[フランクフルト 15日 ロイター] - ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁は15日、ユーロ圏の景気は勢いを増し回復の裾野も広がっているとの認識を示す一方、3月から開始した量的緩和(QE)プログラムを縮小、短縮することはないとして、完全実施すると表明した。
市場では、ユーロ圏に景気回復の兆候が出ていることを受けて、ECBがいずれかの時点で資産買い入れを縮小するのではとの観測も浮上していた。
総裁はプログラム開始後1カ月で縮小との見方が出ていることに驚いていると指摘。
「われわれの焦点は、金融政策措置を完全実施することにある」とし、「買い入れは2016年9月末までの実施を意図しており、またインフレの道筋において、中期的に2%弱の目標に整合する水準に向け持続可能な調整が見られるまで続ける」と言明した。
またQEを通じて「経済見通しの一段の改善や、経済のスラック(需給の緩み)縮小、マネー・信用の伸び回復に寄与していく」とし、「景気回復は緩やかに力強さを増し、裾野も広がる」との見方を示した。
この日の理事会後の会見では、「ECBの独裁を阻止せよ」と叫ぶ女性が会場に乱入し、一時中断する場面もあった。
その女性はドラギ総裁に詰め寄り、紙吹雪のようなものを投げつけた。ドラギ総裁はその瞬間、手を上げて身を守ったが、取り乱す様子もなく、すぐに冷静な態度で会見を再開した。
ECBは予想通り、主要政策金利であるリファイナンス金利を0.05%に据え置いた。
上限金利の限界貸出金利も0.30%に、下限金利の中銀預金金利もマイナス0.20%に据え置いた。
ドラギ総裁は、中銀預金金利をこれ以上引き下げることはないと述べた。ECBは現在の中銀預金金利と同じマイナス0.2%を下回る利回りの国債は買い入れない方針を示しており、買い入れ対象の国債利回りの下限となっている。
<ギリシャ銀は支払い能力ある限り支援>
ギリシャへの支援については、政府の対応にかかっているとの認識を示した。
一方で、ギリシャの銀行に対する流動性支援を近く打ち切る見込みもないとした。
関係筋によると、ECBはギリシャの銀行に対する緊急流動性支援(ELA)の上限を740億ユーロに拡大した。
ドラギ総裁は「われわれはELAを承認した。ギリシャの銀行に支払い能力があり、十分な担保を保有している限り、銀行への流動性支援の供給を継続する」とした。ELAに終了日はないとも語った。
ギリシャのデフォルト(債務不履行)の可能性について問われると、総裁は「考えたくもない」と答えた。
<QEは奏功>
ドラギ総裁は「資産買い入れプログラムの実施は円滑に進んでいる」と指摘。「金融政策措置が効果的である明確な証拠が存在する。過去数カ月に金融市場の状況、民間セクターの資金調達コストは著しく緩和された」として、QEが奏功しているとの認識を示した。
ただQE開始で国債価格はすでに上昇しており、投資家の間ではコスト高でECBがドイツなど高格付け国債を十分に買い入れることが困難になるのではないかとの懸念も出ている。
これに対し総裁は、買い入れ対象の国債は豊富にあるとし、「われわれのプログラムは、状況が変わっても柔軟に対応できる」と強調した。
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