February 9, 2018 / 11:44 PM / 8 months ago

コラム:トランプ大統領、誤解だらけの「メキシコ観」

[8日 ロイター] - メキシコは長年、米国の良き隣人であり、近年は良き同盟国でもあった。それ故、メキシコとの関係についての誤った言説が、繰り返される米政府機関の一部閉鎖の一因となったのは、破天荒なことに見える。

 2月8日、メキシコは長年、米国の良き隣人であり、近年は良き同盟国でもあった。写真は2017年12月、ドリーマーの支援イベントで、国境の壁越しにメキシコの親類と話をする人たち。米ニューメキシコ州サンランドパークで撮影(2018年 ロイター/Jose Luis Gonzalez)

いま党派対立の瀬戸際戦術の中で未解決の2つの問題は、メキシコ情勢と国境にまつわる米国内の不安を反映している。すなわち幼少時に親と不法入国し、「DACA」制度で一時的に滞在・就労資格を得た「ドリーマー」と呼ばれる若い移民に救済措置を講じるかどうかと、メキシコ国境の壁建設への予算拠出を巡る対立だ。さらにいえば、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉も、そうした不安を反映したものだ。

トランプ米大統領は、首尾一貫した見解で知られる人ではない。だが悲しいことに、ことメキシコに関しては、約3200キロの国境について語るにせよ、国境の向こうに住む隣人について語るにせよ、非常に明確かつ一貫した発言を繰り返している。

それは不正確な内容だが、トランプ氏は2015年の夏に翌年の大統領選への立候補を表明して以降それに固執し、有権者の大きな層に対してそれを正当化した。

その内容は、絶望的に貧しい隣人がアメリカ人につけこんで雇用を奪い、米政府が何十年も取り締まってこなかった混乱状態の国境を越えて、数百万人が押し寄せてきた、というものだ。

政治指導者は一般的に、政治的な間違いやそれが原因で起きた問題は、最小化したり正当化したりするものだ。だがメキシコは、その正反対がまかり通る珍しいケースとなっている。米国とメキシコの関係の実態はおおむね良好で、また、ほぼ間違いなく米国の政策上の大勝利であるのに、大失敗であるとして不正確に語られている。

米国が最初にメキシコに自由貿易協定を結んで北米の一員になるよう促したのは、レーガン政権時代だ。

米国側の動機は常に、純粋に商業的なものではなかった。NAFTAにより、メキシコの法の支配が強化され、民主化が進み、米国は国境の南側により安定したパートナーを得ることになる。

NAFTAは、特にメキシコの民主化を進め、より安定した成長軌道に乗せる点で、期待を上回る成果を上げた。それも、米国経済を犠牲にしたものではなかった。

NAFTAが1994年に発効した後、米国とメキシコの貿易は6倍以上に増加、メキシコの中間所得者層は拡大して、米国製品の巨大市場となった。メキシコの消費者は、カナダ以外では米国の製品を最も多く購入している。メキシコは、中国と英国を合わせたよりも多く米国から輸入している。

メキシコはNAFTA発効後の20年で、ほぼ米政府が目指した方向に沿って劇的に変化した。保守派の国民行動党(PAN)と、かつては超国家主義だった制度的革命党(PRI)の双方の政権が、メキシコの伝統だった反米姿勢や言論を脱ぎ捨て、それまであった主権を巡る懸念において妥協して、安全保障からエネルギー政策まで幅広く米政府と協力するようになった。

国境がまさに緊張状態にある世界の他の場所を旅すると、地元の人から、米国が国境を接するカナダとメキシコの間で築いた平和な関係に嫉妬される。

メキシコ人やカナダ人には、強い反米的な考えはない。国境を越えて米国入りする時は、尊敬や、米経済や社会に貢献しつつ自ら前進したいという欲望からだ。

トランプ氏や彼の支持者が信じるところとは裏腹に、われわれの南の国境は、コントロール不能な米国の安全保障上の脅威には程遠い。この20年で、巨額の税金が注ぎ込まれてセキュリティーが強化された。許可のない越境や、不法移民の数は減っている。

近年では、差し引きメキシコに戻る人の方が多くなっているとの研究もある。メキシコの人口動向をみれば、長期的には米国経済の労働力不足がより心配される。さらにいえば、国境近くのエルパソやサンディエゴなどの町は、常に米国でも安全な街として評価を受けている。

米政府関係者の誰もが、どこかの時点でドリーマー救済の意図を表明しているようだ。だがそのために、どれほどの対価を払い、それに伴ってどれほどのセキュリティー対策を導入するかという問題が残っている。

そして悲しいことに、こうした検討は全て、メキシコや国境沿いで実際に起きていることの誤った印象に基づいて行われている。

当然、メキシコ人は米国側が正しく評価をしてくれないことを不満に思っている。

歴史的な怒りや、外の世界や米国からの投資に経済を開放することの不安を乗り越えて、米政府と緊密なパートナー関係を築こうとしたメキシコの長年の努力に報いたのは、屈辱的なステレオタイプや、裏切りのぬれぎぬ、さらに、メキシコ人を締め出すための壁建設資金の要求だった。

結果として、メキシコで減少し続けていた反米感情が急激に反転増加しつつある。米シンクタンクのシカゴ・グローバル評議会と世論調査会社ブエンディア&ラレドが行った調査によると、今やメキシコ人の3分の2が、米国について好ましくないという見方をしている。

この世論の変化の恩恵を直ちに受けるのは、左派のメキシコ大統領選候補者のロペスオブラドール元メキシコ市長だ。7月の選挙を前に、ロペスオブラドール氏は現在世論調査でリードしている。今回3度目となる同氏の選挙戦は、「言った通りでしょう」という勝ち誇ったトーンとなっている。米国人と友人になり、「ワシントンの合意」にへつらえばメキシコがどうなるか、「言った通りになったでしょう」ということだ。

選挙戦はまだ序盤で、メディアではAMLOと呼ばれているロペスオブラドール氏は、過去の過激な発言は控えて、自分はチャベス(ベネズエラ前大統領)とは違い、また、ロシアの手下ではないと、中間所得者層の有権者を安心させようとしている。当選した場合、AMLOがどれほど大統領として過激になるかは分からない。この話題は、最近ではメキシコのカフェや企業の会議室で格好の暇つぶしとなっている。

だが彼が当選すれば、米国とのより緊密な関係が望ましいという、メキシコ政界で25年ほど続いたコンセンサスの、劇的な転換となることは疑いない。

両国関係についての米政府の誤った言説が、双方の政治に毒を注いでいるのがその一因なら、それは残念なことだ。

*筆者はアリゾナ州立大ウォルター・クロンカイト・スクール実務教授。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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