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コラム

コラム:退屈なトランプ氏、「支持者離れ」招くか

[22日 ロイター] - 米大統領選の共和党候補指名争いでトップを走るドナルド・トランプ陣営は、いま、大きなジレンマを抱えている。不動産王トランプ氏自身が、自分の取るべきポジションを見失っているのだ。

 4月22日、米大統領選の共和党候補指名争いでトップを走るドナルド・トランプ陣営は、いま、大きなジレンマを抱えている。不動産王トランプ氏自身が、自分の取るべきポジションを見失っているのだ。写真は25日、ペンシルバニア州での選挙集会で演説する同氏(2016年 ロイター/Dominick Reuter)

19日のニューヨーク州予備選で勝利を収めた夜のスピーチでは、トランプ氏らしさはほとんど見られなかった。

お馴染みの髪型はいつもどおりだが、話しぶりが奇妙だった。ライバルのテッド・クルーズ氏を、いつもなら「嘘つきテッド」と呼ぶところを「クルーズ上院議員」と呼んだ。

聴衆の勝手な空想を誘う話術も影を潜めた。何よりも目立ったのは、わずか8分間のあいだにトランプ氏がステージへの出入りを繰り返したことだ。いつもならこの時間をたっぷり使って、共和党のライバルたちに対する優位を伝える世論調査を引き合いに出し、本選でもヒラリー・クリントン前国務長官に対してリードしているという根拠のない主張を喧伝するところである。

この「新型トランプ」の登場は、明らかに、彼の陣営に新たに参加した選挙運動のプロが策を弄した結果だ。この夏、クリーブランドで開かれる共和党全国大会での投票が決選投票にまでもつれ込んだ場合に必要となる、共和党代議員たちの支持を獲得することが狙いだ。

多くの州では、候補者の陣営が自らの代議員を選ぶことを禁じる党の規定がある。つまり、自州の予備選または党員集会の結果に従い1回目の投票ではトランプ氏に投票することを宣誓する代議員の多くは、トランプ陣営にとってはうんざりすることに、まっとうな主流派の大統領候補を切望する、まっとうな主流派の共和党員なのである。

そこで、トランプ氏のイメージチェンジである。辛辣なトーク、脅し、敵対者に対する絶えまない攻撃とマイノリティへの責任転嫁といった要因が重なったことで、トランプ氏は、退陣を間近に控えたニクソン大統領以来となる、最も不人気な政治指導者になっていた。

だが、陣営幹部として新たに採用されたポール・マナフォート氏によって、これらの側面は抑え込まれている。マナフォート氏は、トランプ陣営のこれまでの戦略担当者とは異なり、現実を厳しく見つめているようだ。

とはいえ、冗舌さも誹謗中傷もなくなった彼は、もはや本来のトランプ候補ではないのではないか。トランプ氏の本質だけでなく、その立ち居振る舞いも支持者にとっての彼の魅力の基盤になっていたと想像していただきたい。

いや、想像する必要もない。トランプ氏を支持する白人労働者階級に対する詳細な調査が明らかにしているように、同候補の成功の秘訣は、その傲慢で無遠慮なステージでの言動にあったのだ。

1月、AFL─CIO(米労働総同盟産業別組合会議)による組合非加入の白人労働者階級に対する広範な世論調査プロジェクト「ワーキング・アメリカ」は、白人労働者階級の住民が多いクリーブランド及びピッツバーグ郊外で1700名近い有権者に対する戸別訪問調査の結果を発表した。

最長15分間にわたる面接調査のなかで、調査員たちは、接触した相手の38%がトランプ氏、27%が他の共和党候補者、22%がクリントン氏、12%が民主党バーニー・サンダース上院議員を支持しているとの結果を得た。面接調査が行われたのは12月と1月で、アイオワ州やニューハンプシャー州での実際の予備選が始まる直前である。

調査で判明した最も注目すべき点は、トランプ氏の熱狂的な信奉者が彼を支持する理由である。密入国した移民を国外追放する、対メキシコ国境に不法移民流入防止の壁を築く、貿易協定を再交渉する、といった政策的なポジションを挙げたのはわずか8%だった。

支持の理由として圧倒的に多かったのが、トランプ氏は「自分の考えを率直に話しているから」というものだった。支持者のうち実に43%が、これを支持の主要な理由であると述べた。

支持の理由として2番目に多い13%が挙げたのは、無遠慮さに非常に近いものだった。トランプ氏が「タフで怒っている」印象を与える、と言うものだ。つまり全体では、トランプ支持者の56%が基本的には彼の立ち居振る舞いに反応していることになる。

以下、順番に見ていくと、11%がビジネスでの経験、10%が反主流派としての姿勢、9%が主要な選挙資金提供者によるプレッシャーから自由であることを挙げている。

こうした数字は特に意外ではないはずだ。結局のところ、トランプ氏の選挙運動は、記憶する限りの現代の大統領選挙のなかで、最も政策面の比重の軽いものだった。トランプ陣営において政策とされているものは単なる思いつきでしかないことが多く、無理に説明しようとすれば非常識に聞こえてしまうだけに、触れずにおいた方がいいような代物だった。

メキシコの費用負担で国境に壁を築くというアイデアは、確かにトランプ支持者の感情に訴えた。とはいえ、支持者のうち、これを妥当な政策だと本気で信じる人がどれほどいたか、米国やその大統領が追求すべき方向を見事に喩えていると考える人がどれほどいたかは、まったく見当がつかない。

だが、7月の全国党大会が視野に入ってきた今、トランプ氏は広げた風呂敷を畳み始めている。そこに、彼のジレンマがある。

トランプ氏の暴言の数々は、その支持層に対する彼の魅力の基盤そのものだった。支持者たちの怒り、恐れ、偏見に同氏は声を与えた。それらを遠慮会釈なく表現してくれる人物は、政界のどこにも見つからなかったのである。ラジオのトーク番組ではよく耳にする声だが、少なくとも大統領選レベルではトランプ氏しかいなかったのだ。

共和党主流派を安心させるために、トランプ候補は繰り返し、「大統領らしく」「退屈に」なると約束してきた。19日夜のトランプ氏の言動は、それがどのようなことなのかを示唆していた。

だが、「大統領らしく」振る舞うトランプ氏は、それでもまだトランプ氏なのだろうか。指名獲得するためには共和党主流派の支持が必要だが、彼本来の支持層を幻滅させずに、そのようなことが可能だろうか。

今のところ、トランプ氏は2つのモードのあいだで振り子のように揺れている。予備選当日夜の同氏の声明ではクルーズ氏は「上院議員」だが、遊説中のトランプ氏にとっては今も「嘘つきテッド」だ。

自らの支持層と共和党主流派の双方を満足させるような中間的な領域がもしあるのなら、トランプ氏はすでにそれを見つけているはずだ。だが、共和党全体が苦労していることからも分かるように、新世代の熱狂的な支持者と伝統的な共和党員とが妥協できる中間地点など、とうの昔に消滅してしまっているのである。

*筆者は月刊誌「American Prospect」のエグゼクティブエディター。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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