February 1, 2018 / 6:28 AM / 10 months ago

アングル:メキシコでテキーラ原料不足が深刻化、人気が裏目に

[アマチタン(メキシコ) 30日 ロイター] - メキシコのテキーラ生産中心地、西部ハリスコ州が、ニューヨークから東京に至る幅広いテキーラ人気を反映した、深刻な原料不足に悩まされいる。

 1月30日、メキシコのテキーラ生産中心地、西部ハリスコ州が、ニューヨークから東京に至る幅広いテキーラ人気を反映した、深刻な原料不足に悩まされいる。写真はテキーラのボトル。メキシコシティで2017年2月撮影(2018年 ロイター/Edgard Garrido)

テキーラの原料アガベ・テキラーナは、青みを帯びた鋭い葉が特徴の多肉植物で、この2年で価格が6倍に跳ね上がった。これにより、小規模な酒造メーカ―の利益を圧迫するだけでなく、大規模メーカーも原料不足の直撃を受ける恐れが出ている。

十分に成長したアガベの不足を補うため、まだ成長途中の若いアガベを使わざるを得なくなった──。アマチタン村近郊で、テキーラ向けにアガベを加熱する大きな金属製オーブンの前にいた農家の男性は、そう語る。アガベは、成長するのに7─8年かかる。

この男性は、若い原料を使っていることを取引先に知られたくないと、氏名の公表を拒んだ。

若いアガベを使うと、生産できるテキーラ量が減る。このため、供給が限られている中で、より多くのアガベを前倒し収穫しなければならず、悪循環に拍車がかかる。

「他に使えるものがないから、彼ら(メーカー)は4年ものを使っている。自分が売ったのだから、確かだ」と、メキシコ中部グアナフアト州の生産者マルコポーロ・マグダレノさんは言う。

テキーラは、原産地名称の保護制度により生産が厳しく規定されている。グアナフアト州は、アガベ生産が認められた数少ない州の1つだ。

ロイターがテキーラ業界の専門家10人以上に取材したところ、収穫前倒しにより、2018年は原料不足が悪化すると見込まれている。

テキーラ規制委員会(CRT)と全国テキーラ産業会議所(CNIT)のデータによると、2011年に植えられたブルーアガベは1770万株で、登録メーカー140社が今年必要とする総計4200万株を大きく下回っている。

原料の作付増加戦略が実を結ぶまでには年数がかかるため、アガベ不足は2121年まで続く見通しだと、生産者は指摘する。

その結果、アガベ価格は1キロ22ペソ(128円)に急騰。2016年は同3.85ペソだった。

原料価格の高騰は、かつて市場で主流だった低純度で低価格のテキーラを製造する会社にとって、プレミアムメーカーとの競争がより困難になっていることを意味する。

「アガベには大型投資が必要で、低価格のテキーラでは割に合わない」と、CNITのルイス・ベラスコ会長は語る。

高級テキーラを生産する小規模メーカーにもその影響は及んでおり、消費者が他の酒に流れることを心配する声も上がっている。

「1キロ20ペソ超では、ウォッカやウィスキーなど他のスピリッツ類と競争するのは不可能だ」と、ハリスコ州エルアレナルにある小規模製造会社テキーラ・カスカウィンのサルバドール・ロサレスさんは言う。「このままの状態が続けば、多くのメーカーが倒産する」

CNITのデータによると、純正テキーラの米国向け輸出は、この10年で3倍近くに増加。より安価なブレンドテキーラの輸出は、わずか11%の増加だった。

同期間に、メキシコのテキーラ生産量は4%減少。特にブレンドテキーラが大きく落ち込んでいる。

<世界の需要>

ならず者が好み、大学生のパーティで飲まれる「ワイルドな酒」としてのイメージから脱皮し、高級酒の仲間入りを果たしたテキーラだが、この業界では、近年買収などの動きが相次いている。

世界販売量1位のラムブレンド「バカルディ」を有するバカルディは1月、高級テキーラメーカーのパトロン・スピリッツ・インターナショナルを51億ドル(約5500億円)で買収すると発表した。

2017年には、メキシコのベックマン家が、長年憶測があったホセ・クエルボ(CUERVO.MX)の新規株式公開を行い、9億ドル以上を調達した。

また、英ディアジオ(DGE.L)は2014年、ブッシュミルズ・アイリッシュウィスキーを手放して高級テキーラ製造会社ドン・フリオを完全子会社化している。

多くのテキーラ製造会社はいま、テキーラ人気にどう歩調を合わせるかという問いに直面している。

「(テキーラの)成長に追い越されてしまった。テキーラ産業にとっては、成功がもたらした危機だ」と、パトロンの経営戦略担当者フランシスコ・ソルテロ氏は言う。パトロンでは、様々な契約を通じてアガベを購入しているという。

「想定の倍のペースで成長してしまった」

パトロンやテキーラサウザのような大量生産メーカーは、アガベの支払いに苦労しておらず、今後も在庫量は増える見通しだという。

「価値を売っている時に、コストは問題にならない」と、ソルテロ氏は言う。

ほとんどのアガベを自家栽培しているテキーラサウザでは、原料不足の問題は今後も起きない見通しだ、と同社のセルバンド・カルデロン氏は言う。

だが、生産コスト増と原料不足が大規模メーカーを圧迫し始めるのは時間の問題だとの見方もある。

「クエルボやサウザといった大手メーカーにも、大きな影響を与えるのは間違いない」と、アガベ生産者団体のラウル・ガルシア会長は言う。「問題は短期間で解決されないだろう。それが心配だ」

アガベを原料とする甘味料のアガベシロップや食物繊維サプリメントのイヌリンなど向けの需要も大きく、2018年に必要とされるアガベ量全体の20%に上ると、CRTは予想する。

メキシコのハリスコ州でテキーラの原料のアガベを収穫する農場作業員。2017年9月撮影(2018年 ロイター/Carlos Jasso)

また、価格高騰を受けてアガベの窃盗も増え、小規模生産者を追い詰めていると、テパティトランのアガベ生産者ホセ・デヘススさんは言う。夜中に大型トラックで乗り付けて、アガベを盗んで行くという。

CRTによると、昨年は1万5000株が盗難被害に遭った。これは2016年の3倍以上だ。

(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

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