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アングル:海運市況が記録的低迷、中国過剰投資のツケ日本勢直撃

10月1日、海運市況が記録的な低迷を続けている。中国経済の減速による鉄鋼需要の減少と、新造船の供給過剰が原因だ。写真は9月、都内のコンテナ港で撮影(2012年 ロイター/Kim Kyung Hoon)

[東京 1日 ロイター] 海運市況が記録的な低迷を続けている。中国経済の減速による鉄鋼需要の減少と、新造船の供給過剰が原因だ。中国では鉄鋼大手が生産休止するなど、過剰なインフラ投資の反動が顕在化。鉄鋼需要が早期に回復するとの見方は少なく、原材料を運ぶ日本の海運業界に大きな打撃が及ぶ恐れがある。

資源や穀物を運ぶばら積み船運賃の値動きを示すバルチック海運指数.BADI(BDI、1985年=1000)は9月に平均707と、1986年7月の572以来、26年ぶりの低水準に落ち込んだ。海運会社がばら積み船を船主から借りる際に支払う1日あたりの用船料(主要航路平均)は、鉄鉱石や鉄鋼用原料炭を運搬するケープサイズ(積載重量17万トン級)が7000ドル程度。船を動かすコストとされる2万5000ドルを大きく下回る。「血を出しながら走っている状態で、損失回避のため船を動かさない係船(運航停止)も増えつつある」と、海運市況情報大手トランプデータサービスの海老原謙治代表は話す。

バルチック指数の騰落を左右するのは主に、鉄鉱石を運ぶケープサイズと穀物を輸送するパナマックス型(同7万トン級)の需給動向。現在の市況低迷は中国の鉄鋼需要減速と、中国需要を見越してリーマン・ショック前に大量発注されたばら積み船の新造船の増加が原因だ。

中国の8月の粗鋼生産量は、前年同月比1.7%減の5870万トンと9カ月ぶりに前年比でマイナスに転じており、前年比2%のペースで増えていた2010年までとは様変わりした。このため、6月はトン130ドル台だった鉄鉱石のスポット(当用買い)価格は8月に90ドル台まで下落、足元も100ドル程度にとどまっている。また、リーマン・ショック前に発注された船舶が続々と完成、2010年末に世界で1164隻だったケープサイズの大型ばら積み船は、今年9月に1490隻まで増加した。市況悪化はすでに日本の海運大手の業績を直撃している。日本郵船9101.Tは9月28日、2012年4─9月期の最終損益見通しを従来の75億円の黒字から30億円に赤字に下方修正した。商船三井9104.Tは業績が悪化した関連会社の第一中央汽船9132.Tに対し、150億円の融資枠を設定した。船舶の供給を絞るため、日本郵船はケープ型の隻数を15年に13年比2割減らし、商船三井も現在の約100隻体制を15年に90隻まで縮小する計画を打ち出している。

中国政府は9月中旬、1兆元(約12兆円)の経済対策を打ち出した。好感した市況はいったん反発、業界はこのまま好転を期待する。「戦後の海運市況は4年周期で前回の底はリーマン後の2009年1?3月。年明けに向け底入れする可能性が大きい」(トランプデータ海老原氏)との見方だ。

しかし、商船三井の安岡正文取締役・専務執行役員は「鉄鉱石や海運の価格下落で、中国が鉄鉱石を中国産から輸入に切り替えている影響もある」と見ており、中国の実需が本格的に回復したとの見方は少ない。海運市況が少しでも反転すると、「中国の造船所が船を造り始め、需給が改善されにくい」(安岡取締役)という面もある。

中国の経済対策の効果も不透明だ。「08年に打ち出された4兆元の対策も、中央政府の支出は数千億元にとどまり、残りは地方政府が拠出した。現在の経済環境で銀行が地方政府にどれだけ貸すか不透明だ」と、第一生命経済研究所の西浜徹主任エコノミストは言う。

中国では鉄鋼需要の冷え込みを受け、宝山鋼鉄600019.SSが上海工場の生産停止を発表するなど、減産の動きが出始めている。さらに「雇用を優先し実需がなくとも生産を継続しているケースもある」(鉄鋼業界関係者)との声も聞かれ、中国鉄鋼業界の本格的な生産調整はこれから顕在化してくる可能性が高い。中国国内の過剰在庫が投げ売り状態で国外に輸出されれば、「日本と韓国の鉄鋼業界をはじめ、幅広い影響をもたらすデフレ輸出となる」(トランプデータ海老原氏)懸念もある。 (ロイターニュース 竹本能文; 編集 久保信博)

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