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日銀追加緩和決定、資産買い入れ基金5兆円増額:識者はこうみる

[東京 27日 ロイター] 日銀は27日に開いた金融政策決定会合で、資産買入基金による長期国債の買い入れ額を10兆円拡大するとともに、上場投資信託(ETF)を2000億円、不動産投資信託(J─REIT)を100億円それぞれ増額する追加金融緩和を決定した。

4月27日、日銀は金融政策決定会合で、資産買入基金による長期国債の買い入れ額を10兆円拡大するなどの追加金融緩和を決定した。写真は日銀本店。昨年10月撮影(2012年 ロイター/Yuriko Nakao)

市場関係者のコメントは以下の通り。

●安心感誘う、継続的株買いには円安必須

<大和証券 投資戦略部 部長 高橋和宏氏>

国債買い入れ基金の増額を10兆円としたほか、国債・社債の年限を2年以下から3年以下に延長し、市場の安心感を誘った格好だ。また事前に予想されていなかったETF(上場投資信託)やREIT(不動産投資信託)の買い入れ増額はサプライズとして受け止められるだろう。

ただ2月のバレンタイン緩和のように中期的な株価上昇になるかは不透明。ETF買い入れは下値を支える程度で、株価の押し上げ要因にはなりにくい。株価上昇には外為市場での円安進行が必要で、引き続き外部要因にらみの展開を想定している。

●長期国債買い入れはマイルドな増額

<三菱UFJモルガン・スタンレー証券 シニア債券ストラテジスト 長谷川治美氏>

日銀は追加緩和を決定し、基金は5兆円増額だが、長期国債買い入れは10兆円増額となった。国債の買い入れ対象年限も3年へ延長された。ただ、基金買い入れ期限が今年12月末から半年延長されるため、長期国債買い入れについては10兆円増額だが、月額の買い入れ額は今の1.5兆円から1.6兆円程度と比較的マイルドな増額になった。日銀としても国債マーケットをゆがめることがないように慎重に配慮した結果だと受け止めている。

期待インフレ率を押し上げるという意味で、長期国債買い入れにとどまらず、今回は指数連動型上場投資信託受益権(ETF)、不動産投資信託(J─REIT)などのリスク性資産の買い入れも拡大した。

2月の実質的なインフレ目標導入のあと、市場の緩和期待をコントロールすることが難しくなっている。政治的な圧力もあり、今後はコミュニケーション戦略についても熟慮して行く必要があるとみている。

ETF買い入れが増えたことで、株にはプラスに働いている。債券市場では、月額の買い入れ額がさほど大きくないため、金利の低下効果は小さそうだが、失望売りは回避されているようだ。

●現実的な選択、基金の再増額も視野

<東短リサーチ・上席研究員 飯田潔氏>

日銀は追加緩和に踏み切り、現実的な選択をした。資産買入等基金の規模を5兆円増額。札割れが相次ぐ固定金利オペの規模を5兆円減らす一方、長期国債に加えて、ETFなどのリスク資産買い入れを増やした。資金需要に乏しい資産への供給を減らして、市場動向に配慮して割り振りを修正した。短期金融市場では、すでに資金余剰感が強いため、目立った影響はない。

日銀は今後、「中長期的な物価安定の目途」である消費者物価の前年比1%を目指して、さらなる緩和に踏み切る可能性がある。再び基金の増額が視野に入ってくるだろう。

●社債の期間延長に意外感、買入オペの札割れ回避も

<三井住友海上あいおい生命 経理財務部部長 堀川真一氏>

日銀は27日の金融政策決定会合で、資産買い入れ等基金による社債買い入れオペの対象期間を「1年以上2年以下」から「1年以上3年以下」に延長したことは、これまで報道されていなかったこともあって、意外感がある。マーケットは国債の買い入れ延長は想定していたが、社債まで踏み込むとは思っていなかったはずだ。前回の社債買い入れオペで大きく札割れしたこともあって、それに対応した可能性が高い。

社債買い入れオペの対象が広がることで、札割れが回避される可能性が高まる。ただ、銘柄そのものの範囲が拡大するわけではないため、社債市場の需給が大幅に引き締まるところまでには至らないとみている。

