[ニューヨーク 17日 ロイター] 17日のニューヨーク外国為替市場では円がユーロとドルに対し大幅上昇。スペインとギリシャの銀行をめぐる懸念に加え、ギリシャがユーロを離脱した場合の波及リスク、さえない米経済指標などを材料に質への逃避の動きが強まった。
スペインの銀行が格下げされるとのうわさで欧州株が大きく下落し、ユーロが売られたことから、円は一時、対ユーロと対ドルで3カ月ぶり高値をつけた。
終盤の取引でユーロ/円は1.5%安の100.59円。一時は2月7日以来の安値となる100.54円まで下落した。
ドル/円も急落し、終盤の取引で1.3%安の79.24円。一時79.12円まで売られ、2月17日以来の安値をつけた。
5月の米フィラデルフィア地区連銀製造業業況指数が予想外に低下したことを受け、ドルは対円で下げ幅を拡大した。
同指標はいったんユーロを下支えしたものの、国際通貨基金(IMF)報道官が、経済状況の悪化を踏まえると欧州中央銀行(ECB)は一段の利下げや追加の非標準的措置を実施する余地があるとの見方を示したことを受け、再び売られる展開となった。
ユーロは対ドルで一時1.2665ドルに下落し、1月中旬以来4カ月ぶりの安値をつけた。ギリシャやスペインを取り巻く問題を受け、ユーロ圏には債務危機に対処する確固とした策が欠如しているとの懸念が拡大した。終盤の取引では0.2%安の1.2694ドル。
野村証券(ニューヨーク)のグローバル為替・債券戦略部門責任者イエンス・ノルトビク氏は「今後2カ月間のユーロ/ドルに対するリスクは著しく下向きに傾いているとわれわれはみている」と述べ、「ギリシャ再選挙でユーロ離脱に向けて実際に動き出す可能性が十分にあり、そうなった場合ユーロ/ドルは1.20ドルの水準を試す公算が大きい」との見方を示した。
投資家の間では、ギリシャが6月17日の再選挙後にユーロ圏を離脱するとの懸念が高まっている。ただ、MARC/アルファが15─17日に実施した世論調査では、欧州連合(EU)・国際通貨基金(IMF)の支援策を支持する新民主主義党(ND)への支持率が急進左派連合の支持率を上回ったことが明らかになった。
この日は、一部国有化されたスペインの銀行バンキアBKIA.MCから預金が大量に引き出されたとの報道を受けて同行の株価が急落したほか、スペイン統計局が発表した第1・四半期の国内総生産(GDP)が前期比0.3%減となり、同国の景気後退入りが確認された。
また、スペイン政府が実施した中期国債入札では利回りが大幅上昇し、同国の借り入れコストが持続不可能な水準に上昇するとの懸念が強まった。
BNPパリバはリサーチノートで「中銀当局者を含め、ギリシャのユーロ離脱を口にする向きが多いという事実は、ギリシャのユーロ加盟存続への脅威が現実のものである証拠だ」と指摘した。
また、ユーロ/ドル取引ではユーロを対ドルでショートにする策が最善とし、ユーロ/ドルの目標レンジの下限をこれまでの1.28ドルから1.2625ドルに一段と引き下げた。
一部のアナリストの間では、ギリシャに関するリスクを市場はほぼ織り込んでおり、ユーロは反発する可能性があるとの声も出ているが、ユーロ安が続くとの意見が大勢だ。
ドル指数.DXYは質への逃避の動きから上昇し、4カ月ぶり高水準となる81.682をつけた。
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