[ニューヨーク 8日 ロイター] - 8日終盤のニューヨーク外為市場では、円がドルとユーロに対して大幅上昇した。日銀が同日の金融政策決定会合で追加金融緩和の見送りを決めるとともに、黒田東彦総裁が追加緩和は現時点で考えていないと表明したことが影響した。
ドル/円は一時1.4%下げて3週間ぶりの安値となる101.56円になった後、直近は101.69円。ユーロ/円も直近は約1%安の140.28円だったが、その前に1週間ぶり安値の140.09円まで下落する場面があった。
ロイターのデータでは、ドル/円、ユーロ/円とも1日の下落率はここ4週間で最大になった。
ユーロ/ドルは0.4%高の1.3796ドル。
多くの投資家は、日本で4月1日の消費税率引き上げが個人消費に打撃を与え、日銀はこの痛みを和らげるため数カ月中に追加緩和を迫られる可能性があると想定し、円を売っていた。
TJMブローカレッジ(シカゴ)の外為取引共同責任者、リチャード・スカローン氏は「円をショートにしてきた参加者が大勢いたところで、黒田総裁が追加緩和期待に冷や水を浴びせた」と指摘した。
円は日銀決定会合前からじり高傾向で、実際に政策の現状維持が決まると一段と値上がりした。さらに黒田総裁が日本経済の先行きに強気の見方を示し、消費税増税があっても物価と成長は上向くと発言したことが、円高を加速させた。
コメルツ銀行の通貨ストラテジスト、ピーター・キンセラ氏は「黒田総裁は金融政策に関して『針路そのまま(ステディ・アズ・シー・ゴーズ)』であると示唆しており、これは一部の円弱気派を失望させるだろう。物価が急に落ち込まない限り、緩和に動くようには見えない」と述べた。
ドル/円は、前週末の3月米雇用統計が景気回復の加速を見込んでいた一部投資家を落胆させる内容だったことを受け、このところさえない値動きを続けている。
ウエスタン・ユニオン・ビジネス・ソリューションズ(ワシントン)のシニア・マーケット・アナリスト、ジョー・マニンボ氏は「雇用の伸びが予想を下回ったことが従来のドル強気見通しに痛手になっている。これは今後のドルにとって明るい材料とは見受けられない」と話した。
一方で最近のドル安は、新たにドル高円安を見込んだポジションを構築する好機だとの声も出ている。この考えは日米金融政策の方向性の違いに基づくもので、米連邦準備理事会(FRB)は量的緩和を縮小中であり、来年半ばあたりに利上げを開始するとの予想が多い。
ノムラ(ロンドン)のアナリスト、後藤裕二郎氏は「ドル/円の下げ余地は限定的で、第2・四半期末には105円に上昇している可能性がある」とみている。
ユーロ/ドルはさらに強含むかもしれない。欧州中央銀行(ECB)当局者が、ユーロ圏のデフレ回避策を打ち出すとの期待を抑制し続けているからだ。
それでも市場参加者の多くは、ユーロが一段と上昇すればECBが動く可能性があるため、ユーロを大きく押し上げることには慎重な姿勢だ。UBSウエルス・マネジメント(ロンドン)の英国投資事務所長、ビル・オニール氏は「ECBにとってはさらなるユーロ高は受け入れられない。ユーロ/ドルが1.40ドルに向かうようなら対応策が出てくるだろう」と述べた。
ドル/円 終値 101.79/80
始値 102.22/23
前営業日終値 103.07/13
ユーロ/ドル 終値 1.3796/98
始値 1.3791/92
前営業日終値 1.3741/43
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