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再送:日銀が追加緩和を決定:識者こうみる

 [東京 5日 ロイター] 日銀は5日、金融政策決定会合で、政策金利を0─0.1%前後に引き下げるとともに、国債やCPなどの資産買入れのための基金創設を検討するなど、新たな緩和措置を決定した。市場関係者のコメントは以下の通り。

 10月5日、日銀は金融政策決定会合で、新たな緩和措置を決定した。写真は都内の日銀本店前で昨年2月撮影(2010年 ロイター/Yuriko Nakao)

● ポジティブサプライズ、量的緩和に近い方向

<三菱UFJモルガン・スタンレー証券 シニア債券ストラテジスト 長谷川治美氏> 

 日銀金融政策決定会合で決まった追加の金融緩和策の内容は、円債市場にはポジティブ・サプライズだ。「無担保コールレート(オーバーナイト)を0─0.1%前後に促す」という点は、ゼロ%を許容するということで、金利の低下余地が出てくる。「国債やCPなどの買い入れのためバランスシート上に基金創設を検討」、「基金の規模は買入資産5兆円程度で検討」という部分に関しては、量的緩和に近い方向に踏み出したということだ。資産買い入れでは国債も対象になっているので、実質的には輪番の増額に似ている。中長期債金利の押し下げに働くとみている。 

●サプライズ、当面はドル/円を下支え

 <みずほ証券グローバルエコノミスト、林秀毅氏>

 金融政策決定会合の結果はサプライズ。無担保コールレート(オーバーナイト)を0─0.1%前後に促すほか資産買い入れのため基金創設を検討することなどを決めた。ETFやJ─REITなども買い入れ検討対象になるようで、密度は濃い。

 ドル/円の下落は日米金利差の縮小が背景で、この政策によってドル/円を押し戻すのは難しい。しかし、当面の下支え効果は期待できそうだ。ドルの83円前後は堅くなったとして、決定会合の結果発表前の83.60円前後をキープできるかどうかがポイントになる。

●出来る限りの緩和策、日本より海外勢が評価か

 <マネックス証券 チーフ・エコノミスト 村上 尚己氏 >

 現時点でできる限りの緩和策を打ち出したという印象でマーケットにはポジティブな影響を与えそうだ。円高阻止についても、これまでは為替介入だけだったのが、金融緩和が加わることで効果が増すとみられる。米連邦準備理事会(FRB)よりも先に日銀が追加緩和に動いたことで、円高トレンドが変わる可能性もある。東京市場の反応はやや鈍いが、日銀の思い切った緩和策には海外勢の方が反応するかもしれない。市場では11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で追加緩和策がとられるとの見方が多いが、8日発表の9月米雇用統計などで数字が上振れすれば、米追加緩和観測が後退し、円安トレンドに転換、日本株にもポジティブな影響を与えるとの期待もあろう。

●量的緩和に向けた準備整う、政治的配慮が大きい 

 <東海東京証券 チーフエコノミスト 斎藤 満氏> 

 日銀はきょうの金融政策決定会合で金利を引き下げ、時間軸効果を見定め、バランスシートの拡大を表明したことで、量的緩和に向けた準備を整えた格好となった。米連邦準備理事会(FRB)がこれから着手しようとしていたことを先取りして実施したとも言える。

 今後の政策決定会合では、基金を通したバランスシート拡大の具体化が進み、日銀は量的緩和に突入していくだろう。その際、基金の規模がきょう示された5兆円程度では足りなくなり、その先は規模が拡大する可能性もある。

 動機面では、政治的配慮が占める部分が大きいとみている。日銀は政治サイドでくすぶるインフレ・ターゲット導入論を警戒しており、今回の措置によって、デフレに対して十分配慮している事を示した。

 為替や株式市場は日銀のアクションが予想以上だったことを好感しているもようだ。  

 日銀は無担保コールレート(オーバーナイト物)をゼロ―0.1%前後で推移するよう促すとしたが、補完当座預金の適用利率等は0.1%に据え置いていることに留意したい。これが金利低下面で一定の歯止めとなる可能性もあるだろう。

