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アングル:ギリシャ協議合意でも問題はIMF返済資金の捻出

[ブリュッセル 22日 ロイター] - もしギリシャが今週、凍結されている支援資金獲得のための改革実行を土壇場で受け入れて債権団との協議がまとまったとしても、月末までに国際通貨基金(IMF)に対する16億ユーロ(18億ドル)の債務返済資金を実際に手に入れる必要がある。

 6月22日、もしギリシャと債権団との協議がまとまったとしても、同国は月末までに、IMFへの債務返済資金16億ユーロを捻出する必要がある。「ユーロの死」と題した壁画の前を歩く男性、アテネで先月撮影(2015年 ロイター/Alkis Konstantinidis)

債権団の間ではこの返済資金を具体的にどう用立てるかをめぐり、ボールの押し付け合いが繰り広げられている。

ギリシャがIMFに耳をそろえて借金を返せない場合、デフォルト(債務不履行)が宣告され、預金取り付け騒ぎを防ぐために資本規制が導入されて、同国はユーロ圏離脱に近づくことになる。

ただユーロ圏各国政府によると、凍結中の72億ユーロの支援資金の支払いを月内に実行するには、もう遅すぎる。ギリシャが約束した改革実施のための法案を成立させない限り、各国議会が支払いを承認しないからだ。

もう1つの迅速に資金を供与できる手段は、欧州中央銀行(ECB)がギリシャ政府による国内銀行などへの短期国債売却枠の上限を引き上げることだ。チプラス首相は再三にわたり、ECBのドラギ総裁にそうしてほしいと訴えてきた。

しかしECB理事会内でドイツ連邦銀行やその同調者たちから強硬に反対されているドラギ総裁は、短国売却枠引き上げを認めるとすれば、ユーロ圏各国から凍結した支援資金が確実に支払らわれる場合のみだと表明している。

となればやはり月末には間に合わない。

そこでギリシャにIMF債務返済資金を用立てる残された方法は2つしかない。1つはECBが2010─11年に証券市場プログラム(SMP)に基づいて購入し、保有しているギリシャ国債から生じた利益の19億ユーロの活用。別の1つはギリシャの銀行資本増強のために設立されたギリシャ金融安定基金(HFSF)で使われていなかった109億ユーロだ。

欧州連合(EU)関係筋によると、これらの資金はどちらも事前に各国議会の承認を得なくても、ユーロ圏財務相会合で全会一致の合意が得られれば、ギリシャへの支払いが可能になる。

<厳しい条件付き>

複数の外交筋は、2つを比べるとECBのSMPで生じた利益が使われる可能性が大きいように思われると述べた。

その理由は既に2012年に、救済プログラムが完了した場合にギリシャに還元すると約束されている上に、ギリシャ政府に歳出方針を変更させない程度で資金繰りをつけさせる金額だからだ。

一方でHFSFで未使用だった109億ユーロについては、ギリシャが今年になって所有権を主張したものの、チプラス氏の反緊縮姿勢に憤慨したユーロ圏各国がいったん返還させた経緯がある。ユーロ圏側の主張は、これは銀行の資本増強の資金で、財政のやりくりが目的ではないというものだった。

2月に各国が合意した声明によると、いずれの資金の支払いにも厳格な条件が付いている。

理論的には2014年分のSMPの利益の移管は、支援状況に関する審査結果がIMFとECB、欧州委員会に認められ、ユーロ圏財務相会合の承認を受けることが条件になっている。

HFSFの資金支払いは、ECBと傘下の銀行監督部門の要請が必要になる。

EU当局者は、凍結されている支援資金の一部も、ギリシャが改革措置の立法化に取り組む意思があると証明するような「先行的な行動」を終えた段階で、支払うことが可能だとの見方を示した。

そうなれば7月と8月に満期を迎えるECB保有のギリシャ国債の償還資金も得られるだろう。

支援協議に詳しいある関係者は「合意が成立しても、誰かがギリシャのIMFに対する返済資金を捻出しなければならない。だがすべての機関がお見合いしながら『どうぞお先に、いやあなたこそどうぞ』と言うばかりだ」と嘆いた。

(Paul Taylor記者)

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