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コラム

コラム:オリンパス問題、資金グローバル化への監視は十分か

 田巻 一彦   

 10月26日、元社長の解任をきっかけにM&Aをめぐる問題に注目が集まったオリンパスの株価下落に歯止めがかからない。写真は20日、都内で撮影(2011年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

 [東京 26日 ロイター] 元社長の解任をきっかけにM&A(合併・買収)をめぐる問題に注目が集まったオリンパス7733.Tの株価下落に歯止めがかからない。

 事実関係をはっきりさせる情報が同社からないまま、株価は半値以下に下げ、株主の受けた打撃は大きい。証券取引等監視委員会が情報開示の適切性について、事実関係の把握を進めていることが26日に明らかになったが、同社に対する市場の疑念を払うに足る形で真相究明ができるかどうかはまだ見えにくい。 

 オリンパスをめぐる異常な事態は何を問いかけているのか。数多くある問題のひとつは、マネーがグローバルに展開する現在のマーケット資本主義において、日本の金融監督・捜査当局が機動的に不正を摘発する態勢を整えているのかという点だ。また、捜査当局の立件方針がはっきりしないと、積極的な報道展開をすることが少ない国内メディアの姿勢も問われるべきだろう。 

 <オリンパス株半値以下に、鈍い当局の対応> 

 オリンパスがマイケル・ウッドフォード氏の社長解任を発表したのが10月14日。15日にはウッドフォード氏が英紙のインタビューで、英医療機器メーカー買収で支払った6億8700万ドル(約770億円)に疑問があると指摘。今年7月の段階から総合情報誌でオリンパスのM&Aをめぐり不明瞭な資金の流れがあると報道されていたこともあり、17日から株価が大幅に下落し始めた。 

 オリンパスからは「すべてのM&Aは適正な手続きとプロセスを経たうえで、会計上も適切に処理し、実施している」とのコメントが出た。だが、具体的な説明はなく、大株主の日本生命や米投資ファンドのハリス・アソシエーツなども、M&Aに関する適切な情報開示を求めている。 

 26日には株価が一時、1088円と14日の半値以下となり、時価総額も3500億円以上が消し飛んだ計算になる。正確な情報を持たない一般株主は、適切な判断をする材料を提供されないまま、株価急落局面で放置されたかたちだ。監督・捜査当局に、何らかのアクションをとる余地はなかったのか。 

 米国の会計制度や法制度に詳しいある弁護士は、M&Aをめぐるフィナンシャル・アドバイザー(FA)への手数料は、報道されている内容が事実なら法外に高く、取締役会が善管注意義務を怠ったとして、米国では集団の株主代表訴訟が提起される可能性が高いと指摘する。この部分は日本でも同じ法的枠組みであるため、海外の株主から代表訴訟が提起される可能性があるだろうとの見通しを示していた。 

 米連邦捜査局(FBI)は、英医療機器メーカーを買収した際のFA手数料・6億8700万ドルの資金の流れについて調査を開始した。米国への資金流入に関し、事実関係を解明することが目的と見られているが、オリンパスの本社所在地でない米国の捜査当局としては、迅速な対応と言える。 

 これに対し、証券取引等監視委員会が情報開示の適切性について、事実関係の把握を進めていることが明らかになったものの、事態の解明がどこまで進むかは不透明だ。東証は26日、ガバナンスが疑われる上場会社に対し、正確な情報開示を求めるとともに、独立した外部組織による事実究明を要請した。しかし、14日の元社長解任発表から12日も経過した上での対応であり、日本の当局が今回の事態究明に向け積極的に対応するという意思を明確に示していないのは、米当局の動向と比較しても“腰の重さ”を内外に印象付けている。  

 <当局が立件しない案件、国内メディアの低調な報道目立つ> 

 国際的な資金の流れを把握することは、金融当局でも難しいと言われている。まして犯罪の嫌疑がある取引の実態を把握する行為は、相当に高いハードルが待ち構えているのは当然かもしれない。しかし、経済法規を犯した行為を見逃していれば、脱法行為を繰り返した者が巨万の富を得て、まじめに額に汗して働いた者の不公平感を増長しかねない。 

 仮に今回オリンパスに対して指摘されている「疑惑」が株主などに説明されないまま、事態が幕引きとなったら、どうなるか。グローバルに動き回る投資マネーを捕捉する難しさを勘案したとしても、当局による監督・規制、あるいは捜査能力が今のままで十分か、という議論は残るだろう。オリンパスによるM&Aに関連した資金の一部がケイマンを経由していると報道されている。ケイマン経由のマネーの実態を把握するために、日本の金融監督・捜査当局は海外にしっかりとした態勢を確保しているのだろうか。 

 また、今回のケースは、経済スキャンダルなどに関する報道の在り方も問いかけている。日本での特徴として、事件性の疑われる案件については、捜査当局の動向と報道の量が正比例するように変化する、という傾向がある。 

 田中角栄元首相が逮捕・起訴されたロッキード事件以降、日本国内でも欧米並みの調査報道のスキルが蓄積され、社会の公正を目指す報道の姿勢に変化が出てきたと言われていた。しかし、最近のライブドア事件などをみてわかるように、逮捕者が出るような事件になった場合は、あふれかえるほどのニュースが報道されるが、当局が立件しない事案では、積極的な報道展開が少ない。オリンパスのM&Aをめぐっては、26日に毎日新聞と産経新聞が、資金の流れの不透明性について取り上げたのが目立つ程度で、他の全国紙は大きく扱っていない。 

 金融監督・捜査当局が対応を始めていなくても、今回のように大企業の株価が大きく下落し、社会的な影響が広がると予想されるケースでは、メディアは自社の調査能力を最大限に発揮して、真相の解明に近づく努力をするべきだろう。ロイターだけでなく欧米のメディアが、日本のメディアに先行して大きくこの問題を取り上げているのは、そうした問題意識があったからだと思う。 

 もし、オリンパスをめぐる問題で、解明されていない事実が存在するなら、1日も早く明らかになることを希望する。同時に日本の当局が経済犯罪に対し、厳正に対応する能力を一段と強化させることも望みたい。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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