●時間軸は強烈、前回よりも厳しい条件

 <みずほインベスターズ証券 チーフマーケットエコノミスト 落合昂二氏> 

 無担保コール翌日物の誘導目標を0─0.1%程度に変更した。一部にはそうした声があったものの、実際にやるとは思わなかった。驚いた。ただ、補完当座預金の適用利率との関係を考えると、実際オーバーナイト金利がどこにいくのか、まだ良くわからない。

 一方、「中長期的な物価安定の理解に基づき、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで、実質ゼロ金利政策を継続していく」とした時間軸政策は強烈だった。注書きでは「委員の大勢は1%程度を中心と考えている」と書いてあり、これを展望できるまでとなると、前回のゼロ以上よりも厳しい条件になる。これはメッセージとしては強い。

 基金については、政府予算で言えば特別会計みたいなもので、バランスシート上にあったとしても一時的な時限措置ということを強調したいのではないか。ただやり過ぎると、ここから抜け出せなくなる。別枠管理はいいが、これを外すときは当分先か、あるいはもう外れないかもしれない。

●臨時措置扱いや長国残存期間等、随所に緩和拡大歯止め措置

  <日興コーディアル証券 チーフマーケットエコノミスト 岩下真理氏> 

 予想できなかったトリプル緩和措置となった。背景には、声明文で景気判断を下ぶれさせていることもあり、日銀の描いていた回復シナリオとのかい離を認めざるを得なくなったことことがあるだろう。しかも、従来のような新型オペの拡充だけでは何も変わらないという見方が市場で浮上していたことも背中を押したのだろう。

 資産買い入れのためのファンド創設は評価できるが、よくよく資料を読むと、随所にヘッジがかけられている。長期国債買い入れなどの措置は「臨時」の扱いだし、規模も3.5兆円では、介入資金の非不胎化を差し引けば大した規模ではない。また、長期国債などの残存期間も1─2年と短いものに限定している。これなら、量の観点からみれば新型オペ10兆円上乗せの方が効果が大きいとも言える。あまり大胆な緩和拡大を避けるような工夫が見え隠れしている。

 今回これだけのメニューを挙げてきたので、今月末の展望リポートの後で、対応が必要な場合に何をするのかと考えると難しいものがあるだろう。

●社債・CP買入れ検討、スプレッドのタイト化促す材料に

 <トヨタアセットマネジメント 投資戦略部 チーフストラテジスト 濱崎優氏>

 日銀が決定した事項が、想定していた以上に広範囲かつ前向きな内容となったことで、マーケットはポジティブ・サプライズに反応した。確かに米連邦準備理事会(FRB)が11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で追加緩和策を行う可能性があるだけに、円高圧力がそう簡単には収まらないことも含めて考えると、妥当な判断とも取れる。

 とくに、評価していいのは社債やCPなど買い入れのためバランスシート上に基金創設を検討したことで、かなり踏み込んだ内容になったといえる。リスク資産を買い入れることによって金融機関のリスクアセット上の資産に余裕ができ、金融機関は新たなリスクを取ることが可能になる。これが問題になっている中堅・中小企業の資金繰り対策につながる。

 クレジット市場には信用緩和に働くため、スプレッドのタイト化の要因になろう。格付けA、BBBなど中低位格企業のスプレッドのさらなるタイト化を促すことになるとみている。

●踏み込んだ印象、補正予算も加え景気回復軌道へ

 <ちばぎんアセットマネジメント顧問 安藤富士男氏> 

 日銀が声明文で、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで実質ゼロ金利政策を継続するとし、時間軸を明確化したのは、従来より踏み込んだ印象だ。インフレターゲットまではいかなかったが、ギリギリの線を打ち出したといえる。円高には当面歯止めがかかりそうだ。これから補正予算が成立すれば、国内景気の踊り場や二番底懸念は回避され、景気回復軌道に戻るとみている。

