[東京 3日 ロイター] 3日午前の東京外国為替市場で、ドル/円が一時100.04円まで上昇。昨年11月4日以来、5カ月ぶりに100円台を回復した。市場関係者のコメントは以下の通り。
●楽観論台頭でクロス円が上昇、厳しい現実とのギャップも
<みずほコーポレート銀行 シニア・マーケット・エコノミスト 福井真樹氏>
為替市場は、株価の上昇と政策期待を織り交ぜた楽観論が、まずクロス円の上昇を主導し、ドル/円の上昇にも結びついている。しかし、実体経済面では厳しさが残っており、この厳しい現実をどういうタイミングで市場が確認するかが、今後の相場動向を左右するだろう。
早ければ今晩の米雇用統計で確認する機会があるかもしれないが、足元の政策対応期待でかき消される余地もあり、投資家マインド次第ということだろう。
前日ユーロが対ドルで大幅に買い進まれたが、現在は金利差で全てが語れる状況ではなく、政策を小出しにしている印象も拭いきれない。現状ではネガティブな材料が出た通貨が売られやすい環境で、円は現在もGDPのマイナス成長、生産、輸出の落ち込み等の材料に上値を抑えられている。ユーロ・サイドでもネガティブな材料に注目が集まればトレンドが変わる可能性がある。
●北朝鮮リスクで投機筋による円の買い戻しに遅れ
<東京都民銀行 シニア為替アドバイザー 角田秀三氏>
為替市場では、円について北朝鮮リスクが意識されているため、投機筋によるクロス円、ドル/円の利食い(円の買い戻し)のタイミングを遅らせている。
朝方ドルは5カ月ぶりの高値となる100.18円まで上昇したが、高値では輸出等の実需のドル売りに押され、99.60円付近まで反落した。ただ、ドル/円の下方調整は、投機筋のロングの投げが本格化していないため、中途半端なものだ。
例えば、週末中に北朝鮮のミサイル発射問題がなんらかの形で収束し、今夜の米雇用統計も予想通り弱いものであれば、週明けには株価が下落し、クロス円、ドル/円が利食われる可能性がある。
また、金融市場で台頭する楽観論と現実のギャップを無視して株価が上昇するようなら、クロス円とドル/円での円安が進行するだろう。しかし、円安の持続性には疑問があり、慎重に臨みたい。
●クロス円主導のドル100円乗せ、上値メド101円後半
<ソシエテ ジェネラル銀行 外国為替本部長 斎藤裕司氏>
ドル/円はいったん100円を抜けたが、けん引役になったのはユーロ/円だろう。米国で時価会計基準が緩和されたことが短期的には金融機関財務にプラスに働くとの見方が株価を押し上げ、リスク許容度を高めた。IMFの資金基盤強化で東欧リスクが後退するとの期待もあって欧州中央銀行(ECB)の利下げが0.25%にとどまったことに対する失望も打ち消され、ユーロ/円が上昇したことがドル/円に波及した。
テクニカル面から、当面のドルのターゲットは101円後半。ただ、今後どんどんドル高/円安が進むというよりは、レンジ取引を予想している。きょう発表予定の米雇用統計も内容は悪いと予想されており、対円でドルは買いにくくなる。
●ドル高/円安の流れ続く
<ステート・ストリート銀行 金融市場部長 富田公彦>
日銀短観でも明らかなように日本経済の急速な悪化で海外機関投資家による株式をはじめとする日本売りは続いている。このところのリスク許容度の高まりで動き出した資金は新興国に向かっており、海外勢の日本への信頼は戻っていない。むしろ、海外勢はこれまで積み上げてきた日本株などのポジションを落としたいという意向を持っており、これが円売りのフローになっている。
また、海外投資家は3月のはじめくらいから、以前構築した円買いポジションの解消にかかっている。平均コストは98円程度とみられ、100円前後の現在の水準にドルが上昇すると損切りのための円売り/ドル買いへのインセンティブが高まる。これもドル/円の上昇を支えそうだ。このところのリスク許容度の高まりは、対他通貨では逃避通貨としてのドルにとっては弱い材料だが、対円でみるならドル高/円安の流れが続きそうだ。