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アングル:軍のロヒンギャ迫害、医師が見た「レイプの傷痕」
September 30, 2017 / 3:26 AM / 2 months ago

アングル:軍のロヒンギャ迫害、医師が見た「レイプの傷痕」

Simon Lewis and Tommy Wilkes

 9月25日、この数週間でミャンマーからバングラデシュに逃れてきた約42万9000人のイスラム系少数民族ロヒンギャ難民の一部を治療した医師たちは、数多くの女性に性的暴行の証拠となる負傷を確認した。写真は、レイプ被害者の女性。コックスバザールの難民キャンプで4月撮影(2017年 ロイター/Mohammad Ponir Hossain)

[コックスバザール(バングラデシュ) 25日 ロイター] - この数週間でミャンマーからバングラデシュに逃れてきた約42万9000人のイスラム系少数民族ロヒンギャ難民の一部を治療した医師たちは、数多くの女性に性的暴行の証拠となる負傷を確認した。

国連臨床医など医療関係者によるこうした証言について、いくつかの事例はロイターが閲覧した医療記録でも裏付けられており、ロヒンギャ女性が繰り返し訴えている、ミャンマー軍によるセクシャル・ハラスメントから集団レイプに至るさまざまな告発に真実味を与えている。

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ミャンマー当局者はこうした告発について、軍を中傷するための武装勢力のプロパガンダだと一蹴。軍は合法的な反乱鎮圧作戦を展開しており、民間人を保護するよう命令を受けていると擁護している。

ミャンマーの事実上の指導者アウン・サン・スー・チー氏の広報担当官Zaw Htay氏は、いかなる告発に関しても当局は調査を行うだろうと語る。「レイプ犠牲者の女性はわれわれに訴えるべきだ」と彼は言う。「われわれは完全な保護を与える。調査して、必要な措置をとる」

スー・チー氏自身は、昨年後半より明らかになった軍によるロヒンギャ女性に対する多数の性的暴行疑惑について、口を閉ざしている。

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昨年10月、ロヒンギャ武装勢力が警察の国境検問所を初襲撃したことで、ミャンマー北西部のラカイン州における暴力的衝突が発生した。武装勢力は再び8月25日に検問所や軍の基地を襲撃。これがミャンマー軍による大規模な反撃の引き金となり、国際連合が「民族浄化」と呼ぶ事態を招いた。

ロイターは、バングラデシュのコックスバザール地区で医療や難民保護に携わる8人の関係者を取材した。彼らは8月末以来、25件以上のレイプ事件の被害者治療に従事したという。

医師たちは、患者に何が起きたのかについて厳密な確認を求めようとはしなかったが、多くの女性による供述や彼女らの身体的な症状には誤解しようのないパターンが見られたと語る。彼女らは一様に、加害者はミャンマー軍兵士だと話していたという。

国家の正規軍が犯したとされるレイプ事件は、扱いにくい問題であるだけに、国連の医師や援助機関が話題にすることは珍しいことだ。

<「非人道的な攻撃」>

バングラディシュのレダ難民キャンプに国際移住機関(IOM)が開設した診療所で働く医師は、軍が作戦を展開した昨年10-11月に性的暴行で負傷したと思われる女性数百人を治療したという。

同診療所の医療コーディネーターNiranta Kumar医師によれば、8月以降に流入した難民のあいだでは、レイプの報告は減っているものの、女性に対する「より激しい」暴行を示す傷が見られるという。

10月時点では、軍の掃討作戦はロヒンギャ男性が標的だと考えて村にとどまった女性が多かったが、今回は軍事行動の兆候が見られた時点で大半の女性が逃げ出した、と医療関係者は語る。

レダ診療所の医師たちはロイターに対し、患者の身元は伏せたまま3つのカルテを見せてくれた。1つは9月10日に治療を受けた20歳の女性のもので、その7日前にミャンマーで兵士にレイプされたと語っていたという。

手書きのメモによれば、兵士たちはレイプする前に「髪を引っ張り」、そして「銃を使って殴りつけた」と彼女は供述している。

こうした診察では、強引な性器挿入や殴打による負傷、あるいは女性器に意図的に切りつけたような切り傷が見受けられることが多い、と医師たちは語る。

 9月25日、この数週間でミャンマーからバングラデシュに逃れてきた約42万9000人のイスラム系少数民族ロヒンギャ難民の一部を治療した医師たちは、数多くの女性に性的暴行の証拠となる負傷を確認した。写真は、レイプ被害者の女性。コックスバザールの難民キャンプで4月撮影(2017年 ロイター/Mohammad Ponir Hossain)

