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ドル/円はリスク織り込み進みレンジ取引=来週の外為市場

 [東京 17日 ロイター] 来週の外為市場では、ドル/円は現在の水準をはさむレンジ取引が予想されているが、株価の上昇に一服感が出ていることからユーロはレンジを切り下げるとみられている。

 4月17日、来週の外為市場では、ドル/円は現在の水準をはさむレンジ取引が予想されている。写真は為替ディーラー、都内で6日撮影(2009年 ロイター/Yuriko Nakao)

 米金融機関や米自動車メーカーの動向は引き続き市場の注目を集めているが、一方でリスクの織り込みも進んでいるとみられ、当面の為替の反応は限られる可能性が大きいという。24日にはワシントンで7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)と20カ国・地域の財務相・中銀総裁会議(G20)が開催されるが、G20金融サミットの後だけに注目度はそれほど高まっていない。

 予想レンジはドル/円が98.00―101.50円、ユーロ/ドルが1.29―1.34ドル付近。

 <米自動車メーカーと米金融機関に引き続き関心>

 株価が高値もみあいの局面に入ってきたほか、米自動車メーカーや米金融機関の動向をにらんで「ドル/円は現在の水準でのレンジ取引になる」(ソシエテジェネラル銀行外国為替本部長、斎藤裕司氏)との声が聞かれる。

 米ゼネラル・モーターズ(GM)GM.Nのヘンダーソン最高経営責任者(CEO)は、17日に同社のリストラ策について記者会見を開く。会社の状況や決定、行動に関する見通しを示す最初の機会になるとしている。ただ、市場は事前調整型の連邦破産法11条適用を織り込みつつあり「部品メーカーの連鎖倒産や米雇用への影響など2次的なインパクトが具体的になるまでは為替への影響は限られる」(ドイツ証券シニア為替ストラテジスト 深谷幸司氏)とみる声が上がっている。米クライスラー[CBS.UL]もフィアットとの提携交渉期限が4月末まであるため、20日の週の相場に与える影響は限られそうだ。

 一方、米金融機関をめぐっては、17日にシティグループC.N、20日にバンク・オブ・アメリカ(バンカメ)BAC.Nと、注目度の高い米金融機関の決算発表が続く。為替市場ではリスク回避の動きが強まるかどうかがポイントになるが、時価会計ルールの緩和もあり「それほど悪い決算にはならないのではないか」(邦銀)との見方が広がっている。

 決算内容次第で株価が下落するようならリスク回避の動きが強まりそうだが、無難に通過できれば市場の関心は米政府による健全性審査(ストレステスト)に移りそうだ。5月4日のストレステスト(健全性審査)の結果公表に先立って、24日に審査の前提などに関する文書が公表される見通し。この文書は、審査に用いた手法などについて説明するもので、結果を解釈する上での指針となる。これを受けて金融機関の健全性について市場に懸念が広がるようならリスク回避の動きが出てくる可能性があるほか、公的資金注入観測が出れば希薄化による株価の下落を招き、やはりリスク回避につながりそうだ。

 ただ、ストレステストの結果公表後、資本増強が必要と判断された銀行には6カ月の猶予が与えられ、民間セクターからの資本調達を図る。調達できなければ公的資金が注入されることになるが、時間的な余裕があるほか公的資金注入によって金融システムリスクが遮断されるため、リスク回避のマグニチュードには限度があるとみられている。

 24日にはワシントンで7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)と20カ国・地域の財務相・中銀総裁会議(G20)が開催される。議長はいずれもガイトナー米財務長官。

 世界の為替や株式市場がやや落ち着きを取り戻しつつあり、政策を催促する相場になってはいない。G20金融サミットのあとでもあり「政策協調で新たな動きが出るとは考えにくい」(ソシエテジェネラル銀行外国為替本部長 斎藤裕司氏)との声も聞かれ、リスク意識の急激な高まりがなければ大きな材料にはならないとみられている。

 <ユーロは対ドル、対円で弱含み>

 ユーロは、株価の回復上昇トレンドが不確かになってきたこと、および海外投機筋がユーロの売り仕掛けを試みていることなどを背景に、弱い地合いが続きそうだ。

 3月から続いてきた世界的な株価回復と円安という流れに陰りがみえるなか、過去2週間で最もアウトパフォームしたのは円だった。JPモルガン・チェース銀行のシニア・ストラテジスト棚瀬順哉氏は「株の上値が重く、ドルと円が底堅いという流れが続くことが想定され、ユーロはG3通貨のなかで最も弱くなるだろう」とし、20日の週のユーロの下値メドは1.2800ドルと予想している。「現状で、ドルや円の対極にあるのは、スウェーデンクローナなどで、ユーロはミドル圏にあり独自の方向感があるわけではない」と棚瀬氏は言う。

 17日の東京市場では、来日中のトリシェ欧州中央銀行(ECB)総裁が東京での講演で、「5月7日に非標準的措置について決定する」と述べたことをきっかけに、ユーロが1カ月ぶりの安値1.3065ドルまで下落した。

 しかし、複数の講演参加者によると、トリシェ総裁の講演内容は目新しいものがなく、むしろ強調していたのは、出口戦略やインフレ率の管理だったという。総裁は「目先の政策と出口戦略のバランスを取る必要がある」とし、「目先のニーズと長期的持続可能性の適切なバランスを維持する必要がある」と強調し、インフレ率管理の重要性を強調する姿勢をみせた。

 「(トリシェ)総裁は、ユーロを売らなければならないような事を一言も言っていないが、きょうに限らず、投機筋はユーロ売りに傾いている」(運用会社ファンドマネージャー)という。 

 (ロイター日本語ニュース 松平陽子)

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