March 8, 2019 / 3:46 AM / 2 months ago

インタビュー:中国景気の腰折れ「当面、想定せず」=浅川財務官

[東京 8日 ロイター] - 浅川雅嗣財務官はロイターとのインタビューで、世界経済の現状について「回復基調が続いている」との認識を示した。貿易協議を巡って米中が対立し、2018年の中国の経済成長率が6.6%と28年ぶりの低水準にとどまったことに関しては「明らかに減速している」とした。一方、中国政府による景気刺激策で「当面、腰折れするとはみていない」との見通しも併せて示した。

 3月8日、浅川雅嗣財務官(写真)はロイターとのインタビューで、世界経済の現状について「回復基調が続いている」との認識を示した。写真中央は麻生財務相、右は黒田日銀総裁。ワシントンで2016年10月撮影(2019年 ロイター/James Lawler Duggan)

6月28、29日に開かれる主要20カ国・地域(G20)首脳会議で、日本は初めて議長国を務める。浅川財務官はインタビューの中で、経常収支の不均衡と少子高齢化への対応が「持続的成長を支える大きな要因とみて、議論を深めていきたい」と強調。G20の結束が求められる中で、貿易問題に関しても「しっかり議論しないとG20の存在意義がない」と語った。

G20の議論と並行して本格化する日米通商交渉に関しては、為替条項について「あくまで為替当局間で議論されるべきもの」と述べ、交渉を担う茂木敏充経済再生相とライトハイザー米通商代表部(USTR)代表との間で「話し合われるということにはならない」と指摘した。インタビューは7日に行った。

主なやり取りは以下の通り。

――世界経済の現状をどうみるか。貿易戦争の長期化や米金利の上昇を不安視する声もある。下振れのリスクは顕在化しないか。

「米中に代表される貿易摩擦もあり、下方リスクが『顕在化するリスク』も意識せざるを得ないが、足元では世界経済の回復基調は続いている。当面はリスクが顕在化するとはみていない」

「1月のFOMC(米連邦公開市場委員会)のパウエル議長の発言を受けて、今後の米利上げに対する市場の見方が変わり、新興国通貨への減価圧力が和らいだ。昨年まではトルコやアルゼンチンの通貨が相当減価する局面があり、ひと頃は心配して見ていた。足元では資本がむしろ新興国に戻っている」

「昨年の中国の経済成長率は28年ぶりの低水準となり、明らかに減速しているが、財政拡張や金融緩和などの景気刺激策によって、当面、中国景気が大きく腰折れすることはないとみている」

「今後想定される米中首脳会談に向け、米中2国間の貿易収支を改善させる一時的対応だけでなく、知的財産権の保護や技術の強制的な移転防止を含む構造問題まで踏み込んだ議論が、進展することを期待したい」

「米国の利上げ観測が当面後退したとはいえ、米財政赤字が膨らみ再び、金利上昇の圧力がかかる可能性は残る。中長期的なリスクは注意深くみていく必要がある」

――麻生太郎財務相は1月のG20財務相・中央銀行総裁代理会議で「国際経済秩序や国際協調といった価値は危機に瀕している」と指摘した。持続的な成長のための協調姿勢を取り戻すのに、議論をどう展開するか。

「2008年11月にG20サミット初会合が開かれたのは、リーマン危機の2カ月後だった。『100年に1度』といわれた金融危機にどう対処するか真剣に議論し、IMF(国際通貨基金)や世界銀行などマルチな国際機関も巻き込んで危機を乗り切った。危機時のG20は政策協調へのモメンタムがあり、議論は比較的、直截(ちょくせつ)だった」

「平時モードとなった今、モメンタムが失われ、マルチの枠組みは揺らぎつつある。グローバリゼーションやデジタリゼーション(情報通信技術の利用拡大)が進み、分配するべき『パイ』は大きくなったが、同時に、分配の不平等や格差を背景にポピュリズムが台頭してきた」

「世界貿易は成長の主要なドライバーとなる。貿易摩擦の激化で不透明感が増せば、投資意欲が減退し、消費にも悪影響を及ぼす。G20で貿易の問題をしっかり議論しないと、G20の存在意義がない」