●期待封じ込めの印象、物価1%展望言及で時間軸短期化も

<クレディ・スイス証券 チーフエコノミスト 白川浩道氏>

緩和を強く求め続けるマーケットの期待をこれで封じ込めたい意図が感じられる内容だ。長期国債買い取り10兆円増額や他の資産買い取り、買い取り対象国債の残存年限の延長に加えて、「展望リポートの見通し期間後半にかけて物価1%上昇に遠からず達する可能性が高い」と打ち出したことにそれを感じる。つまり、今回の措置をもってデフレ脱却に自信が持てると言っているようなものだ。2014年には利上げ方向にアクションをとらないわけではないことも示唆し、時間軸はかえって短くなるような印象を与えている。このあと発表の展望リポートで、2014年度以降も緩和を続けることを丁寧に説明するかしないかが、1つの注目点だ。

●予想以上の規模だが、今後の緩和不要と読める文言も

<大和住銀投信投資顧問 経済調査部長 門司総一郎氏>

予想以上に大きな規模の追加緩和となった。特に、指数連動型上場投資信託受益権(ETF)や不動産投資信託(J─REIT)などのリスク性資産の買い入れ増額は必ずしもコンセンサスとなっていなかっただけに、株式市場にはポジティブだろう。企業決算が想定より良いことも考えれば、連休明けの株価上昇に期待が持てる。

ただ日銀は声明文の中で消費者物価について、展望レポートの見通し期間後半にかけてゼロ%台後半となり、その後、当面の「中長期的な物価安定の目途」である1%に遠からず達する可能性が高い、と指摘している。「遠からず達する」という文言は、読みようによっては、これ以上の緩和の必要がないとも読める。追加緩和は不要という解釈になれば、今回の緩和効果が薄らぐ可能性も出てくる。

●買入資産の構成に工夫も円安持続は難しい、今後の米金融政策を注視

<ニッセイ基礎研究所 シニアエコノミスト 上野剛志氏>

日銀が打ち出した資産買入基金増額の規模は5兆円ということで最低ラインだが、買入資産の構成を変更するなど工夫がみられた。ETF買い入れの2000億円程度の増額というのは印象として大きいだろうし、札割れが連発している固定金利オペは減らして長期国債の買い入れを増やすということで工夫がみられる。さらに買い入れ対象とする長期国債の残存期間を1年延長したり、包括緩和の基金自体の年限も半年延長したりしたが、総合すると市場が予想していたよりも踏み込んだ内容で、日銀の緩和姿勢の強さを印象づけたとみている。

しかし、円安の持続は難しいだろう。2月から3月にかけてのような大幅な円安の再来の可能性はあまり高くないとみている。米国の経済指標は良くないものが出ているほか、バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長は追加緩和に含みを持たせており、一方向にドル買いにポジションを傾けづらい。また、4月以降、再び欧州の債務問題がクローズアップされている。各国での重要選挙も控えており、ユーロ圏でもし何かあればリスク回避で円高の流れになりかねない。

次回6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、6月末に期限を迎えるツイストオペ後に何かするのか、やめてしまうのか判断してくるだろう。決定にあたっては、4月米雇用統計など5月に発表される米経済指標が判断材料として非常に重要になってくるため、注目する必要がある。現在は日銀が追加緩和で先行しているイメージがあるが、FRBが再び追加緩和を打ち出してくればドル安/円高のインパクトは大きい。FRBの出方を注視したい。

●アグレッシブな緩和、期待インフレ再評価も

<メリルリンチ日本証券・チーフ債券ストラテジスト 藤田昇悟氏>

日銀緩和の内容はポジティブサプライズ。相次ぐ札割れで実質活用されていない固定金利オペの規模を5兆円減らした分を他資産の買い入れにまわしたことで、基金は実質的に10兆円の増額。予想していなかったETFとREITの買入枠を拡大した。また、基金70兆円を実現するために、国債買入年限の延長、基金買入期限の半年延長などの工夫も施した。

仮に、今回追加緩和を見送っていた場合には、政治、市場、メディアから日銀に対する圧力が増していたことだろう。アグレッシブな緩和に踏み切ったことで、揺らいでいた日銀の独立性を多少なりとも取り戻したのではないか。

追加緩和は、素直に円安・株高の要因とみている。日銀は今後も追加緩和を継続してデフレ解消をコミットするのであれば、期待インフレを再評価し、長期金利の水準を押し上げる要因になる可能性がある。

*コメントを追加します。

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