[フランクフルト 25日 ロイター] - バイエルのモンサント買収資金を欧州中央銀行(ECB)が融資──。一見突拍子もない話に思えるが、絵空事と片付けることはできない。ドイツの医薬品・化学大手バイエルBAYGn.DEが米農業関連・種子開発大手モンサントMON.Nの買収で合意し、買収資金を社債発行で調達する場合、社債は欧州中央銀行(ECB)が来月から開始する社債買い入れの対象となり得る。
モンサントは24日、バイエルが提示した620億ドルの買収提案を拒否したが、さらなる交渉の余地は残っているとの認識を示した。
ECBが買い入れることができる社債は、発行体の企業がユーロ圏内に本拠を置き、投資適格級の格付けを有し、銀行以外の業種である場合に限られ、社債がユーロ建てで発行され、特定の要件を満たしているという条件が設定されている。
社債発行の目的はECBが設定した要求基準には含まれていない。ECBは6月から社債の市場を介した購入と発行体からの直接購入を開始する。
このため理論的には、ECBはバイエルが発行する社債を購入することが可能となる。バイエルは23日、モンサント買収の資金を債券と株式の組み合わせにより調達する方針を表明していた。
ウニクレディトのクジジットアナリストグループはノートに「このような(社債発行の)案件で、どの程度が中央銀行により吸収されるかを見極めるのは興味深い」と記した。
ECBは借り入れコストを引き下げることによってユーロ圏の経済成長を支援するため、毎月800億ユーロ(900億ドル)相当の資産を購入している。
中銀の関係筋はロイターに対し、ECBが購入する社債で発行体が調達する資金が最終的に企業買収に充当されるのであれば、ECBの最初の選択にはならないだろうと述べた。
だが関係筋は、こうした状況であっても、仮に該当する業界やセクターが再編によって従来より効率的になり、株式市場に新風が吹き込まれるのであれば、明るい材料が見えてくるだろうと付け加えた。
さらに、仮に発行体が社債発行で調達したユーロ建て資金をドルに交換することになれば、ユーロの対ドル相場を押し下げることでユーロ圏経済を支援することにもなるという。
バイエルはS&P、ムーディーズ、フィッチの格付け機関3社からいずれも投資適格級の格付けを付与されている。だが3社ともバイエルがモンサント買収計画を打ち出したことを受け、格付けを引き下げる方向で見直すとしている。
ムーディーズは、バイエルのモンサント買収計画が実現すれば、バイエルの格付けを複数段階引き下げる可能性があるとしつつも、買収後のバイエルが投資適格級の格付けを失う事態にはならないとの見通しを示した。
(Francesco Canepa記者)
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