[東京 22日 ロイター] - 日本生命保険の大関洋取締役(有価証券運用担当、CIO)は22日、ロイターとのインタビューに応じ、今月起きた米国発の金利急騰・株安は「ゴルディロックス(適温)相場の終わりの始まり」だとの認識を示した。
ドル/円は今後100円を割る局面もあり得るとの見方を示し、「105円を割り込んだ場面では買う」と述べた。株式は「買い増しではなく、吹いたら売るスタンス」だとして、株価が一段と上昇する局面で売却、下げた局面では買い戻し、投資を続ける意向を明らかにした。
詳細は以下の通り。
――今月起きた米国発の金利急騰、株安について。
「ゴルディロックス相場の前提は、緩やかな景気回復、緩やかな資産価格上昇、緩やかな物価上昇という、いわば『緩やか三兄弟』だ。今回はまず米金利の上昇が『緩やか』から『急』になったが、実はその前に米国株・日本株が急激に上がった、つまり緩やかな資産価格上昇が『急激な』資産価格上昇になったことが1番のきっかけだと思う」
「この2年ほど、金利と物価がなかなか上がらない中で株価は堅調で、株式のリスクを一定取らなければ、とても運用利回りを上げられない状況があった。『緩やか三兄弟』のどれかが崩れることで、本来そういうポジションをとることが望ましくない人、例えば本来は債券市場にいるべきなのに株に来てしまった投資家が(本来いるべき市場に)戻ることが、今回のような相場急落というリアクションを生む。そういうことが今、足もとで起こり始めている」
「年末年始で日米株価が急速に上がった部分の調整は、これで終わったと思う。ただ、今回はまだ緩やかな金融緩和というか、米国(中央銀行)はバランスシート縮小に入ったが、まだ始まったばかりで、日欧はいまだに拡大を続けている。つまり日米欧の連結で見ればバランスシート拡大が続いているので、いったん売って逃げても、お金は余っていて行き場がないから、結局戻ってくる。いったんは落ち着いた感じになるだろうが、またゴルディロックスの継続をやり出したところで、また緩やか三兄弟のどれかが崩れることは起きるはずだ。ゴルディロックスは永続しない」
「このゴルディロックス相場が終わるかどうかのターニングポイントは、日米欧の連結で見たバランスシートが縮小に転じる時、もしくは縮小に転じる見込みが出てきた時に、転機を迎えるのではないか」
――それを視野に、どのような投資行動をとっているか。
「(転機は)すぐ起こるわけではないので、それを視野に入れて、高過ぎるところは買わないなど一定程度保守的に見て急落のリスクに備えながら、株などリスクアセットへの資金を投じなくてはいけない。また、先ほどの三極の中央銀行のバランスシートが縮小に転じる、または縮小に転じる見込みになるタイミングとマーケットのリアクションを見て行く」
「債券については、米ドル建てのヘッジ外債の魅力は著しく落ちている。安定的なクレジットスプレッドが取れて、FRBの引き締めの最終局面でも(ヘッジコスト控除後)利回りが取れるものは投資を継続するが、新規で米国債をヘッジ外債で買うことは多分ない。一方、欧州はヘッジコストがプレミアムで魅力的なので、ヘッジ外債の中ではユーロ建てにシフトという傾向は、全般的にある。ただ将来的にはECBの方が日銀より先に引き締めに入る可能性が現時点では高く、足元の利回りが高いからと言ってどんどん積むことにためらう向きもある。その結果、JGBのイールドカーブは一切変わっていないが、相対的な魅力は高まっている。我々は買ってないが、昨年の半ば以降投資する人が増えているのは事実」
「円債を積み増すよりは外債の方が意味がある。オープン外債については、急落リスクを視野に入れ、保守的に見つつも、今は投資を続ける。為替は(生産者物価の)購買力平価でみた(ドル円の)理論値は足もと96円であり、円高になった場合に100円割れとなる可能性が一定程度ある。安くなるんだったら買う。105円割れでは買いたいし、100円割れもあり得ると思うので、そこで買える余力を残しながら買いたい」
「株については、我々がアベノミクス相場始まって以降言い続けてきた、押し目買いスタンスは正しかった。今年に入ってバリュエーションが高くなっており、積み増しではなく、吹き値売りのスタンスに転じた。我々は既にエクスポージャーは持っているので、急騰した局面では着実に利食い(売り)を入れて急落に備え、調整が済んだところで買い戻す。ゴルディロックスの最終局面が着々と近付いてきているので、今年いっぱいは『積むより、落として戻す』スタンスでついていく。これは株だけでなくクレジットにも共通するが、保育や介護、AIやロボティクス、環境といったメガトレンドに注目している」
インタビュアー:植竹 知子、佐野 日出之
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