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コラム

コラム:ギリシャのデフォルト先延ばしはリスク高いギャンブル

 [27日 ロイター] ギリシャ政府はあり得ない状況から脱する必要がある。ギリシャは政府債務が管理不能な水準(GDPの150%で、今年も10%ポイント上昇する見込み)に達しているほか、経済は崩壊(今年のGDPは7%以上減少し、失業率は16%に上昇する見込み)し、国際収支は慢性的な赤字(現在はGDPの8%)が続き、支払い能力を失った銀行からは急速に預金が流出している。

 9月27日、ギリシャ政府はあり得ない状況から脱する必要がある。アテネで撮影(2011年 ロイター/John Kolesidis)

 ギリシャにとって、ソブリン債務のデフォルト(不履行)以外に道は残されていない。実際にデフォルトになれば、債務の元本は少なくとも50%削減されることになる。現時点では民間セクターが保有する債権の20%カットが計画されているが、それはデフォルトに向けた小さな第1歩にすぎない。

 ギリシャがデフォルトの後にユーロ圏を離脱すれば、新しい通貨を切り下げることが可能になり、需要を喚起し、いずれ貿易収支を黒字に転換させることもできる。そういった「デフォルト&デバリュー」戦略は、維持できないほど多額の政府債務や慢性的な経常赤字を抱えた国にとって標準的な手段だ。ギリシャがこれまでそうしなかったのは、ユーロ圏に加盟していたからにほかならない。

 市場は、支払い不能に陥っているギリシャがいずれデフォルトすることを完全に認識している。ギリシャの3年債利回りが最近100%を上回る水準まで急上昇したのはそれが理由だ。10年債利回りは約22%で、額面100ユーロの10年債は現在、14ユーロ以下の価値しかない。

 それなのに、ドイツやフランスの首脳はなぜギリシャのデフォルトを防ごうと(正確に言えば、先延ばししようと)しているのだろうか。その理由は2つある。

 第1は、ドイツやフランスの銀行や金融機関が直接的、あるいはギリシャや他のユーロ圏諸国の銀行に対する信用供与を通じ、ギリシャ国債に多額のエクスポージャーを抱えているためだ。デフォルトを先延ばしすれば、金融機関は、資本増強や満期を迎えた信用の引き揚げ、欧州中央銀行(ECB)への保有債券売却などを通じ、エクスポージャーを縮小する時間を稼ぐことができる。

 第2は、より重要な点だが、ギリシャのデフォルトが他国のデフォルトを招き、特にスペインやイタリアなどの銀行システムを揺るがすリスクがあるためだ。スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が最近イタリアの信用格付けを引き下げたことで、そのリスクが一段と高まった。

 スペインかイタリアのどちらかでもデフォルトを起こせば、ドイツやフランスの金融機関に深刻な打撃を与える恐れがある。欧州金融安定ファシリティー(EFSF)はギリシャの資金ニーズを賄うだけなら十分な規模があるが、スペインやイタリアが金融市場で資金を調達できなくなった場合に対応できるほどの能力はない。そのため、欧州の政治家は、ギリシャですらデフォルトを回避できることを示すことにより、市場からイタリアやスペインが妥当な金利水準で借り入れを継続し、国内銀行に資金供給できるという信頼感を得たいと考えている。

 今後数週間のうちにギリシャがデフォルトに追い込まれれば、金融市場はスペインやイタリアも同様にデフォルトの可能性があると考えるに違いない。そうすれば両国の金利が急上昇して国家債務が膨張し、債務返済が事実上不可能になりかねない。欧州の政治家はギリシャのデフォルトを2年間先延ばしすることにより、スペインとイタリアに財政を健全化する時間を与えたいと考えている。

 2年あれば、スペインの銀行が不動産価格の下落に対処できるか、あるいは住宅ローンのデフォルト増加で銀行破たんが広がり、スペイン政府が大規模な預金保証を行わざるを得なくなるかを見極めることが可能になる。さらに、最終的に中央政府が保証せざるを得ないスペイン地方政府の債務状況も明らかになるだろう。

 イタリアについても同じことだ。2年あれば、イタリア政府は財政収支の均衡を達成できるかどうかを市場に示すことができる。ベルルスコーニ政権は最近、税収を拡大し、2013年までに均衡財政を目指す財政法案を成立させた。もっとも、財政引き締めはただでさえほとんど成長していないイタリアのGDPを押し下げ、税収を減少させるため、均衡財政の実現は困難だ。そのため、2年間のうちに、循環的な調整ベースで財政均衡が達成できたかどうかに関する議論が行われるだろう。また、2年たてば、イタリアの銀行が多くの人々が懸念しているほど困難な状況ではないかどうかも判明しそうだ。

 2年後にスペインとイタリアが十分に健全であることが確認されれば、欧州の首脳は他国への波及を懸念せずにギリシャのデフォルトを容認できるようになる。ギリシャに続いて、ポルトガルもデフォルトに追い込まれ、ユーロ圏を離脱するかもしれない。

 しかし、大規模な国々は妥当な金利水準で自ら資金調達することが可能で、ユーロ圏は存続できるだろう。だが、スペインとイタリアが2年間に財政の健全性について市場の信頼を得ることができなければ、金利が急上昇し、政府や銀行が支払い不能に陥ることは間違いない。そうなれば両国もデフォルトを余儀なくされ、少なくとも一時的には借り入れができなくなり、ユーロ圏からの離脱に向けた強い誘惑に駆られることになろう。

 だが、それ以上に差し迫った危険もある。たとえスペインやイタリアのファンダメンタルズが健全だったとしても、2年間待ってもらえない可能性がある。ギリシャの金利水準は、ギリシャのデフォルトが近いと市場が考えていることを示している。ギリシャのデフォルト前からスペインやイタリアの債券利回りが急上昇し、財政が維持不可能な道のりをたどる可能性がある。欧州の政治家は、市場を欺くことがいかに危険な戦略であることを思い知らされるかもしれない。 

 (マーチン・フェルドシュタイン氏は米ハーバード大学経済学教授で、レーガン政権下で経済諮問委員会(CEA)委員長を務めた。全米経済研究所(NBER)元所長。)

(27日付プロジェクト・シンジケート配信記事を翻訳)

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