●ポジティブサプライズ、年末に向け日経平均1万円回復も

 <日興コーディアル証券 シニアストラテジスト 河田 剛氏>

 無担保コールレート(オーバーナイト)をゼロ─0.1%前後で推移するよう促すなど、市場の想定よりも踏み込んだ内容で、ポジティブサプライズだ。今後についても追加緩和に含みを持たせる内容で、日銀は現時点でできることをしたと評価している。為替介入を続けると欧米から圧力がかかり、円高対策として打つ手が限られてくることも背景にあったと思われる。緩和方向の米国に対抗したとの見方もできる。日銀は、これまでのような(保守的な金融政策にとどめていた)スタンスから転換したのではないか。

 追加緩和策を受け、市場は円安/株高に振れた。米追加緩和観測が強まっており、日経平均株価が短期的に1万円を回復するのは難しいが、年末にかけてある程度円高に歯止めがかかれば、1万円回復の可能性はある。ただ、やはり米景気の回復基調が鮮明となり、ドル売り圧力が弱まらないと、日経平均の1万円から上値を積極的に買う展開にはなりにくいとみている。

●バランスシート拡大姿勢は海外勢にアピール

 <大和証券投資信託委託 調査部 シニア・ストラテジスト 長野吉納氏>

 市場の予想以上の緩和策を打ち出したということで、評価できる。政策金利については無担保コール翌日物金利の誘導目標を0─0.1%程度で推移するように促す決定を行った一方、国債、CP、社債、指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J─REIT)など多様な金融資産の買い入れと、固定金利方式・共通担保資金供給オペを行うための臨時措置として、バランスシート上での基金創設の検討は、簡単にいえば「利下げ」と「バランスシート拡大」で非常にわかりやすく、特に海外投資家にアピールしそうだ。

 為替介入など流れが変わりつつある中での今回の追加緩和は、前回の臨時決定会合での急ごしらえのイメージとは違い、インパクトがある。株式市場での好感は一時的なものではなく、ある程度効果は持続するのではないかとみている。

●基金活用で量的緩和しやすい工夫

 <野村総研 金融市場研究室 主席研究員 井上哲也氏> 

 あらゆる要求を満たせるようなてんこ盛りの措置を出してきた一方で、きちんと歯止め策も用意している。ファンドの活用で、今後買入れ資産の中身や金額も増やせる余地を残している。金利もゼロ金利にしたことで、金利低下予測から応札しなかった人達も排除でき、資金供給量は増やせる。「量的緩和」という文言は意識的に避けているとみられるが、量的緩和を実施しやすいよう工夫されている。時間軸の明確化や信用緩和、長期国債買い入れなどを要求する声にもこたえており、誰から見ても満足のいくようなものを用意している。

●大胆な緩和策、欧米に円売り介入の正当性主張しやすく

 <シティバンク銀行 外国為替部チーフFXストラテジスト 高島修氏>

 「量」と「質」が伴い、時間軸効果も復活させる大胆な緩和策となった。今週末のG7で日本の介入に欧米の理解を求めようとするなら、ここで日銀がアクションを起こしておくことは重要だった。これで円売り介入を認めてほしいという日本側の口実は成り立ちやすくなる。現時点で介入が入りやすくなったとは言いづらいが、G7での理解は得やすくなったのではないか。

 この緩和策がすぐ直接的に円安効果を生むものではない。現在は米FRBの追加緩和も意識されている状況で、FRBの緩和方針に対して想定できることを先にやったということだろう。FRBの出方によっては日銀も緩和策を拡充していく可能性もあるとみている。

 今回の緩和策は、政府が打ち出した経済対策からの流れをセットで考えるべきだろう。閣議決定文書に「円高とデフレ対策」を明記し、菅首相の所信表明でも繰り返した。そのパッケージの中身が思っていた以上に踏み込んでいた事実は重要だ。

 ただ、この緩和策のみでは米国の緩和効果を相殺するのが精いっぱいだろう。現在の円高を止めるのは、87円台付近で強まる輸出企業のドル売り/円買いをどう吸収するかが鍵となる。そのためには介入が必要。今回の緩和策で欧米諸国から介入への了解が取れれば、日本政府・日銀はかなりよくやったといえる。

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