January 27, 2018 / 12:10 AM / 9 months ago

焦点:メキシコ大統領選、「反トランプ」でナショナリズム覚醒

[メキシコシティ 22日 ロイター] - 大統領選挙を7月に控えたメキシコでは、トランプ米大統領の度重なる罵倒を受けて、ナショナリズム感情が煽り立てられている。各候補者がこぞってトランプ批判を強めるなか、リードを広げているのは反主流派層に狙いを定めた左派のロペスオブラドール元メキシコ市長だ。

 1月22日、大統領選を7月に控えたメキシコでは、トランプ米大統領の度重なる罵倒を受けて、ナショナリズム感情が煽り立てられている。写真は20日、メキシコ市にある米国大使館前で、就任から1周年を迎えた同大統領に似た人形を掲げて抗議する人々(2018年 ロイター/Carlos Jasso)

ここ1週間のうちに、大統領の座を目指す3人の主力候補が、国境沿いに構築したいとトランプ大統領が強く望む「壁」の費用を、メキシコが負担することはない、と表明した。

特に強い調子だったのが、世論調査で優位に立つ左派のベテランで新興政党「国家再生運動(Morena)」を率いるロペスオブラドール氏だ。

2006年と2012年の大統領選では次点に終わったロペスオブラドール候補が今回の選挙で勝利すれば、対米関係は現在よりも疎遠になり、対立が深まる可能性がある。オブラドール候補は、他の有力国に対する経済的依存を弱めていくことを公約しているからだ。

その経済的依存の最大の相手が、米国だ。

メキシコ輸出の8割はこの北の隣国向けであり、メキシコ向け投資の大半も、伝統的に米国からのものだ。だがトランプ政権誕生から、メキシコ国民の対米感情は冷え込んでいる。

ロペスオブラドール候補は18日、メキシコ湾に面したベラクルス港で、トランプ大統領について「無礼な態度をやめなければ、思い知らせてやることになる」と述べた。ベラクルスは1914年に米軍に占領された、メキシコ国民としては屈辱の記憶が残る地である。

トランプ大統領は同日、ツイッターのフォロワーに対し「(メキシコは)世界で危険な国ナンバーワンだ」とつぶやいた。メキシコ国内では暴力犯罪が増加しているとはいえ、国連・世界銀行がまとめたデータによれば、殺人事件の発生率は複数のラテンアメリカ諸国よりもかなり低い水準に留まっている。

ロペスオブラドール候補は今月に入り、他国からの指示に従うメキシコの「傀儡(かいらい)政権」に終止符を打つと誓っているが、トランプ大統領の罵倒に反撃し「自身の考え」をツイッターで米国民に伝えると約束した。

世論調査会社パラメトリアによる12月調査では、ロペスオブラドール候補が他候補を11ポイント差でリードした。先週ミトフスキーが行った別調査ではリードは3ポイント差だったが、拡大傾向にあるという。

1年前の就任以来、トランプ大統領はメキシコに関する否定的な見解を頻繁に表明してきた。メキシコから米国への麻薬流入を非難し、メキシコで活動する米国企業を批判、不法移民を防ぐために建設したいとしている「壁」の費用をメキシコに負担させると主張している。

トランプ大統領は、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉もしくは解消により、「壁」費用の負担を両国間の通商条件にリンクさせる、と脅している。

こうした発言の都度、ペニャニエト大統領が率いるメキシコ政府は反論してきた。

今週に入り、保守派の最大野党・国民行動党(PAN)から大統領選に出馬予定で、左派と右派の合同会派を主導するリカルド・アナヤ氏と、与党・制度的革命党(PRI)のホセ・アントニオ・ミード候補も、トランプ大統領批判に加わった。

ベラクルスでロペスオブラドール候補が発言した同じ日に、ミード候補もツイッターに「いかなる状況であれ、メキシコが『壁』の費用を払うことはない」と投稿した。

 1月22日、大統領選を控えたメキシコでは、トランプ米大統領の度重なる罵倒を受けて、ナショナリズム感情が煽り立てられている。写真は選挙戦でリードを広げる左派のロペスオブラドール元メキシコ市長。14日、メキシコ市で撮影(2018年 ロイター/Edgard Garrido)

トランプ批判ほどメキシコ国民を団結させるテーマはない。何しろトランプ大統領は、2015年に大統領選に向けた選挙運動を開始早々に、「米国に強姦犯と麻薬の売人を送り込んでくる」とメキシコを非難したのだ。

トランプ大統領は自ら、メキシコの政治家にとってトランプ批判が人気上昇につながる状況を作っており、次期大統領がトランプ政権に友好的な態度を示せば「非常に大きな犠牲」を払うだろう、と世論調査会社ブエンディア&ラレドのホルヘ・ブエンディア氏は語る。

「したがって、トランプ氏及び対米関係について、これまでより、はるかに批判的な提案が出るのは時間の問題だ」と同氏は指摘する。

同氏によれば、トランプ大統領批判によって最も得点を稼いでいるのは、少なくとも選挙戦序盤の段階では、明らかにロペスオブラドール候補だという。

<メキシコ国民の怒り>

ピュー研究所とブエンディア&ラレドのデータに基づいて先週発表された調査では、トランプ氏が大統領選に出馬して以来、メキシコでは米国のイメージが急激に悪化している。

この調査によれば、2015年、メキシコにおいて、米国について良い印象を抱いている国民は全体の66%、悪い印象を抱いている国民は29%だった。昨年10月では、メキシコ国民の65%が米国に対して悪い印象を抱き、良い印象を抱いているのはわずか30%だった。

PRI所属の元国会議員で、在シカゴ総領事を務めたこともあるエリベルト・ガリンド氏は、最終的には大統領選に出馬するすべての候補の論調が反トランプで一致するだろう、と語る。

「別にこの先、米国との戦争があると言っているわけではない。メキシコは平和主義の国だ」とガリンド氏。「とはいえ、トランプ大統領は、メキシコ国民のあいだに大きな怒りと、反米的な姿勢を引き起こしている。これは何の役にも立たないし、有益でも健全でもない。何と言っても、米国は隣国だ」

米国の国益にとって、より有利に改訂されない限り北米自由貿易協定(NAFTA)を解消する、という恫喝をトランプ大統領が今後も続けるようであれば、反トランプ感情はさらに強まるだろう。

メキシコによる貿易のかなりの部分の基盤となっているNAFTAについて、交渉担当者は今月再び協議を行い、協定の全面見直しを試みている。

ロペスオブラドール候補は、トランプ批判による追い風を得るために、さらに論調を厳しくする必要すらない、と元連邦議員で、現在はメキシコの対外イメージの改善に取り組む団体Fundacion Imagen Mexicoを率いるアグスティン・バリオス・ゴメス氏は語る。

彼のナショナリズム的な主張に対抗し得るライバルが存在しないからだ。

ミード、アナヤ両候補がそれぞれ所属する政党は、これまで米国との経済統合と協力深化を支持しており、彼らの党だけがこれまで政権を担ってきた、とバリオス・ゴメス氏は指摘する。

だが今や、トランプ氏の敵対的な態度により、こうしたモデルは崩れてしまった。

「あの連中(米国)を信頼してきたのに、急にそっぽを向かれてしまった。ずっと以前から左派が言い続けてきた通りになった、というのが今の国民感情だ」とバリオス・ゴメス氏。「これはロペスオブラドール候補に有利に働く。彼は改めて何も言う必要が無いからだ」

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(翻訳:エァクレーレン)

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