April 10, 2015 / 8:27 AM / 5 years ago

中曽日銀副総裁インタビューの一問一答

[東京 10日 ロイター] - 日銀の中曽宏副総裁はロイターとのインタビューに応じ、量的・質的金融緩和(QQE)の効果と金融政策運営、市場機能の状況や金融システムなどについて発言した。インタビューは9日に行った。一問一答は以下の通り。

 4月10日、日銀の中曽宏副総裁は9日のロイターとのインタビューで、量的・質的金融緩和の効果と金融政策運営、市場機能の状況や金融システムなどについて発言した。日銀本店、昨年10月撮影(2015年 ロイター/Toru Hanai)

――量的・質的金融緩和(QQE)の導入から2年が経過したが、所期の効果を発揮しているとする具体的な根拠は。

「企業、家計部門とも所得から支出への前向きな循環メカニズムが作用し、景気は緩やかに回復している。企業部門は収益が過去最高水準まで増加し、設備投資は緩やかな増加基調。輸出もようやく増加に転じ、持ち直している。家計部門は失業率が構造失業率近辺まで低下し、雇用者所得が緩やかに増加している。こうしたなかで個人消費は全体として底堅く推移しており、長引いていた消費税率引き上げ前の駆け込み需要の反動減の影響も収束してきている」

「物価面では、消費税率引き上げの影響を除いた消費者物価(生鮮食品除く、コアCPI)が、エネルギー価格下落の影響でゼロ%程度となっており、(2%の)物価安定目標との隔たりが残っている。しかし、大事なのは物価の基調であり、それは着実に改善している」

――物価の基調が改善しているとの根拠は。

「物価の基調を決めるのは、需給ギャップと予想物価上昇率だが、このうち需給ギャップは概ね過去平均並みのゼロ%程度まで改善している。予想物価上昇率は、原油価格の下落にもかかわらず、やや長い目でみれば全体として上昇している。(市場のインフレ予想を表す)ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は、原油価格が大幅に下落するもとで昨年末にかけてグローバルに低下していたが、原油価格の下げ止まりでここのところ上昇してきている。また、家計や企業、エコノミストのアンケート調査でみた中長期的な予想物価上昇率は総じて維持されている」

――デフレマインドの転換は進んでいるのか。

「特に指摘しておきたいのは、企業、家計の行動に前向きな変化が生じている点だ。中長期的な予想物価上昇率は、最終的に家計や企業の行動に表れる。企業でいえば、設備投資をどうするか、価格をどう設定するか、賃金をどう設定するかという判断だ。賃金設定では、賃金の上昇傾向が続いており、企業の予想物価上昇率の上昇を示唆しているものとして非常に心強い」

「昨年春の賃金改定交渉で約20年ぶりにベアが実現し、今年も実現する見通しだ。ベアの幅も現時点の集計によれば前年の実績を上回っている。中身をみても中小企業や非正規労働者に広がっており、雇用・所得環境の質的改善を示すものと受け止めている。いずれにしても、デフレ下ではすっかり影を潜めていた企業、家計の前向きな行動の変化が起きており、デフレマインドが払拭されつつある。この点は隔世の感がある」

――コアCPIはゼロ%に鈍化している。2年・2%のコミットメントについて表現を変える必要はないか。2年程度で物価2%の実現が難しい場合は追加緩和が必要か。

「物価の基調は着実に改善していくと考えており、原油価格が現状程度の水準から先行き緩やかに上昇していく前提に立てば、原油価格の動向によって多少前後する可能性はあると思うが、消費者物価の前年比は原油価格下落の影響がはく落するにつれて伸び率を高め、2015年度を中心とする期間に2%に達するとみている。2%の物価安定目標を2年程度の期間を念頭にできるだけ早期に実現するというコミットメントは政策効果の起点であり、この方針を変える考えはない」

「物価の基調的な動きに変化が生じない限り、追加緩和は不要と考えている。逆に物価の基調に変化が生じて物価安定目標の早期実現のために必要となれば、ちゅうちょなく調整を行う方針だ」

