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アングル:メキシコの17歳、姉のために手話通訳アプリを開発

[ネサワルコヨトル(メキシコ) 5日 ロイター] - 科学分野で飛び抜けた才能を持つエストレラ・サラザールさん(17)が国内の聴覚障害者や難聴者のコミュニケーションを支援するアプリを開発したのは、姉の存在がきっかけだった。

 1月5日、科学分野で飛び抜けた才能を持つエストレラ・サラザールさん(17)が国内の聴覚障害者や難聴者のコミュニケーションを支援するアプリの開発を始めたのは、姉の存在がきっかけだった。メキシコのネサワルコヨトルで2021年12月撮影(2022年 ロイター/Luis Cortes)

メキシコ市に近い労働者階級の街に暮らすエストレラさんの姉ペルラさんは、運動障害や聴覚障害をもたらすMERRF(赤色ぼろ線維を伴うミオクローヌスてんかん)と呼ばれる先天的な希少疾患を患って生まれた。現在25歳のペルラさんは、10数回もの手術を受け、その後も何年にもわたる理学療法を続けている。ある手話の学校では、その症状ゆえに手話を使うことはできないだろうと告げられた。

学業優秀のため通常よりも3年飛び級で高校を卒業することができたエストレラさんは、ペルラさんが差別に直面しているのを目の当たりにして、「姉のために私に何かできることはないだろうか」と自問した。

昨年、エストレラさんはメキシコ手話(MSL)使用者と健聴者をつなぐアプリの開発を始めた。手話から文章・音声へ、あるいはその逆の変換を可能にする仕組みだ。

メキシコ統計庁によれば、メキシコ国内の聴覚障害者・難聴者は推定460万人。聴覚障害・難聴の家族のために非公式に手話通訳を行っている人は多いが、資格を持つ手話通訳者は慢性的に不足している。

エストレラさんは「ハンズ・ウィズ・ボイス」と名付けたアプリの開発に向けて、母語として手話を用いている人や手話通訳者を含め、90人近い協力者を集めた。今年中にはアプリを公開したいと考えている。ここ数カ月は、ペルラさんの運動機能が改善されたため、家族も手話を学びはじめた。

「妹を誇りに思う」とペルラさんは語った。「妹のアプリ開発の過程で仲間を見つけられたのも嬉しい」

エストレラさんは、アプリ開発と大学でのバイオテクノロジー工学の勉強との二刀流をこなすだけでなく、メキシコ市の北東5キロにあるネサワルコヨトルの自宅近くで科学を教えている。

エストレラさんはロイターの取材に対し、「人々の考え方を変えるべき時だと考えている」と語る。「いずれは、多くの子どもが自然科学やテクノロジー関連の課題に取り組むような文化を生み出せるようにしたい」

2人の母親であるレティシア・カルデロンさんの話では、幼いエストレラさんを姉のセラピーに連れて行くと、状況を素早く理解していることに気づいたという。ペルラさんの会話練習のために、レティシアさんは娘に学校で何を習っているのかなどを尋ねたという。

「(エストレラさんを)高い椅子に座らせていたのだけど、あの子は座ったまま姉に、解答を教えていた」とレティシアさんは言う。

レティシアさんによれば、エストレラさんの学習意欲は高く、すぐにネサワルコヨトルの教師たちの手に負えなくなってしまったという。エストレラさんは15歳の時点で高校卒業資格試験に合格し、自分の知識を応用してみたいと熱望していた。

エストレラさんは、NASA契約企業がこの春アラバマ州ハンツビルで開催する5日間の合宿企画「国際航空宇宙プログラム」に参加する若者60人の1人に選ばれた。この街にはマーシャル宇宙飛行センターが置かれている。

プログラムの参加費3500ドル(約41万円)を賄うため、エストレラさんは自分のインスタグラム上でクラウドファンディングのキャンペーンを開始した。期限まで数週間を残しているが、目標額の75%は集まったという。

エストレラさんは今、新型コロナウイルス感染症の発症中・快復後の神経学的な影響についての研究を続けられるような米国の大学を探している最中だという。

「若者や子どもたちは、『出身地など関係ない。大事なのは何をやろうとしているか』と考え方を持っている」とエストレラさんは語る。

「ネサワルコヨトルで生まれ育ったこと、そして子どもたちが自分のやりたいことを実現するために勉強し、真剣に打ち込んでいることを誇らしく思う」

(Kylie Madry記者、翻訳:エァクレーレン)

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