August 19, 2019 / 1:44 AM / 3 months ago

焦点:「骨折れるまで妻を殴る」ミャンマー社会、DV撲滅の戦い

[ヤンゴン 16日 ロイター] - ミャンマー南部の自宅で1歳の娘をあやしながら、Nu Nu Ayeさんは、夫が自分を殴打した理由を語った。「飼っているおんどりの面倒を見なかったため」である。性交の求めにも応じなかった。

 8月16日、米国の資金で実施された「人口・保健調査」によれば、ミャンマーでは少なくとも5人に1人の女性が配偶者から暴力を受けている。家庭内暴力を受けた女性、息子と撮影に応じた。8月7日、エーヤワディーにある村で撮影(2019年 ロイター/Ann Wang)

村の長老が仲介した話し合いの場で、夫は「必要に応じて」また妻を殴ると言った。

「彼の暴行はその後さらにひどくなった」と、Nu Nu Ayeさんは語る。ついには、彼女が寝ている間に絞め殺そうとするところまでいった。

米国の資金で実施された「人口・保健調査」によれば、ミャンマーでは少なくとも5人に1人の女性が配偶者から暴力を受けている。複数の人権活動家は、報告されていない事例も多く、この数字も過小評価だとする。家庭内暴力(DV)を禁止する明確な法律はない。

Nu Nu Ayeさんの証言についてロイターは裏付けを取れていないが、彼女のような事例は地元の有力者に仲介を頼むのが普通であり、配偶者による暴力はたいていの場合、私的な問題とみなされる。

ノーベル平和賞受賞者のアウン・サン・スー・チー氏率いる現政権は、女性を暴力から守る法律の制定に取り組んでいる。人権問題に取り組む活動家らは、DVを含めた暴力から女性を保護できるようになると期待している。

だが、法案は2013年に提案されたものの、今も草案の段階で足踏みしている。その規定について賛否が分かれ、夫婦間のレイプを違法とすることなどについて見直しが行われている。

立法化の遅れに人権活動家らは焦燥感を募らせている。ミャンマーの文民政府は軍部と権限を分け合う複雑な制度のもとで統治に当たっており、こうした明らかに文民政府の管轄下にある分野でさえ、改革は遅々として進まず、失望を招いている。

「法律の制定に十分すぎるほど時間がかかっているが、まだ待たされている」と、人権活動家の1人、Nang Phyu Phyu Lin氏は言う。

ロイターはミャンマーの社会福祉・再定住省に質問を送ったが返答はない。電話でもコメントを求めたが、回答を得られていない。

<女性の保護措置が皆無>

保守的で男性優位社会のミャンマーは、半世紀にわたって軍政下にあり、2015年の選挙でようやく文民政府が誕生した。

スー・チー氏を明らかな例外として、公的な指導者に女性の姿はほとんどない。スー・チー氏以外に女性の閣僚はいないし、2015年の選挙で当選した国会議員のうち、女性の比率は10%にとどまった。

半ば冗談、半ば本気で口にされる地元の格言は、「骨が折れるほど妻を殴れば、心から愛してくれる」だ。

ミャンマーの刑法はイギリス植民地時代にさかのぼる。DVに関する規定は曖昧で、その訴追に使われることはめったにない。レイプに関する規定は狭く、夫婦間は除外されている。

報復を恐れて匿名で取材に応じた28歳の女性は、「ミャンマー社会には女性を保護する措置がまったくない」と語った。

彼女は、夫の薬物使用について口論になった。自分と幼い息子を守るため、包丁を手にせざるをえなかったという。「誰に助けを求めればいいか分からなかった」

活動家らによると、保守性の強い農村地域では特に法執行部門が弱く、女性は夫の所有物であると考えられている場合が多いという。

カレン州人権擁護グループのプログラム・ディレクター、Naw Htoo Htoo氏によれば、南東部のカレン州で警察に通報されたDV事件は27件あるが、そのうち裁判となったのは1件だけだ。それ以外の事件は村の長老による仲裁を受け、暴行を加えた者には「ほとんど罰金が科されなかった」と同氏は言う。さらに、通報された事件は氷山の一角にすぎない可能性が高いという。

さらに南に下った沿岸部ののどかな町ダウェイ。31歳のKyu Kyu Winさんが、夫による暴力を語った。夫は彼女が他の男性と浮気したと非難し、髪をつかんで地面を引きずり回したという。「また一緒に暮らさなければならないとしたら、自殺するだろう」と彼女は言う。

インタビューの最中、きょうだいが口をはさんだ。「彼女の言葉は信じられない」と、彼は言う。「どうして女性の権利ばかり語るのか。男性の権利はどうなのか」

DVから被害者を保護する避難所は国内に9カ所。ダウェイにある1カ所を運営するタボヤン女性連合の事務総長Nu Nu Hlaing氏によれば、地元の警察はDVの訴えを無視するか、軽視することが多いという。

ロイターはダウェイの警察署に問い合わせたが、コメントすることを拒否された。

<それが「結婚後の義務」>

政府当局者と女性の人権問題を扱う活動家との間で行われた、法案の起草に向けた協議に出席した複数の人物によれば、夫婦間のレイプを犯罪とすべきかどうか、男女とも賛否が分かれたという。

起草委員会に参加した活動家のPansy Tun Thein氏は、「好むと好まざるとに関わらず、これは結婚後の義務の1つだと言われた」と話す。

同じく委員会に参加した男女平等ネットワークのMay Sabe Phyu氏によれば、男性の中に、妻を殴ることを問題視することに疑問の声もあったという。

活動家3人はロイターに対し、法案はすでに法務長官局の承認を得ており、成立の可能性が高いものの、国会での審議日程は決まっていないと語った。ロイターは法務長官局にコメントを求めたが、回答は得られなかった。

 8月16日、33歳のKhin Wutt Yeeさんが、内縁関係にある男性から受けた怪我。8月7日、エーヤワディーにある村で撮影(2019年 ロイター/Ann Wang)

この3人の活動家によると、法案では夫婦間のレイプを違法としているという。DV被害者に対する法律面、医療面の支援、避難所の利用といったサービス提供の保障が盛り込まれている。

冒頭のNu Nu Ayeさんと幼い娘は現在、年長女性のPo Kyiらにかくまわれている。Po Kyiさんは、「彼女がいたいだけ、ここにいればいい」と語る。「同じ女性として、彼女には深く同情している」

(翻訳:エァクレーレン)

0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below