──コアCPI見通しが下方修正となっても、基調がしっかりしていれば追加緩和は必要ないということか。

「そのように説明した」

――目標達成に向けたリスクは何か。

「国内については、家計、企業とも所得から支出への好循環が働き始めており、これを定着させるフェーズに入っていると思う。私自身は、好循環を中断するリスクとして、海外動向により目を向けていく必要があると思っている。当面、気になるのはギリシャ情勢。ギリシャの銀行の預金流出は続いており、ギリシャ政府の資金繰りも厳しい。ギリシャが仮にユーロ圏から離脱するようなことになれば、国際金融資本市場の混乱などを通じて日本の市場、経済にも影響があり得る。この点を特に、よくみていきたい」

――QQEの出口政策のタイミングや手法について、現時点での考えは。

「現在、2%の物価安定目標をできるだけ早期に実現するよう、国債など各種資産を積み上げながら最大限の努力を行っている真っ最中。出口戦略を議論することは時期尚早だ」

「日銀は各種の市場調節手段を持っている。超過準備への付利のほか、流動性吸収手段として国債売り現先オペ、手形売出オペを実用可能な手段として有している。このため、量的・質的金融緩和からの出口への対応は十分に可能だ。ただ、出口に向けた対応やその後の政策運営のあり方は、その時々の経済・物価情勢や市場の状況によって変わる。早い段階から具体的なイメージを持って話すことは適当ではないし、市場との対話という観点からもかえって混乱を招く」

――QQEによる大規模な国債買い入れによって、市場の機能や流動性の低下が懸念されている。

「QQEは巨額の国債を市場から買い入れることを通じて、金利低下圧力をかけることを一つのトランスミッション・メカニズムとしており、金利の低下は政策効果の表れといえる。一方、この政策が国債市場の需給や価格形成面にある程度影響することは当初から不可避と思っていた。ただ、私自身は流動性の維持がとても重要であることを十分に認識している。私たちはQQE導入に際し、市場参加者とこれまで以上に密接に意見交換することが必要と考えていたし、市場の機能や流動性について日々、注意深く見る必要があると思っている」

「市場の流動性や機能度をどう定義するかは難しいが、一般的には市場参加者が意図した価格で速やかに売買を執行できる状況が想定される。その観点でみると、これまでのところ国債市場の機能度、流動性が通常取引が困難になるほど著しく低下しているわけではないと思っている」

――市場の機能や流動性が低下していないとする具体的な理由は何か。

「国債の取引高自体は減少していない。取引高と日中の値幅を比べた比率も過去の平均的なレベルに収まっている。先物市場のビッド・アスクスプレッドも特に拡大しているわけではない」

「ただ、市場参加者から、国債市場の機能や流動性が伝統的な指標でとらえにくい形で低下しているのではないか、との意見があることは十分に認識している。市場における板の厚みの低下や、あるいは特定の国債銘柄の借り入れコストの上昇などがみられているほか、今年から開始した債券市場サーベイでも3カ月前に比べると、市場の機能度は低下しているとの回答も目立った。これまで以上に市場の声に丁寧に耳を傾けるとともに、新しい分析手法なども活用しながら、市場の流動性や機能度について包括的、丁寧にフォローしていきたい」

――QQE推進の結果として市場ではマイナス金利が発生。金融の取引やサービス提供に支障が出る可能性は。

「昨年秋以降、主として短期国債市場で流通利回りがマイナスになるケースが観察されている。背景には、QQE推進によって短期金融市場の金利が極めて低水準になっている中で、短期国債の担保としての需要や、債券ポートフォリオのデュレーション調整としての短期国債需要、為替スワップ市場におけるドル投/円転コストのマイナス化を背景とした海外投資家の需要がある。こうしたいろいろな要因が重なって実現したものと分析している」

「いずれにしても、マイナス金利は金融緩和効果の一形態であり、借入コストの低下やポートフォリオ・リバランスの促進という私たちが意図するメカニズムに沿ったものと理解している。マイナス金利が市場機能に及ぼす影響についてフォローしているが、少なくとも現在のところマイナス金利が市場取引のインセンティブを大きく阻害したり、金融サービスの提供に持続的な負の影響が生じているとは考えていない」

――マイナス金利について今後、注視していくべき点は何か。

「2点ある。1点目はマイナス金利がどこまで広がっていくのかということだ。先進国の中央銀行で非伝統的な金融政策の採用が目立っている中で、マイナス金利は欧州の比較的多くの国々でも見られるようになっている。今後、ユーロ圏の中央銀行による国債買い入れが進むにつれて、欧州におけるマイナス金利が日本を含めて他の先進国の市場にどのような影響を与えていくかに注目したい」

