[東京 24日 ロイター] - 後発医薬品(ジェネリック)国内トップ、日医工4541.Tの田村友一社長はロイターのインタビューで、東南アジアの富裕層向けに高品質のジェネリック医薬品の販売を拡大するとともに、米国市場に付加価値の高いジェネリックやバイオシミラー(バイオ後続薬)で参入し、世界でトップ10入りを目指すと述べた。
主なやりとりは以下の通り。
──ジェネリックで世界トップ10入りを目標に掲げているが、その背景は。
「日本のジェネリックは、政府の後押しもあって伸長してきているが、一方、世界のジェネリックメーカーが日本に相次いで参入してきた。日本で世界のジェネリックと戦うためには、自らも世界に挑戦しなければ勝てないという思いから、世界に挑戦というテーマを掲げた」
「世界のジェネリックのビジネスモデルは、インドや中国など安いところで大量に作って、全世界に流通させるというもの。コストを抑えて、北米中心に伸びてきている。日本への参入は、日本企業の買収という形で進められている。彼らは世界のビジネスモデルを日本でも展開しようとしているが、なかなか日本では通用しないというのが現状」
──それはなぜか。
「日本は1つ1つの薬価が厚労省によって決められるため、患者にとっては、より安いジェネリックのメリットがない。医療機関が100円で仕入れるジェネリックでも50円でも、患者が支払う価格は同じなので、コスト意識が生まれにくい。同じ価格なら、これまで服用していたジェネリックと同じものを継続したいと患者は考えるだろう」
──日本のジェネリックは生産コスト高など、海外に出るには障害が多いのでは。
「日本のジェネリックが世界に出る場合、品質は問題ないが、日本の基準が厳しいので生産コストの面で合わない。当社は東南アジアの市場を調査した結果、質の高い治療を受けたいという富裕層をターゲットにしようと考えた」
「まず選んだのがタイ。世界中の医療ツーリストが集まって治療を受けており、メイドインジャパンに信頼感を持っている。日本国内で流通している商品と同じものを販売している。ベトナム、マレーシアでも同様に展開中。『日医工ブランド』を広げたい」
「次に、今はバイオシミラーを日本国内で開発しているので、そのデータを持って、東南アジア、米国での展開を進めようとしている。米国は、バイオ薬品の先進国であるにもかかわらず、まだバイオシミラーの浸透が低い。また市場として大きい米国は、FDA(米国食品医薬品局)の承認1本で全米全土に流通できるという利点がある」
──日本のジェネリックメーカーが、海外でトップクラスに入るための戦略は。
「ジェネリックの最大のマーケットは米国なので、米国の市場を獲得すること。ただ、それは容易ではない。インド製の安いものと、日本の高いもの、飲んでしまえば効能は同じなんでしょ、という人達が日本の高いものを選ぶことはないと思う」
「米国で成功するためには、付加価値のあるものが必要になってくる。バイオシミラーや、既存のものでも新しい適応症を追加したものなど、付加価値を付けたものが米国で初めて受け入れられる。それが日本のジェネリックの強みであり、当社が米国で展開しようと思っているビジネスだ」
──政府は社会保障費削減策として、ジェネリックの普及率を80%まで引き上げるとしている。これは追い風なのか。
「今、課題となっているのは、80%となると1000億錠(年間)が必要となり、現在の650億錠から上積み分を国内ジェネリックメーカーで供給できるのか、ということ。これには、新たな設備投資で工場を新設するのではなく、新薬メーカーあるいは受託メーカーに生産委託するという形で対応していく」
「当社は一定の生産能力を持っているので、委託を通じて、拡大する市場の中で今まで以上の存在感が持てるだろう。当社のシェアは、国内ジェネリック市場の10─12%くらい、それを2020年までには15─16%まで引き上げることはできる」
──環太平洋連携協定(TPP)交渉が大詰めを迎え、知的財産権の分野で新薬の開発データ保護期間が焦点の1つになっている。日本の医薬品業界にとってはどうか。
「TPPは、日本国内の薬品メーカーにとってあまり影響はない。データ保護期間がそんなに大きく延びることはないからだと思う。これは主に新興国の問題。国内業界として政治に働きかけるような動きもない。当社の海外戦略にも影響はない」
*このインタビューは、23日に行いました。
宮崎亜巳
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