「これまで包括的な議論をしてこなかった高齢化も取り上げる。グローバル・インバランスと高齢化の2つのトピックスを持続的成長を支える大きな要因とみて、議論を深めていきたい」

――グローバル・インバランスの問題はリーマン危機後の09年以降、置き去りにされてきた。なぜ今か。

「議長国として議論を再開させたい。インバランスの問題は2国間だけでなく、マルチな枠組みで捉えるべきだ。例えば米国が中国からの輸入に対して関税を課し、仮に中国からの輸入が減ったとしても、米国のインバランスは解消しない。中国以外からの輸入が増えるだけだ」

「貿易収支だけではなくサービス、所得収支も含め、さらに経常黒字がどのように使われているか、資本フローまで踏み込んで議論を主導したい。日本が稼いだ経常収支は、直接投資というかたちで米欧に資金が還流し、米欧圏で雇用を生み出している」

「高齢化が進む過程で、将来に備えて貯蓄率が上がり、経常収支の黒字要因となっている側面もある。貯蓄主体によっていろんな議論があってしかるべきだ」

――G20の議論と並行して日米物品貿易協定(TAG)交渉が始まる。ライトハイザーUSTR代表は為替条項も協議の対象にしたい考えのようだが、受け止めは。

「為替は麻生財務相とムニューシン米財務長官との間で行われるものであるとの合意がある。あくまで為替当局間で議論されるべきものであるというのが大前提で、茂木再生相とライトハイザー代表の間で話し合われるということにはならない」

「オバマ政権下でTPP(環太平洋連携協定)を協議した際も為替条項が議論されたが、内容的に受け入れ可能な内容とし、TPP協定とは別の付属文書に盛り込んだ。今回、米国側がどういったかたちで為替条項を提案してくるかは分からないが、いずれにしても議論になるとすれば、中身をどうするか、形式的にどう位置付けるのかの議論となる」

――年初に為替が急変した動きをどう捉えているか。

「1月3日のオセアニア市場で早朝の30分間で円が急騰し、あっという間に戻った。アップルの業績下方修正をきっかけにアルゴリズムが働き、相当なスピードで相場が動いた。ファンダメンタルズで説明がつかず、望ましくない動きだった」

「明らかにファンダメンタルズから正当化できない動きに適切に対応することは、G20、G7の了解事項。急激な為替変動は金融・経済の安定に好ましくないとの合意がある」

――5月1日の改元に伴って、4月27日から5月6日まで10連休となる。「フラッシュ・クラッシュ」などにどう備えるか。

「休場中は取引が薄くショックがあると振れやすい。5連休、3連休でもスタンスは変わらないが、常に市場はモニターし、必要な対応をとる。10連休だからこうというわけでもないが、より注意深くみていく」

――金融庁、財務省、日銀による「3者会合」は、3月2日で発足から3年となった。会合を重ねてきた意義をあらためて聞きたい。

「16年3月の初会合から、24回にわたり協議を重ねてきた。為替、債券、株式市場はリンクしている。市場の動きに対する認識を共有し、分析を深めていく意味で意義は大きい。コメントを出すことが主目的ではないが、市場とのコミュニケーションを深めるうえで、必要と判断すれば今後もメッセージを発出したい」

――在任期間が、これまで最長だった日銀の黒田東彦総裁の1287日を抜いて歴代最長となった。振り返って現在の国際経済をどうみるか。

「15年8月にはチャイナショックがあった。人民元が突然切り下がり、上海株の暴落につながった。16年6月にはブレグジット(を認める国民投票結果)で市場に動揺が走った。同年11月にはトランプ大統領が選出され、ドルが乱高下した。17年になると為替は落ち着いたが、日米経済対話が始まり、麻生副総理とペンス副大統領の協議を2回行った」

「リーマン危機から立ち直った今、格差拡大がポピュリズムの台頭につながり、トランプ大統領選出の背景の1つになったのかも知れない。G20でグローバリズムやデジタリゼーションを否定しても仕方ない。そこから出てくる課題にどうチャレンジするか、議長国としての責務を果たしていきたい」

山口貴也、梶本哲史 編集:田巻一彦

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