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ECBが国債購入の用意表明、救済基金稼動など条件に

[フランクフルト 2日 ロイター] 欧州中央銀行(ECB)は、2日に開催した理事会で、スペインやイタリアの借り入れコスト押し下げに向けて、国債買い入れを再開する可能性を示唆した。しかし、国債買い入れ再開に厳格な条件をつけたことや、バイトマン独連銀総裁が異議を唱えたことを受け、市場では一部、失望感が広がっているようだ。

8月2日、欧州中央銀行(ECB)は、主要政策金利であるリファイナンス金利を0.75%に据え置いた。写真はフランクフルトのECBで7月撮影(2012年 ロイター/Alex Domanski)

ドラギECB総裁は、理事会後の会見で、流通市場におけるイタリア、スペイン国債の買い入れに向け準備を進めていると明言する一方、ユーロ圏政府がまず救済基金を利用することが前提になると述べるなど、ECBの買い入れに条件を付ける考えを示した。

ECBによる市場介入は、当該国が要請し厳格な条件および監督を受け入れることが必要になると説明した。開始時期は早くて9月になるとの見方を示した。

ドラギ総裁は「中期的な物価安定維持の責務の範囲内で、また金融政策決定の独立性に基づき、目標達成のために適切な規模の公開市場操作を実施する可能性がある」と言明。さらに「金融政策の波及を改善するために何が必要かを踏まえて、追加の非標準的措置の実施について検討する。今後数週間で、そのような政策措置に関する適切な手順を策定する」と語り、非不胎化による国債買い入れ(量的緩和)の可能性に含みを残した。

今回の決定に際しては、理事会メンバーのバイトマン独連銀総裁が国債買い入れに関し留保する考えを表明、孤立して異議を唱える格好となった。

ECBは今回、主要政策金利であるリファイナンス金利を0.75%に据え置くとともに、下限金利の中銀預金金利もゼロに、上限金利の限界貸出金利も1.50%にそれぞれ据え置いた。

総裁は、利下げの可能性については理事会で討議したものの、今はその時でないと全会一致で決定したと述べた。

ドラギ総裁の会見後にロイターが実施した調査によると、50人近いエコノミストのうち大半が、ECBは9月にイタリアとスペインの国債買い入れを開始し、政策金利を0.50%に引き下げる、と予想した。

投資家や欧州首脳、米国などからECBに対応を求める声が相次ぐなか、ドラギ総裁に対する風当たりは強まっている。総裁は前週、ユーロを守るためにあらゆる手段を講じると発言している。

ECBが迅速な行動を見送ったことやECBの行動に条件が付いたこと、さらにバイトマン独連銀総裁が留保を表明したことを受け、市場では不安が広がり、株安・ユーロ安の展開となった。スペイン、イタリア国債利回りは上昇し、スペイン国債利回りは7%を突破した。

ナイト・キャピタルのストラテジスト、ヨアン・スミス氏は「かなり失望した」とした上で、「あらゆる行動に欠けており、ドラギ総裁は再び政治家に責任転嫁したも同然だ」と語った。

ジェフリーズのシニアバイスプレジデント、マルセル・アレクサンドロヴィチ氏は「ドラギ総裁が示唆したのは、債券市場の問題が極めて深刻にならなければ、ECBは助けない、ということだ」と話している。

モニュメント証券のストラテジスト、マーク・オズワルド氏は「驚くことではないが、ドラギ総裁はまたもや抽象論ばかりを並べ立て、具体的な行動は何一つ示さなかった」と指摘。「『1人は留保したが全会一致で決定した』というのは、オリンピック選手が1人に負けたものの金メダルをとったと言っているに等しい」と述べた。

ドラギ総裁は、ECBの3つの委員会が今後、介入の詳細な方法について検討し、実施するかどうかの決定は、のちほど下す、としている。

ECBは今年のギリシャ国債再編では参加を拒否し、民間投資家より優位な立場を維持した。こうした経緯を踏まえて総裁は、ECBが国債買い入れを行う場合は、ギリシャ国債再編時に広がったような投資家の懸念を緩和するようにしたい、と述べたが、具体策には触れなかった。

ECBは2010年5月以降、証券市場プログラム(SMP)の下で国債買い入れに2100億ユーロを投じているが、その効果は限定的となっている。

ドラギ総裁は、ECBが今後講じる追加措置は期間が短めの債券が対象になるとした上で、いかなる場合でも、まずユーロ圏政府が救済基金を利用することが前提になると言明した。

「金融市場の異例の状況や金融安定へのリスクが存在する場合に、欧州安定メカニズム(ESM)や欧州金融安定ファシリティー(EFSF)を債券市場で活用する用意を各国政府は整える必要がある。実施には時間がかかり、金融市場は成功することが明確になってからでないと適応できないからだ」と説明した。

理事会の結果を受け、イタリアのモンティ首相は「いく分進歩がみられた」と述べる一方、イタリアが国債利回り低下に向けEUに支援要請すると考えるのは時期尚早で、現時点でそうした意思はないと発言した。

スペインのラホイ首相も、ECBの決定は前向きとしたものの、スペインに支援要請を行う意向があるかについては明言しなかった。

<バイトマン独連銀総裁は異議>

国際通貨基金(IMF)は、ECBが行動に前向きな姿勢を示したことを歓迎。高官は「金融政策だけでユーロ圏が直面する問題を解決することはできないが、他の政策対応とともに追加金融緩和や非伝統的措置が打ち出されれば、緊張緩和に向け効果を発揮するはずだ」と述べた。

ドラギ総裁はユーロについて、「不可逆的」で「リラ」や「ドラクマ」に戻ることはないとした上で「ユーロの下落に賭けるのは無意味だ」と語った。

今回のECB理事会は、目先の措置を打ち出さなかったという点で、前日の米連邦公開市場委員会(FOMC)に似ている。FOMCは追加緩和を見送る一方、景気回復の勢いは今年これまでに失速した、との認識を示し、今後債券の追加買い入れを行う可能性をより強く示唆した。

法律的な観点から見た場合、ECBがユーロ圏政府に代わって資金調達を行うことは規則によって禁じられている。ESMに対しECBの融資を通じて基金能力を拡大する権限を付与することの是非について、ECBは過去に否定的な見解を示しており、ドラギ総裁もこの点に言及した。

さらに、ECBが行動に踏み切るにはドイツの壁を乗り越える必要がある。独連銀は国債買い入れといった非標準的措置に伴いインフレ高進の恐れがあるといった考えを主張している。

総裁は、1人以外の理事会メンバー全員が2日の声明を承認したと述べ、バイトマン独連銀総裁が異議を唱えたと明らかにした。反対したメンバーを名指しするのは極めて異例で、ドラギ総裁がドイツの反対を押し切ってでも行動する用意があることを示したと受け止められている。

ドラギ総裁は「ユーロを安定した通貨として維持していくために必要なあらゆる措置を講じていくとの決定は全会一致によるものだ」とした上で「バイトマン独連銀総裁と独連銀が国債買い入れプログラムに疑念を抱いているのは周知の事実だ」と指摘。さらに「われわれにはガイダンスがあり、金融政策・リスク・市場委員会はこのガイダンスにのっとり、最終決定を下し、採決が行われる」と説明した。

過去、独連銀総裁と共に反対に回ったオランダやルクセンブルクの中銀総裁、およびドイツ出身理事は今回、独連銀総裁に同調しなかった。

*内容を追加して再送します。

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