[香港 25日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 日産自動車7201.Tが25日に発表した厳しい内容の決算は、唯一、仏ルノーRENA.PAにとっては良い知らせだろう。
時価総額約3兆円の日産の4─6月期の純利益は、前年同期比で約95%減少。同社は2022年度までに、従業員1万2500人を削減し、生産能力を縮小すると発表した。
ルノーとの関係強化に抵抗する西川広人社長の主張の説得力は弱まっている。
日本を代表する自動車メーカーの1つだった日産は、カルロス・ゴーン前会長が特別背任などの罪で起訴され退任して以降、苦境に立たされている。(ゴーン氏は、起訴内容や容疑を否認している。)だがそれにしても、日産の経営状況は予想以上に悪い。
4─6月期の営業利益は16億円だったが、これはリフィニティブがまとめたアナリスト予測の12分の1にも届かず、前年同期比で約99%もの減少だった。自動車販売台数も、ほぼ横ばいだった中国以外の地域では減少した。為替の変動と、原材料コストの上昇も痛手となった。
ゴーン氏退場により、同氏が進めようとしていた日産とルノーの経営統合計画も頓挫した。ルノーは、日産株式の43%を保有している。
西川氏は、まず日産が、販売奨励金を通じたシェア拡大戦略が失敗した米国市場と、検査不正問題が発生した日本で体勢を立て直すことが先決という、もっともらしい説明をしていた。
西川氏は、少なくとも現在これに取り組んでいる。研究開発費用を積み増す一方で、その他の部門では大ナタをふるっている。
25日に発表された人員削減は、全従業員の9%にあたる規模で、生産能力も10%縮小される。だがそれらのほとんどが、困ったことに低成長の日本以外の地域で行われるという。
大学卒業後すぐに入社して以来日産に勤めてきた西川氏は、たびたび状況のひどさを過小評価してきた。日産は2月に業績予想を下方修正し、さらに4月に再び下方修正した。西川氏は5月、状況が底打ちしたと発言している。今回の予想以上に悪い内容の決算は、西川氏の経営手腕への信頼をさらに損なうものだ。
西川氏が最近の業績により信頼を失えば、ルノーは喜んでもいいだろう。ただ、ルノーによる出資の価値が下落していることを考えれば、喜ぶにも慎重にならなければならない。
しかし、西川氏を交代させたり、苦境に立つ両社を統合させても、核心的な問題は必ずしも解決しない。日産車が売れない、という問題だ。株主は、憂鬱気分が続くだろう。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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