October 4, 2018 / 7:41 AM / 12 days ago

アングル:北極圏は新たな火種か、ロシアとNATOがにらみ合い

[ニーオルスン(ノルウェー) 2日 ロイター] - 北極圏にあるスバールバル諸島は、1年のうち4カ月は太陽が昇らない。あまりの寒さで木も生えない。

島々を領有するノルウェーは、ロシアと西側諸国との緊張が、この極寒の辺境地に波及することを恐れている。北極圏に眠る貴重な石油やガス、さらに航路への関心が高まっているためだ。

北大西洋条約機構(NATO)の一員であるノルウェーは、他の加盟国に対し、国境の外からロシアをけん制するのではなく、スバールバルを集団で防衛することに力を入れるよう働きかけてきた。そして、それは功を奏している。

ノルウェーは、NATOの軍事演習としては2002年以降で最大となる「トライデント・ジャンクチャー」の中核を担うことになる。

演習は10月25日から2週間行われ、約30カ国から4万人超が参加する。東はフィンランドとバルト海から、西はアイスランドまで、陸海空の戦力が部隊を動かす。

ノルウェーはまた、自国に駐留する米海兵隊を2倍以上の規模に増やすよう米国を説得し、来年から数百人規模の兵士が北部トロムス県に派遣されることになった。北極地方にある同県は、現在の米海兵隊基地があるノルウェー中部よりロシアに近い。

「北極圏で緊張が高まるという確たる根拠はないが、他で緊張が高まれば、ここにも容易に波及しかねない」と、ノルウェーのエーリクセンスールアイデ外相はロイターに語った。

群島の1つ、スピッツベルゲン島の町ニーオルスンでインタビューに答えた同外相は、「ロシアが軍事力を、とりわけコラ半島で増強しているのが原因であることは言うまでもない」と付け加えた。極地科学の研究拠点であるこの町は、人が居住する世界最北の地だ。

ノルウェーは196キロにわたってロシアと国境を接している。ロシアの北方艦隊が拠点を置くコラ半島のセベロモルスクは、国境から100キロに位置し、一帯には海軍基地や立ち入り制限のある軍事区域が点在している。

ロシアは08年以降、6つの基地を新設または再開するなど北極圏で軍事力を増強している。これに対し、NATOは加盟国の航行の自由を脅かす可能性があると懸念している。

東部シベリアで9月、冷戦の終結以降で最大規模となる演習を実施したロシアも、ノルウェーの軍事的な動きを懸念する兆候を見せている。トロムス県に米海兵隊を追加配備する計画は、「重大な結果」を招きかねない非友好的な行為とみている。

「これによってノルウェーの動きは予測しづらくなり、緊張悪化を招きかねない。軍拡競争が勃発し、北欧情勢が不安定化する可能性がある」と、駐オスロのロシア大使館はフェイスブックページに6月発表した声明の中でこう述べた。

<ロシアの関心>

こうした中でノルウェーは、スバールバル諸島で経済活動を活発化させてきた。北極海に浮かぶ同諸島は、ノルウェーと北極の中間に位置する。

伝統産業の炭鉱業は収益が上がらず、ノルウェー政府は観光業や科学研究、漁業に力を入れている。

ロシアもスバールバルに関心を寄せている。同諸島は1920年に締結された条約でノルウェー領となり、条約批准国の国民はノルウェーの査証(ビザ)なしで居住することができる。その中にはロシアも含まれる。

ロシア人は467人が居住者として登録されており、ロシアの炭鉱会社もスピッツベルゲン島のバレンツブルクで何十年も操業をしている。ロシア人のもう1つの移住先となったピラミデンは旧ソ連時代に炭鉱で栄え、今はゴーストタウンとして観光スポットとなっている。

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ロシアが14年にクリミア半島を併合し、北極圏で海軍が演習を繰り返す動きは、NATOの中でスバールバルの優先順位を上げた。

NATO創設メンバーではあるが、欧州連合(EU)に加盟していないノルウェーは、ロシアの軍事力拡大に対抗すべく自国の軍事力を強化している。

米国からロッキード・マーチン(LMT.N)の「F35」戦闘機52機を購入し、その運用に必要な態勢の再構築を進めている。また、ドイツからティッセンクルップ(TKAG.DE)の新型潜水艦4隻も調達する。また、ロシア国境に近いフィンマルク地方に配備する機甲大隊も増強している。

ロシアのプーチン大統領はかねてから、北極圏のどの国も脅かすつもりはないが、自国の防衛措置を講じているとの考えを示している。

ロシア国防省はウェブサイトに、北方艦隊の近代化には原子力潜水艦2隻など新型艦艇23隻の追加が含まれるとするワレリー・ゲラシモフ参謀総長の言葉を掲載。「(ロシアは)北極海の戦略的地域においてプレゼンスを回復し、経済活動の安全を確保した」としている。

ショイグ国防相は8月、地元テレビ局に対し、北方艦隊は年末までに艦艇5隻、航空機15機、レーダー基地と防空施設62カ所を含む装備を追加配備すると語った。

沿岸防衛の部隊には地対艦ミサイル「バル」と「バスチオン」の3個師団が追加配備された。複数の軍用滑走路が新たに建設されているほか、既存の滑走路も近代化している。

ロイターはロシア外務省にコメントを求めたが、回答はなかった。

<米国も北極圏を重視>

米軍もこれまで以上に北極圏を重視している。地球温暖化による海氷の減少で新たな航路が生まれ、石油や鉱物資源の開発に道が開いたことがとりわけ大きい。

「米国も北極圏で一段と努力しなければならないことは明らかだ。そのことに疑いの余地はない」と、マティス米国防長官は今年になって述べている。

マティス長官はノルウェーを7月に訪問し、エーリクセンスールアイデ外相、バッケイェンセン国防相と会談した。その翌月、米海兵隊を追加配備することが確認された。

ノルウェーとロシアは2010年、海の境界を巡る争いに終止符を打つため条約を結んだ。石油や天然ガスの開発で協力したり、境界付近の住民はビザなしで行き来することが可能になった。

しかし、クリミア併合以降、ノルウェーの軍・政府関係者は、ロシアがノルウェーを目標に爆撃のシミュレーションしたり、より検知が困難な潜水艦を導入したりしているなどと懸念を強めている。

ノルウェーはまた、ロシアがいわゆる「GIUKギャップ」を支配し、NATO軍の部隊の移動や増強を阻止できるようになることを危惧している。GIUKギャップとは、大西洋北部のグリーンランドとアイスランド、アイスランドと英国にそれぞれ挟まれた海域を指す。

バッケイェンセン国防相は8月、これから始まるNATOの軍事演習に参加するドイツの部隊が到着した際、世界と地域の安全環境は根本的に変わったと述べた。

「われわれは、北大西洋と大西洋全体の通信網、補給ラインを確保するという古くからのNATOの任務に取り組む必要がある。いかにして大規模な部隊や車両、艦艇を移動させるか。これこそがまさに今、われわれが訓練していることだ」と、同国防相はロイターに語った。

(翻訳:伊藤典子 編集:久保信博)

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