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焦点:米政権、「子ども移民」増加に妙案なし 最大級の試練に

[ワシントン 10日 ロイター] - バイデン米大統領は、メキシコとの国境に子どもだけで到着する「子どもの移民」が増え続けている問題への対応を急いでいる。しかし、ある米政府高官によると、選択肢は限られる上にどれも妙案ではない。

 バイデン米大統領は、メキシコとの国境に子どもだけで到着する「子どもの移民」が増え続けている問題への対応を急いでいる。しかし、ある米政府高官によると、選択肢は限られる上にどれも妙案ではない。写真はメキシコから米テキサス州に到着した未成年の移民。同州ペニータスで9日撮影(2021年 ロイター/Adrees Latif)

子どもの流入はバイデン氏が、トランプ前大統領によって厳格化された移民規制の一部を緩めたことで増加している。これに対し、野党・共和党からだけでなく、子どもたちが国境の拘置施設にあまりに長くとどめられている状況を懸念する民主党内の一部からも、バイデン氏の方針を批判する声が出ている。

バイデン政権は国境を越えてやってくる子どもたちをまず保護・受け入れし、その後に迅速に自由にすることを模索しようとしているが、法的ないしスペース確保の問題のほか、経費不足など幾つもの難題に直面している。

米国の法律では、連邦保健当局は親に伴われず入国した子どもについて、1人の親もしくは他の保護者の下に落ち着くことができるまで、保護する場所を提供し、世話をすることが義務付けられている。だが、州の認可施設には、そうした義務を実行できるだけの空きスペースが乏しい。

米国家安全保障会議(NSC)のメキシコ国境問題責任者のロバータ・ジェイコブソン氏と国務省は10日、トランプ前政権が打ち切っていた「セントラル・アメリカン・マイナーズ」プログラムを復活させると発表した。同プログラムは、子どもたちが母国で申請すれば、米国の家族や親類に合流するのを認める制度だ。

ただ、ジェイコブソン氏は記者会見で、新型コロナ禍などを念頭に、今はメキシコ国境に来るタイミングではないというのが難民へのメッセージだと繰り返した。

親や法的に保護者と認められる者に伴われずに国境にやってくる子どもが増え続ければ、当局は保護用の緊急シェルターの収容能力を拡大するか、認可滞在施設をより多く開設する時間のかかる作業に取り掛かるか、さもなければ子どもを自由にするのを早めるしかなくなる。

先の政府高官はロイターに「われわれは、大小さまざまな軌道修正をしなければならない。選択肢はどれも決して素晴らしいものではないので、(われわれは)それでも可能性のある措置を念入りに精査中だ」と語った。

子どもの移民は、国境警備隊の留置施設から72時間以内に移送されるのが原則。ただ、保護シェルターの空きに余裕がない場合には国境の留置施設に長期間収容することができるとされ、税関・国境取締局(CBP)の幹部によると、現在はこれがまかり通っている。

2019年に移民支援団体が懸念を表明したのは、幼児を含めた数百人の子どもたちが、十分な食事や清潔な衣服、おむつ、歯ブラシを与えられず、シャワーも浴びられずに国境で留置されていることだった。

オバマ政権で厚生省の難民担当責任者だったロバート・キャリー氏は、子どもの移民の収容を巡る政策の変更は、たとえ多大な労力を投入してもすぐには難しいと指摘。「これは非常に骨が折れる作業だ」と述べた。

<足りない施設>

バイデン氏がぶつかっている幾つかの問題はまさに、これまでの米政権も悩ませてきた事柄だ。

バイデン氏が直面する複雑な問題の一例を挙げよう。米保健当局は5日、新型コロナウイルス感染防止のため導入されていた規制措置の一部を緩和した。コロナ対策で連邦のシェルターのベッド数などの受け入れ能力は4割削減され、施設のベッドは満杯になっていた。

この措置が緩和されたことで、新たに計約1万3000人分の子どもの受け入れが可能となった。8日時点で、政府施設に収容されている子どもの移民は8100人。しかし、ベッドは再び急速に埋まりつつある。

当局はシェルターに収容する子どもを増やせば、新型コロナの感染リスクが高まることは認める。しかし、政権によれば、新たな施設の立ち上げには時間が長くかかる以上、ほかに打てる手はほとんどない。

長期間滞在用のシェルターの開設には州の認可が必要で、そうなると児童福祉関連の地元の法律順守も求められる。開設認可には最長1年かかることになる上に、拘置施設制度を批判する人権擁護派と、反移民団体の双方から開設そのものが待ったをかけられかねない。

連邦政府の用地内であれば緊急用シェルターは、より短期間に建設が可能だ。そのためバイデン政権は軍基地を含め、利用できるめぼしい土地がないか物色している。

だが、厚生省元幹部のマーク・グリーンバーグ氏によると、子どもの移民のシェルターにすぐ使えたり、短期間で子どもたち用に作り替えられたりするのに適した連邦管轄の土地や建物を見つけるのは難題だ。同氏は親に伴われていない子どもの移民が急増した14年当時、厚生省に勤務していた。「将来使えそうな連邦の土地や建物を見つけ出そうと、われわれは多大な時間を費やした。しかし、大半の省庁は提供できる物件を持っていなかった」と振り返る。

非営利公益法人のウイメンズ・レフュジー・コミッション上席政策アドバイザー、リー・チャブラ氏によると、次善の選択肢は規模の小さいシェルターの建設をしていくか、里親制度を利用することだが、それは実現までにさらに長い時間がかかる。

<最大級の試練>

収容施設の不足を減らす別の方法は、米国での「保護者」に子どもたちを迅速に引き渡すことだ。サキ大統領報道官によると、バイデン氏も協議の場でこの可能性を尋ねていた。

ただ、厚生省の元幹部たちによると、拙速に進めれば制度が悪用され、児童虐待にもつながりかねない。実際に13年と14年には、グアテマラから入国した未成年者たちが施設を出された後、オハイオ州の養鶏場で強制労働をさせられていた。

サキ氏は、9日のMSNBCテレビで「こうした子どもたちに関係することになる1人1人を、われわれは時間をかけて審査する必要がある。われわれは、この作業をはかどらせる方法を考え出そうとしている」と述べた。

幾つかの措置は、既に導入に向かっている。国境近くでいったん14日間の隔離措置を取るのをやめたり、新しいデータベースシステムを活用することで、保護者の身元審査を迅速にしたりすることなどだ。しかし、入国する子どもの数が増える一方であれば、需給ひっ迫解消に大きな効果を発揮しそうにはない。

オバマ元大統領の下で移民問題の首席補佐官だったセシリア・ムニョス氏は、バイデン政権にとって、親を伴わずに国境にやってきた子どもの取り扱いは最大級の試練になると断言。トランプ氏の国境政策が作り出した子どもだけの移民といった問題をバイデン政権が引き継がざるを得なくなっていると指摘した。

(Ted Hesson 記者、Mica Rosenberg記者)

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