March 10, 2018 / 1:57 AM / 4 months ago

コラム:QE終幕で「タームプレミアム」急拡大は杞憂か

[ロンドン 7日 ロイター] - 世界の主要中央銀行が10年にわたって続けてきた量的緩和(QE)が終幕を迎え、金融政策の方向性が変化する中で、いわゆる債券の「タームプレミアム(期間に伴う上乗せ利回り)」が拡大し、株式などのリスク資産に打撃を与えるのではないかと投資家は恐れている。

 3月7日、世界の主要中央銀行が10年にわたって続けてきた量的緩和(QE)が終幕を迎え、金融政策の方向性が変化する中で、いわゆる債券の「タームプレミアム」が拡大し、株式などのリスク資産に打撃を与えるのではないかと投資家は恐れている。写真は2016年1月撮影(2018年 ロイター/Jason Lee)

だがまだそんな心配をする必要はない。

金融市場が懸念材料を抱えているのは間違いない。株価のバリュエーションは限界まで上昇し、バブルが醸成されているのではないかとの見方が生まれ、金利は上がり、ボラティリティが極端に高まるという脅威もある。これらが今年、投資家の警戒心をかき立てているはずだ。

ところが、タームプレミアムが近いうちに歴史的高水準に戻ると想定する向きは乏しい。このタームプレミアムは、投資家が債券を長期保有する場合に予測できないイベントの影響を考慮して要求する利回りの上乗せ分を指しており、計測が難しい。

金融市場は目で見ることができる環境や、さまざまなリスクの計測が可能な状況を好む。1─2年先であれば、市場は成長率や物価上昇率、金利の推移を把握することにかなり自信を持ち、政治リスクさえ引き受けて、それなりに織り込むだろう。

しかし10年満期の債券を持つとなれば、その期間中に「知ることができない要素」が存在し、市場は利回りを通じて一定の備えを要求し始める。

近年ではタームプレミアムは相当抑え込まれてきた。各中銀がずっと先まで債券を買い入れると約束していたおかげだ。

そこで今後はその低い水準がどの程度続くかが新たな問題になる。世界的に経済政策の不確実性が高まっている局面でQEは巻き戻されつつあり、米連邦準備理事会(FRB)は新議長が就任したほか年内に連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーが複数入れ替わる。来年には欧州中央銀行(ECB)とイングランド銀行(英中央銀行、BOE)の総裁が交代する。

こうした「既知の未知(答えは分かっていないが、問題が存在することは認識されている状況)」は、タームプレミアムを押し上げるほどの力があるだろうか。

市場専門家やエコノミストの間では、タームプレミアムはまだ低水準を維持できるという見解が大勢だ。

米10年国債のタームプレミアムは、どの指標で計測するかによるとはいえ、現在ゼロ付近かゼロよりやや高い程度で推移している。一方、2013年までタームプレミアムの水準は200ベーシスポイント(bp)を超えていた。

債券利回りは、主として金利リスク、信用リスクとタームプレミアムという3つの要素で構成される。問題はタームプレミアムの確実な計測方法がないことだが、それが拡大するのは投資家が先行きのリスクや不透明感が増大すると見込んでいる表れと言える。

タームプレミアムを低く抑えている重要な材料の1つに、物価上昇率と予想物価の落ち着きが挙げられる。そうした落ち着きの根本には、中銀が物価目標を達成できるという市場の確信がある。

あらゆる証拠から見て、FRBや他の主要中銀は自分たちが物価上昇に先回りして行動し、金融政策の「正常化」は緩やかで事前にきちんと伝えられるということを引き続き投資家に完全に信じさせている。

モルガン・スタンレーのアナリストチームの試算では、1─2月の米10年国債利回りの50bp上昇(2.45%から2.95%)のうちおよそ3分の2は金利先高観に由来し、タームプレミアムの上振れは残りの3分の1にすぎない。

同チームは「物価が十分に回復するという兆しがない限り、投資家の求めるタームプレミアムは抑制されたままだ」と記した。

世界的にも中銀のQE巻き戻しが始まったとはいえ、ドイツ銀行のアナリストによると、流動性が差し引きで完全な吸収に転じるのは来年半ば以降となる。

こうした中銀の姿勢は、金融引き締めとそれに伴う債券利回りの上昇ペースがゆっくりかつ漸進的になると投資家に自信を与えるため、重要な意味がある。

FRBは昨年10月に資産縮小を開始した。ただこれまでに圧縮したボラティリティはおよそ400億ドルにすぎない。ECBに至っては、資産縮小どころか、債券の新規買い入れを停止するのも9月になってからだ。

UBSのアナリストチームは、FRBの圧縮額は最終的に最大9000億ドルで、その後の資産規模は3兆3000億ドル前後と金融危機前を大きく上回るとみている。

シティのアナリストチームの試算では、先進国でQEの規模が5000億ドル縮小されるごとに、10年債のタームプレミアムは11bp前後拡大する。これは大幅とは言えない。

また先進国で今回の引き締めサイクルが終了した時点で見込まれる政策金利水準は、過去のサイクルに比べて低くなるだろう。物価上昇率や「中立金利」の下振れ、中銀の資産規模の大きさが影響するとみられる。

まさに金利のボラティリティを抑える強力な組み合わせで、UBSは「タームプレミアムが過去の引き締めサイクルより低くなることを意味している」と説明する。

イールドカーブも過去のサイクルに比べフラット化する公算が大きい。2月に世界的に株価が急落し、4兆ドルもの価値が失われた一因がイールドカーブのスティープ化だった点を踏まえれば、朗報だ。

もっともフラット化には政策金利上昇が伴っており、こうした事態が起きるのは景気循環の終盤であることが多い。そして成長減速と金利上昇が重なれば、市場のボラティリティが跳ね上がる十分な素地が出来上がる。

ボラティリティは、持続的にタームプレミアムを押し上げることはないかもしれないが、今年の市場を特徴づける要素の1つに見える。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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