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コラム

コラム:主要中銀、物価上昇「一時的」主張は現実とかい離

[ロンドン 23日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 主要中央銀行当局者は「一時的(transitory)」という形容詞を好んで使うが、多用しすぎではないか。

 9月23日、主要中央銀行当局者は「一時的(transitory)」という形容詞を好んで使うが、多用しすぎではないか。写真は米ドル紙幣。2018年2月撮影(2021年 ロイター/Jose Luis Gonzalez)

米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長と欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は、足元で物価が上がっていてもそれは「一時的」なので、新型コロナウイルスのパンデミックで痛手を受けた経済を支えるために導入した超緩和的な金融政策を急速に巻き戻す妥当性はないと説明している。だがこの表現に背負わせている荷物は、あまりにも重い。

FRBが22日に公表した最新見通しによると、個人消費支出(PCE)物価指数は2024年までずっと目標の2%を上回り続ける。23日にはロイターが関係者の話として、欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーの一部が来年のユーロ圏物価上昇率は目標近くか、場合によっては目標より高くなる可能性があると懸念していると伝えた。イングランド銀行(英中央銀行、BOE)も23日、英物価上昇率は今年第4・四半期中に4%をやや超えると予想。8月にBOEが発表した見通しでは、23年第3・四半期になってもまだ物価上昇率は目標の2%を上回るという。

パウエル氏とラガルド氏、そしてBOEのベイリー総裁が、今年の物価上昇の一因としてコロナ禍に関係するさまざまな混乱を挙げたのは正しい。また企業や家計はなおもある程度の支援を必要としている。例えばBOEは、英国の国内総生産(GDP)が依然としてコロナ禍前を約4.5%下回っていると分析した。一方でパウエル氏は22日、FRBが近く債券買い入れの縮小に乗り出すと示唆。BOEの金融政策委員会のメンバー2人は、資産買い入れプログラムの早期打ち切りを主張した。

それでもFRBとBOE、ECBの公式見解では物価圧力は一過性となっている。これを信じたい気持ちも、もはや限界だ。出荷コスト押し上げをもたらしているような供給網の混乱は、金融政策担当者の想定以上に長引く公算が大きい。家計が負担するエネルギー価格は高騰を続け、賃金も上昇基調にあるばかりか、その流れが加速してもおかしくない。

中銀はそうした事態に十分な注意を払っていない、と投資家と家計がみなすようになれば、彼らはもっと物価が上がると予想し始める。そうなると投資家がインフレリスクに対して要求するプレミアムが増大し、借り入れコスト上昇につながる。家計はより高い賃金を求め、物価圧力に跳ね返るという連鎖が発生する。

中銀当局者にとっては、金融引き締めを先送りすべき十分な根拠があるかもしれない。しかしそれは口で言うだけにとどめておいた方が良い。彼ら自身の見通しと経済の現場で実際に起きていることを見れば、「一時的」と繰り返すのはもう限界にきている。

●背景となるニュース

*米連邦準備理事会(FRB)が22日公表した最新見通しによると、個人消費支出(PCE)物価指数の上昇率は4年連続で目標の2%を上回る。連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーの予想中央値は今年が4.2%、来年と2023年が2.2%、24年が2.1%だった。

*欧州中央銀行(ECB)の政策担当者は、ユーロ圏の物価上昇率が、既にECBが引き上げた見通しをも超える事態に備えている。ロイターが関係者の話として23日に報じた。ECB理事会メンバー8人と話した関係者によると、来年の物価上昇率はECBが目標とする2%に近いかそれを上回る可能性がある。ECBの超緩和的な金融政策は、物価上昇率が何年も目標より低い伸びになるという前提を置いている以上、これは頭の痛い問題になりかねない。

*イングランド銀行(英中央銀行、BOE)は23日、英国の物価上昇率は年内に4%を上回ると予想。金融政策委員会の2人のメンバーは、物価圧力増大を理由に量的緩和プログラムの早期打ち切りを主張した。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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