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焦点:アートも土地もデジタル化、仮想空間で暗号資産が増殖

[ロンドン 19日 ロイター] - 6900万ドル(約75億円)の実在しないアート作品を手に入れたらどうするか。この問いに実際に直面したのが、シンガポールの投資家「メタコバン」氏だ。

 4月19日、6900万ドル(約75億円)の実在しないアート作品を手に入れたらどうするか。写真は、「メタパース・ファンド」を共同運営するアナンド・ベンカテスワラン氏のアバター。同ファンド提供(2021年 ロイター)

メタコバン氏(本名:ビニェシュ・サンダレサン氏)は先月、米国のデジタルアート作家「ビープル」ことマイク・ウィンケルマン氏の作品「エブリデーズ 最初の5千日」をクリスティーズで落札した。

この作品は「非代替性トークン(NFT)」と呼ばれる新たなデジタル資産で、暗号通貨(仮想通貨)の基本技術であるブロックチェーン(分散型台帳)によって所有権と真正性が保証されている。NFTは今年に入って人気が急激に高まり、価格が高騰している。

メタコバン氏は作品を4つの仮想世界で展示する計画で、専門家と協力し、人々がウェブブラウザーか仮想現実(VR)技術を通じて入場できる複合展示施設を設計している。

しかしアート作品は、ブロックチェーンに基づく仮想世界(メタバース)という新しい経済の一角に過ぎない。そこでは土地や建物、アバター(分身)、さらには名前までもがNFTとして売買可能で、数十万ドルの値が付くこともしばしばだ。人々はこの世界を友人と散策し、バーチャルな建物を訪れ、バーチャルなイベントに参加することができる。

メタコバン氏は世界最大のNFT投資家を自任する。NFTの取引データを収集しているノンファンジブル・ドット・コムによると、彼の「メタパース・ファンド」は総額1億8900万ドル相当の暗号資産を抱えている。

同ファンドを共同運営するアナンド・ベンカテスワラン氏は、NFTの拡大ぶりを生物の進化が急激に進んだ「カンブリア爆発」になぞらえ、「人々は目いっぱいNFTをむさぼっている」と言う。

「だがこれも氷山の一角に過ぎない。本物の爆発が起こるのは、人々が思い通りにNFTを体験できるようになった時だ。つまり仮想の土地区画を歩き回り、その空間に没入する体験だ」

仮想世界には大手企業も参入している。米ゲーム大手アタリはロイターに、ブロックチェーン技術を使った独自の仮想世界の立ち上げを計画しており、近く詳細を発表すると明らかにした。

アタリのブロックチェーン部門を率いるフレデリック・チェスナイス氏は、暗号資産ビットコイン価格の乱高下と関係なく、オンライン環境は「非常に大きくなるだろう」と予想。NFTの不動産に数百万ドルの値が付く日が訪れるとの見方を示した。

しかし投資家は、NFTに巨額の資金が流れ込んでバブルが発生し、熱狂が過ぎ去って大きな損失が出るリスクを警戒している。この市場では多くの参加者が偽名で活動しているため、ペテン師にとって絶好のチャンスにもなりかねない。

<50万ドル超の仮想土地>

NFT市場の過熱で、ブロックチェーン技術に基づく仮想空間プラットフォームへの関心が高まっている。最も知名度が高いのはディセントラランド、クリプトボクセルズ、ソムニウム・スペース、ザ・サンドボックスなどで、これらのプラットフォームでは仮想不動産の価格が過去最高値を更新している。

ディセントラランドは土地、アバター、ユーザーネーム、ウエアラブル機器などの売上高の総額が5000万ドルを超えている。11日には4万1216仮想平方メートルの土地区画が57万2000ドルで売却され、同プラットフォームの最高値を更新した。

ノンファンジブル・ドット・コムによると、ディセントラランドは3月21日に別の仮想土地区画を28万3567ドルで売却しており、ソムニウム・スペースは3月16日に仮想空間の土地が50万ドル以上で売れたと発表した。

メタバースの愛好家は、仮想不動産の購入ラッシュをインターネット黎明期に起きたドメイン名の争奪戦に重ね合わせる。こうした環境に集まる人が増えると、多くの人々が行き交う中央の土地は引っ張りだこになる、という理屈だ。

これまでのところ、仮想世界で土地の価格をつり上げているのは比較的少数の人々だ。ノンファンジブルによると、ディセントラランドは3月の購入者が334人で、月間の土地売買高は400万ドル超。2月は184人で76万7400ドル、1月は111人で24万6134ドルだった。

独自の仮想通貨を持つ仮想世界もあり、コインベースによるとディセントラランドの仮想通貨MANAはこの1年間で3500%余りも値上がりした。

<仮想フェスティバルも>

ディセントラランド・ファウンデーションでコミュニティーやイベントの運営を率いるサミュエル・ハミルトン氏によると、早い時期に仮想土地を購入した投資家の中には物件を企業に売却している人もいる。

アタリは独自の仮想空間を開くのに先立ち、ディセントラランド内のレトロなアーケードでカジノをオープンする予定。また、「クリプトバレー」と呼ばれるエリアにはさまざまな暗号資産企業が集まる。

ディセントラランドはスポーツ用品大手アディダスと組み、仮想ファッション展示会を開催、作品がNFTとして入札に掛けられた。仮想世界では演奏や、NFTの形でのチケット、グッズ販売なども可能なため、ミュージシャンからも関心を集めている。

ラッパーのトラビス・スコットさんは、エピック・ゲームズのオンラインゲーム「フォートナイト」でコンサートを5回開き、2770万人の視聴者が訪れた。

<冬の時代到来か>

ザ・サンドボックスの共同創業者、セバスチャン・ボルジェ氏は、NFTの経済規模が10年以内に現実世界の経済を上回ると予想している。

しかし、投資家に警戒を呼びかける声も多い。クリプトボクセルズの創業者ベン・ノラン氏は「今後数カ月以内に暗号資産の世界は冬が到来し、NFTブームはすべて破裂して価値が完全に崩れ去る」と予測。「NFTを投資や金儲けの手段にするのは軽率だ」と述べた。

(Elizabeth Howcroft記者)

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