「非常に強引な攻撃、非人道的な攻撃を示す傷痕が見られた」とIOMのTasnuba Nourin医師は言う。この女性には膣の裂傷、咬傷(こうしょう)、銃器を女性器に挿入したと見られる傷痕が見られた、とこの女性医師は語る。

新たに流入したロヒンギャ難民のなかで、同女性医師は、最近レイプされたと見られる女性を少なくとも5人治療したと述べ、いずれの症例でも、身体の傷は、患者による状況説明と整合していたと付け加えた。

<「氷山の一角」>

バングラディシュのウクヒア地区には、国連機関の支援のもとで同政府が運営する診療所が複数ある。その中心となる医療複合施設を率いるMisbah Uddin Ahmed医師は、女性医師の報告をもとに、レイプ被害者である女性19人の治療を行ったと語る。

「証拠としては、咬傷や膣の切傷などがある」とAhmed医師。9月14日だけでも、診療所の1つを訪れた6人の女性全員が、性的暴行を受けたと話していたという。「彼女ら全員が、やったのはミャンマー軍だと述べていた」

クツパロン難民キャンプに近い、これらの診療所の1つで働くIOM医師は、8月末にミャンマー国境を越えてきた女性が、少なくとも7人の兵士にレイプされたと語っていた、と証言する。

 9月25日、この数週間でミャンマーからバングラデシュに逃れてきた約42万9000人のイスラム系少数民族ロヒンギャ難民の一部を治療した医師たちは、数多くの女性に性的暴行の証拠となる負傷を確認した。写真は9月、コックスバザールの難民キャンプ(2017年 ロイター/Cathal McNaughton)

「彼女はひどく衰弱し、トラウマに苦しんでおり、診療所を訪れるのも辛かったと話していた」とこの医師は語った。「彼女は膣に裂傷があった」

この医師は、レイプされたと思われる女性19人のうち15人を治療したほか、身体的な暴行を受けた8人を診療したという。一部の患者には緊急避妊薬を投与し、エイズウイルス(HIV)感染リスクを低下させる処置と肝炎の予防接種を全員に行った。腕や背中のかみ傷、膣の切傷や裂傷、出血などの症状が見られたと同医師は語る。

コックスバザールの複数の援助機関がまとめた内部報告書には、8月28─31日の4日間だけで、49人に上る「性・ジェンダーに基づく暴力(SGBV)」による被害者が記録されている。SGBVは未遂を含むレイプ、性的虐待、精神的な虐待などを示す言葉であり、レイプ事件に関してのみ使われるという。上記以外の日に関して報告されたレイプ事件についてはデータ入手ができなかった。

援助機関による状況報告によれば、8月25日以降、350人以上がジェンダーに基づく暴力に関連する「救命治療」を受けているという。この報告書には、加害者についての言及はない。

コックスバザールで「国境なき医師団」の緊急医療コーディネーターを務めるケイト・ホワイト氏によれば、同医師団では8月25日以降、集団レイプと性的暴行を含む性・ジェンダーに基づく暴力の被害者を少なくとも23人治療したという。

「これは実際に発生しているであろう事例の氷山の一角にすぎない」とホワイト氏は言う。

<「武器としてのレイプ>

ロイターが最初にロヒンギャ女性の大規模なレイプ被害を報じたのは、10月にラカイン州北部で武装勢力による襲撃が発生してから数日以内のことだった。同様の報告は、1月にバングラデシュを訪れた国連の調査担当者の耳にも入っている。

国連事務総長による4月報告では、「(性的暴行は)ロヒンギャのコミュニティに屈辱と恐怖を与えるために組織的に行われているようだ」と述べている。

昨年権力の座に就く以前にスー・チー氏は、国内の無数の民族対立において、分断の手段としてレイプが用いられている、と述べていた。

「少数民族に恐怖を与え、国内を分断するために、軍隊がレイプを武器として使っている、というのが私の理解だ」。スー・チー氏は2011年、紛争における性的暴力に関する会議に向けたビデオメッセージでそう語っている。

その後、彼女の見解が変化したのかどうかを問われて、Zaw Htay広報担当官は「何も言うべきことはない」と答えた。「すべては法の支配に従うべきだ」と同報道官は語った。「軍の指導者も、行動を取ると言っている」

(翻訳:エァクレーレン)

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