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アングル:相次ぐIPO時の過小評価、個人投資家殺到で価格急騰

[ニューヨーク 11日 ロイター] - 米株式市場に最近上場した民泊仲介大手・エアビーアンドビー、料理宅配最大手・ドアダッシュは、いずれも取引初日に株価が高騰した。投資銀行関係者によると、今年は個人投資家からかつてないほどの引き合いが来ているため、新規株式公開(IPO)時の価格設定がその後の値上がりに比べると過小評価だったことになる「アンダープライシング」を招かないようにするのが難しいという。

 米株式市場に最近上場した民泊仲介大手・エアビーアンドビー、料理宅配最大手・ドアダッシュは、いずれも取引初日に株価が高騰した。写真は10日、エアビーアンドビー上場時のナスダック市場のサイン。ニューヨークで撮影(2020年 ロイター/Carlo Allegri)

アンダープライシングされたことで発行企業が失う機会収益は「テーブルに残されたお金(Money Left On the Table=MLOT)」とも呼ばれる。

ドアダッシュの場合、IPOで34億ドルを調達した後、上場日に株価が一時92%跳ね上がった。公開価格をもっと高めにしていれば、あと20億ドル調達できていた可能性があり、それでもなお初日に20%値上がりした計算になる。

エアビーも事情は同じだ。IPOで35億ドル調達したが、初日に最大で142%も上がった。調達額はその2倍でも可能だったかもしれないし、それでも株価は20%上昇できた。

アンダープライシングでMLOTが生じるのは、IPO市場で目新しい事象とは言えない。ただ、今年はMLOTの大きさが際立っているのが特徴的だ。IPOを手掛ける銀行関係者の話では、新型コロナウイルスのパンデミック中に家で仕事をしつつ投資アプリ「ロビンフッド」を駆使して株式取引をするようなミレニアル世代など、投資家層が多様化しており、これが需要を極めて読みづらくしている。

ドアダッシュのIPOで引受金融機関だったUBSグループの株式資本市場共同責任者、ブラッド・ミラー氏は「過去12─18カ月でIPO市場に登場した新たな要素の1つが、個人投資家だ。幾つかの案件に対する彼らの買い意欲は、飽くことを知らないように見える」と述べた。

金融サービスを提供しているディールロジックによると、こうした需要の強さを背景にして、過去15年で上場初日の値上がり率が最も大きかったIPO銘柄30件のうち、14件は今年実施分だった。今年、初日に企業価値が2倍以上になった銘柄も19件と、2014年(6件)以降で最も多かった。

IPO銘柄への活発な引き合いをもたらした原因と、今年の米国の株価指数を最高値に押し上げた原因は、重なる部分がある。低金利、緩やかな景気回復、新型コロナウイルスワクチンが迅速に普及すればパンデミックが収束するとの期待などが挙げられる。

しかし、IPO市場特有の現象もある。そのために投資銀行による事前の公開価格設定が難しくなっている。費用が安く操作も簡単な投資アプリの利用が広がり、大量の個人投資家マネーが株式市場に解き放たれた。ブローカーのシタデル・セキュリティーズのデータによれば、株式取引における個人投資家の比率は、昨年は10%だったが、今年は最大25%まで高まった。

銀行関係者や投資家は、売り出される株式の争奪戦が新たな需要の発生で一段と激化したと指摘する。人気案件では引受金融機関が、売り出し株の大半を有力機関投資家にとっておく。個人投資家は上場初日にしか買うことできない。

需要が膨らむ一方、買える新株の数が比較的少ないために、上場初日に価格が上昇するのが常だ。そこに新たな個人の買いが殺到した。このため、最近では値上がり幅が格段に大きくなり、発行企業と引受金融機関は、予測がしにくい状況に置かれている。

引受金融機関はウォール街の有力投資家のIPO需要であれば、かなりはっきりとつかめるものの、どれだけ多くのロビンフッドユーザーが新株を買うかは、事前予測できない。

結果的に、特に今年上場したクラウドデータハウスのスノーフレークや人工知能(AI)のC3Aiなどのハイテク企業の多くは、記録的な高水準のバリュエーションで取引される展開になっている。

パシフィック・ライフ・ファンド・アドバイザーズの資産配分責任者、マックス・ゴッフマン氏は、これらの企業の株式が売り出される際に起きる熱狂は、まるで新鮮な獲物に群がるピラニアのような個人投資家の買いによるものだと指摘。だからこそ目下のところ、バリュエーションの尺度は全く役に立たないと説明した。

<不満は聞こえず>

もっとも発行企業が引受金融機関に対して、MLOTの問題で腹を立てている形跡は見当たらない。

ドアダッシュのトニー・シュー最高経営責任者(CEO)はロイターのインタビューで、公開価格は「わが社のファンダメンタルズを正確に反映している」と評価。エアビーのブライアン・チェスキーCEOも10日にブルームバーグテレビのインタビューを受けている最中に自社の上場初日の取引状況を知った際、「非常に恐縮している」と語り、引受金融機関への怒りよりも、あまりの活況ぶりに驚嘆している様子だった。

実際、株式売り出しを通じた資金調達を目指す企業にとって、現在は引受金融機関と契約するIPOに頼るほかに妥当な選択肢がない。引受金融機関に頼らない、いわゆる直接上場は現時点では資金調達手段として企業に認められていない。

特別買収目的会社(SPAC)と合併して資金調達しながら上場する手もあるとはいえ、この場合は企業オーナー側の経営への影響力が極めて小さくなる恐れが出てくる。

フロリダ大学のジェイ・リッター教授(ファイナンス)によると、過去10年にわたるIPOを分析したところ、最も多くの案件を手掛けたゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、JPモルガン・チェースの投資銀大手3行は、そのほとんどがアンダープライシングだったことが分かった。

リッター氏はその理由として、3行がIPOに応じるヘッジファンドなどの重要な顧客をつなぎ留めておきたいからだと指摘。一方で発行企業の多くも自分たちの期待以上の評価が得られているため、反発していないというのだ。

同氏は「エアビーなどの企業がIPO手続きを始めた時点で、数カ月後に今年の市場環境がどうなっているかは分からなかったわけで、彼らとしてはディールが完了したこと自体がうれしいのだ。とりわけ上場初日に値上がりするのだから」と話した。

ゴールドマン、モルガン・スタンレー、JPモルガンはコメントを拒否した。

(Joshua Franklin記者、Krystal Hu記者)

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