「2点目は、マイナスの円転コストの背景にある要因だ。円転コストのマイナス化の背景はいくつかあるが、日本の金融機関が外貨建ての資産運用を増やしており、それに伴ってドルの調達需要が増加している。さらに、米国の利上げ観測の強まりのほか、国際的な金融規制強化を受けてドル供給スタンスも消極化している。規制が及ぼす影響なども含め、円転コストのマイナス化の背景にあるいろいろな要因の今後の動向にも注視が必要だ」

――大規模な国債買い入れを今後も続けていくことは可能なのか。

「QQEの下でマネタリーベースが年間約80兆円に相当するペースで増加するよう、長期国債を始めとした広範な金融資産を買い入れているが、これまでのところオペレーション(金融調節)は政策委員会で定めた方針に沿って着実に進められている。今後も、こうしたオペレーションを続けていくことは十分に可能だ」

「長期国債は、新規国債の発行額の約2倍に相当する額をネットで増やすペースで買い入れている。おそらくQQEの推進に伴って、従来は安定的・固定的な投資家とみられていた主体が保有する国債まで掘り起こして買っていくことになる。こうした投資家はより高い価格でなければ日銀に国債を売却しないかもしれないが、その場合は、オペレーションを通じてイールドカーブの低下圧力や、ポートフォリオ・リバランスを促す効果は、むしろ強まるだろう」

――QQEはしばらく続く。金融調節は一段とチャレンジングになる。

「QQEは、日銀が過去15年間、知恵を絞りながら生み出してきた各種の非伝統的な金融政策手段のいわば集大成としての大規模な緩和政策だ。非伝統的な金融緩和の効果はチャレンジングなオペレーションの積み重ねの中で発揮されている」

「非伝統的な金融緩和政策は、今や日本だけでなく先進国の中央銀行にとって共通言語のようになっている。QQEのオペレーションの効果や経験についての知見や分析、成果を蓄積し、各国中央銀行間での議論の場に還元し、お互いに知見を深めていくことがますます求められている」

――さらなる国債の買い増しは可能なのか。

「基本的には方針に沿って買い入れは着実に進んでいるし、今後も買い入れに支障を来すような特段の事情があるとは考えていない」

――QQE推進による超低金利の継続が、地域金融機関などの収益力を低下させている。

「QQEの下で生み出された極めて低い金利によって、地域金融機関の収益環境が非常に厳しい状態に置かれていることは十分に認識している。私たちの政策は、地域金融機関の理解と協力があってこそという面があることは認識しており、感謝もしている。そのうえで、QQEの効果が今後浸透し、経済の好循環が強まっていけば貸出の増加や資金利益の改善などの効果が生じ、金融機関の収益向上にもつながっていく」

「しかし、現状は貸出利ザヤが縮小を続けるなど、地域金融機関を中心に金融機関の基礎的収益力が低下しているのも事実だ。加えて地域金融機関は人口減少といった地域経済の構造変化に伴って営業基盤の縮小や、基礎的収益力のさらなる低下が懸念される先も少なくない。超低金利だけでなく、地域経済の構造変化にどのように対応していくかも大きな課題になっている。自らの営業基盤や収益力の先行きを適切に分析し、長期的な展望から経営戦略を定めていくことが重要と思う」

「地域金融機関は地域に密着しながら、長い間地域経済を支えてきた。それぞれの地域経済の特性や、産業構造、潜在性を熟知している。地域経済活性化のために地域金融機関が果たし得る役割は非常に大きいと思う」

――資産価格が上昇している中で、ETF(上場投資信託)やJ━REIT(不動産投資信託)などリスク性資産の買い入れ継続が金融不均衡を助長しないか。

「QQEでは質の面から資産価格のプレミアムに働きかける効果も重要と考え、ETFやJ━REITなどのリスク性資産を買い入れている。QQE推進にあたり、金融面の不均衡リスクを含めて上下双方向のさまざまなリスク要因を展望リポートで点検し、金融システムレポートでも金融面の不均衡について定期的に点検している。現時点で資産市場や金融機関行動において過度な期待の強気化を示すような動きは観察されていないと評価している」

――趣味と休日の過ごし方は。

「趣味は特にない。デフレを脱却してから考えます」

伊藤純夫 木原麗花 竹本能文

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