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アングル:女性巡る発言、批判収まらず 「身内」はそれでも森氏支持

[東京 9日 ロイター] - 「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」と語って波紋を広げてから約1週間、東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長の発言に対する批判が収まらない。トップアスリートや閣僚からも、女性蔑視で時代遅れだと非難の声が上がっている。

「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」と語って波紋を広げてから約1週間、東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長の発言に対する批判が収まらない。一方、国際オリンピック委員会(IOC)を含めた大会や政府・与党関係者の間からは、辞任を求める声は聞かれない。写真は4日の会見で、記者の質問を聞く森会長。 (2021年 ロイター/Kim Kyung-Hoon/Pool )

一方で、国際オリンピック委員会(IOC)を含めた大会や政府・与党関係者の間からは、辞任を求める声は聞かれない。影響力のある森会長がいなくなれば、今夏の五輪開催に黄信号が灯りかねないとみているためだ。

発言が物議を醸した翌4日、森会長は謝罪して撤回した。そのときの受け答え、さらにその後のテレビインタビューなどでの発言が新たな批判を呼んだ。

事態がいっこうに収まる気配を見せない中、複数の関係者によると、組織委員会の職員の間では、森会長が辞任をすれば東京五輪の実現が危うくなるとの見方が出ている。

ロイターの取材に応じた五輪関係者や与党関係者らは、政治家や五輪関係者との深いネットワークは東京オリンピック成功の鍵とみており、影響力のある森会長を追いやることにメリットをほぼ感じていなかった。

ある関係者は謝罪会見に臨む森会長に対し、「委員会側が発言内容を事前に準備し、辞任と言ってはいけないと森氏に伝えた」という。匿名を条件に取材に応じたこの関係者は、森氏は引き続き日本政府やIOC幹部の強い支持を得ているとし、「森会長を代えたところで、良いことがあるとも限らない」と話す。

IOCは森会長の謝罪を受け入れ、「この問題は終わった」との認識を示している。組織委員会は7日、森会長は発言を撤回し、深くお詫びと反省の意を表明したとの声明を発表した。

ロイターの質問に対し組織委員会は9日、7日のコメントに再び言及するかたちで「森会長の発言はオリンピック・パラリンピックの精神に反する不適切なもの」としたうえで、「引き続きコロナの状況にも注視しつつ、対策に万全を期し、安全安心第一の大会とするべく準備を進めていく」とメールで回答した。

IOCにもコメントを求めたところ、新たに出した声明に言及し、森氏の発言は「完全に不適切であり、IOCの誓約に反している」とした。その上で、「あらゆるレベルと組織において、スポーツにおける女性の地位向上を奨励し支援するミッションにコミットしている」と返答した。

森会長は6日の毎日新聞とのインタビューで、辞任を考えたが、踏みとどまるように説得されたと話した。「みんなから慰留された。今会長が辞めれば、IOCはかえって心配するし、日本の信用もなくなる」。

菅義偉首相は8日、森氏のコメントは国益にとって芳しいものでないと発言したが、森氏の進退に関しては「組織委で決めることだ」と述べるにとどめた。

<生き字引>

新型コロナウイルスの感染が世界的に収束しない中、1年延期された五輪の実現を目指す大会関係者にとっては、開催へのハードルがまた1つ加わった格好だ。

7月23日の開会式まで6カ月を切り、関係者は何千人ものアスリートを受け入れる対策づくりを急いでいる。東京五輪に関わる自民党幹部は森会長について「五輪の生き字引であり、この8年間のことを何から何までご存じだ」と指摘、森会長には政府関係者の強い支持があると説明する。

森氏の組織委会長としての強みは、元首相としての経験や与党内の実力者としての存在にある。この自民党幹部は「森さんあって、いろいろ回っている」と話す。

昨年の開催延期の決定を巡っては、森氏だけが知事や閣僚を動かす影響力を持っていたと多くの人が感じている、と組織委の中堅職員は指摘する。「会長がいなければできないのではないか、というのは組織委員会の中ではある感じがする」と語る。

ロイターが確認した組織委内部のメールのやりとりでは、森氏が乗り越えていけるよう組織委が「全力で守る」ことが大事、とある職員が指摘している。

ソウル大会の女子柔道で銅メダルを獲得し、日本オリンピック委員会(JOC)の理事を務める山口香氏は「森さんはアンタッチャブル(触れてはいけない)なんじゃないですか」と指摘する。

問題の発言があった3日の会議にオブザーバーとしてオンラインで参加していた山口氏は「IOCにとっては非常に簡単だと思うんですよ。独裁の人のほうが話早いですからね。森さんがオーケーといえばオーケーなんですよ」と言い、森氏を辞めさせるメリットはないのだろうと指摘した。

ロイターからの問い合わせにメールで返答したIOCのディック・パウンド理事は、森氏の発言についてに、「不幸なこと」だったとする一方、撤回されて彼は謝罪したとし、「この件についてはもういいだろう」とした。

五輪関係者などからのこうした支持にもかかわらず、世論は森氏の続投に疑念を抱いている。共同通信が6、7日に行った世論調査では、森氏が会長として「適任とは思わない」との回答が59.9%に上った。この夏の五輪開催は「中止すべき」と「再延期すべき」を合わせて8割以上が見直しを求めた。

組織委の一般職員もこうした世論に同調、森会長の発言はスタッフへの侮辱でもあると指摘する。

ある職員は森会長の謝罪会見の後、組織委のスタッフにも説明すべきだったと話す。別の職員は、IOCはもっと強い行動を起こすべきだったと指摘する。

メディアにコメントすることは許されてないとして匿名で語った組織委の女性スタッフは、「森氏の発言は東京五輪を成功させようと働いている女性への侮辱であり、女性スタッフは彼の謝罪を受け入れないと思う」と述べた。

複数の国内メディアは、森会長の発言をめぐり、組織委が週内にも理事会と評議員会による臨時の合同会合を開催する方向で調整に入ったと伝えている。

*9段落目にIOCのコメントを追加しました

竹本能文 斎藤真理 取材協力:山光瑛美 日本語記事作成:石田仁志 編集:田中志保、久保信博 

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