May 15, 2019 / 3:05 AM / 2 months ago

焦点:日産・西川社長に強まるルノーの圧力、業績悪化で窮地に

[東京/パリ 15日 ロイター] - 日産自動車(7201.T)の業績が悪化の一途をたどっている。2020年3月期の営業利益予想は前年比28%減の2300億円と4年連続の減益で、リーマンショックで赤字に陥った09年3月期以来の低水準だ。

  5月15日、日産自動車の業績が悪化の一途をたどっている。2020年3月期の営業利益予想は前年比28%減の2300億円と4年連続の減益で、リーマンショックで赤字に陥った09年3月期以来の低水準だ。写真は同社の西川社長。横浜で2018年撮影(2018年 ロイター/Issei Kato)

このままでは筆頭株主のルノー(RENA.PA)が迫る経営統合の交渉の材料になりかねない。統合に反対する西川広人・社長兼最高経営責任者(CEO)にもルノーからの圧力が強まりそうだ。

<「西川時代」のページをめくる必要も>

日産とルノー両社の複数の関係筋によれば、経営統合の議論はまだ始まっておらず、ルノーは日産に対し、直ちに議論するよう求めてもいない。

しかし、ルノーは経営統合を議論しようとしない西川社長のトップ交代に向けた動きを始めている 。統合を前進させるため、いつか「『西川時代』のページをめくる」ことも必要かもしれない、とルノー経営陣に近い関係筋は話している。

「(ルノー会長のジャンドミニク・)スナールさんが経営統合の方向性を持っているのは承知している。一方、まったく別の方向性についてオープンに議論する意向もお持ちだ。ただ、今はその議論をする時期ではなく、『日産は業績回復に集中すべきで、ぜひそうしてくれ』とスナールさんからフルサポートをいただいている」──。

西川社長は14日の決算会見で、経営統合に関するルノーとの状況をこう説明。日産の価値を生み出す力や技術などを毀損するリスクがあり「ネガティブなインパクトが大きい」として、経営統合論をあらためてけん制した。

いつになったら経営統合の議論に入るのか。業績が回復すれば議論が始まるのか。この質問に、西川社長は「いつになるかは議論していない。まずは業績回復に集中すべきだということで、それ以外の議論はしていない」と述べ、明言を避けた。

報道されているルノーからの経営統合案に対し、ある日産幹部は「ルノーは、嫌がる日産の外堀りを埋めようとしている」と「情報戦」に神経をとがらせている。日産に配慮したとされる本社を日仏以外の第三国に置く案などに関しても「税の面など、なかなか中立的には難しいのでは」と懐疑的だ。

また、日産は6月の定時株主総会に向け、新たな取締役候補の人選を急いでいる。ルノー側はすでに就任しているスナール会長に続き、ティエリー・ボロレCEOも新取締役として送り込みたい考えだが、日産への経営関与がさらに強まる形となり「強硬に推すともめることになる」と日産幹部は警戒する。

<営業利益率はルノーが上回る>

ルノーの日産持ち株比率は約43%なのに対し、日産のルノー持ち株比率は15%で議決権もなく、日産は資本関係で劣勢にある。

他方、ルノーに長く業績面で貢献し、これまで対等の精神で物事を進めてきた。しかし、ここへきて立場は変わりつつある。

日産の営業利益率は前期で2.7%、今期予想で2%。ルノーは前期が6.3%、今期予想でも6%前後と日産を上回るためだ。日産はこれまで高額配当でもルノーの業績を支えてきたが、今期は配当を前期の年57円から約3割減の40円に減配する計画。その減配を理由に、ルノーが経営統合への圧力を一段と強める可能性もある。

日産は、カルロス・ゴーン前会長体制下で策定した中期計画も下方修正。23年3月期までの売上高は従来から2兆円減の14.5兆円(今期は11.3兆円)へ、営業利益率は8%台から6%台へと引き下げた。前期551.6万台だった世界販売は「600万台から650万台の間」(西川社長)と着実な成長を狙う。

西川社長は、業績悪化の背景に「ゴーン体制から受け継いだ負の遺産という面が大変多くある」と釈明。規模拡大路線と過剰な設備投資の負担から脱却し、より持続的な成長路線への転換、業績悪化の主因である米国事業の改善を目指すとした。

合理化も進め、世界生産能力を10%削減し、23年3月期までに世界で従業員4800人以上を削減する方針。早期退職などの初期費用として470億円かかるが、年間300億円規模のコスト削減効果を見込む。

<市場からは冷めた声も>

西川社長は1999年の再建計画「日産リバイバルプラン」の時とは違って、今の日産には中国など「堅調な事業の柱」があり、「財務体質も健全だ」とアピールした。

だが、市場の見方は冷ややかだ。ある市場関係者は「西川社長は業績悪化をゴーン前会長の拡大戦略のせいにするが、ゴーン体制下の経営陣の1人だった西川社長も同罪だ」と指摘。「西川社長の発言には説得力がない」と失望感を隠さない。

ある自動車産業アナリストも、業績の悪さは1999年ごろを上回る、と指摘する。

当時はまだ、車も造れば売れる時代だったが、今はCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)やMaaS(次世代モビリティサービス)の時代。営業利益で2兆円以上を稼ぐトヨタ自動車(7203.T)ですら『生きるか死ぬかの戦い』(豊田章男社長)と危機感が強いのに「なおさら日産には、明るい未来が見えない」と厳しい。

 5月15日、日産自動車の業績が悪化の一途をたどっている。2020年3月期の営業利益予想は前年比28%減の2300億円と4年連続の減益で、リーマンショックで赤字に陥った09年3月期以来の低水準だ。写真は日産とルノーのロゴ。フランスのサン=タヴォルで1月撮影(2019年 ロイター/Christian Hartmann)

西川社長は業績悪化の責任を会見で問われ、しかるべき時期に後継者へ引き継ぎたいと述べたが「立て直しを進める姿勢は変わっていない」とも語り、「外科的手術は大胆に足早に。成長は着実に。CASEへの技術チャレンジは手を緩めない」と意気込む。

業績も今期を底に「2年、3年いただければ、もとの日産に戻す」と話すが、市場からの信頼、そして再び緊張感が生じているルノーとの信頼関係をどこまで取り戻せるか。西川社長は正念場を迎えている。

*写真を更新しました。

白木真紀、田実直美、Laurence Frost 編集:田巻一彦

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