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再送:〔アングル〕過去最大級の資本流出が年後半の円急騰を緩和、年明け後は円の上昇ピッチ加速も

*この記事は9日18:29に配信しました。

 基太村 真司記者

 [東京 9日 ロイター] 円の上昇ピッチが年明け以降に加速する可能性があるとの見方が浮上してきた。08年に過去最大規模に膨らんだ日本からの直接投資などの資本流出が来年は企業業績の悪化で細ることは避けられず、円急騰を緩和してきた要因がなくなるからだ。加えて、1─3月は日本企業が決算期末を控えてリパトリエーション(資金の本国還流)に動く季節性があり、円高を助長する材料として意識されている。

 今年、日本からの資本流出が顕著だった背景には、日本企業の海外企業に対するM&Aがある。金融危機で世界的に株価が大きく下落する中、相対的に健全性を保っているとされる日本企業が相次ぎ海外企業への出資や買収に動いたためで、財務省が8日に発表した10月国際収支統計でも、対外直接投資は2兆6422億円の流出と統計が始まった85年以降、月次ベースとして過去最大を記録。4月以降、4000億―9000億円程度だったが、三菱UFJフィナンシャル・グループ8306.Tの米モルガン・スタンレーMS.Nに対する90億ドルの出資など「複数の巨額の直接投資案件」(財務省国際局)が大きく底上げした。

 加えて、海外の株式や債券に投資する対外証券投資も高水準で、11月には株式と中期債への投資総額が2兆0490億円の流出と5月以来の大幅流出を記録。今年に入ってからの累計でも11月までで10兆2377億円と、通年ベースと比較してもすでに05年以来3年ぶりの水準に達している。

 国内勢の対外証券投資が活発化したのは、純粋な海外株・債券投資に加え、投資家の「リバランス」と呼ばれるポートフォリオの見直しにあるとされる。円が対ドルで13年ぶり高値を更新するなど各通貨に対して大きく上昇、同時に海外株が大きく下落したため、保有するポートフォリオに占める円資産の比率が想定以上に高まり、他通貨建て資産が相対的に目減りしたことで、その補充のために外貨建て資産を増やさざるを得なくなるというものだ。実際、あるメガバンクの関係者も今年は「公的・私的を問わず年金系を中心にリバランスの(外貨)買いがかなり入った」と明かす。

 ヘッジ付投資が大半である銀行部門の外債投資を除いた実質的な外貨買い需要に相当する対外証券投資(1―11月)と、対外直接投資(1―10月)を加えると、今年これまでの日本からの資本流出総額は15兆6000億円。遡及可能な89年以降で、89年に記録した18兆3000億円に次ぐ規模に達している。JPモルガン・チェース銀行の調べによると、この合計値に貿易収支や他の投資家の売買に占めるヘッジ比率などを勘案した、円相場により直接的な影響を及ぼすと見られる資本流出の総額は11兆5000億円と89年以来の最大を記録している。

 こうしたデータ上の資本流出すべてが為替市場で直接的な円売り圧力となったわけではないにしても、日本から巨額の資本が流出し続け、その影響で夏以降の円高ピッチが緩和されていたとの見方に異論を唱える市場関係者は少ない。そのため、3月期末決算を控えた国内勢が海外投資を一巡させる年明け以降も世界的な株安がリスク回避的に円買いにつながる展開が変わらず、その中で資本フローが与える円売り圧力が低下すれば「円の上昇圧力は勢いを増す可能性もある」(JPモルガン銀のチーフFXストラテジスト・佐々木融氏)という。

 季節要因以外にも懸念はある。9日に内閣府が発表した日本の08年7―9月実質国内総生産(GDP)2次速報値が、前期比マイナス0.5%、年率マイナス1.8%となったことを受けて、市場では10―12月期GDPもマイナス成長が続く可能性を指摘する声が上がり始めている。米国発の金融危機が「対岸の火事」ではなくなり、日本経済に一段と直接的な影響を及ぼし始めれば、日本企業の体力が消耗、海外投資に伴う資本流出が一気に細る可能性もある。

(ロイター日本語ニュース 編集 橋本浩 shinji.kitamura@thomsonreuters.com;03―6441―1791;ロイターメッセージング:shinji.kitamura.reuters.com@reuters.net)

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