーツ 30.44
フィリピンペソ 43.07
インドネシアルピア 8520.00
インドルピー 44.44
マレーシアリンギ 2.9980
人民元 6.4611